高橋 何を考えているのか、本心がどこにあるのかわからないという、いくら考えても読めないというか、そういうところに僕個人としては何か魅力を感じます。ただ物欲のために動いてるという風に表向きには思われてると思うんですが、その心根には何を思って裏家業で生きてるのかとか、そういうところはブラックボックスな状態でわからないというところに魅力を感じます。
——今回「嘘」がキーワードですが、シナリオを書く上で不二子の本音と嘘の使い分けみたいなことはされてますか?
高橋 さっき母性をテーマにと言いましたが、とはいえ、表立って不二子に母性がありますっていうのも違うと思うんで、実は不二子はこう思ってたんですということを明確にストーリー上出さないようにしました。観る人によっていろんな見え方がする不二子に仕上げなきゃいけないと思いますし、作家の我がそこに現れちゃいけないなって思ったので、その調整には苦労はしました。だから観る人によって、これが嘘でこれが本音というのが違っていいなと。
――高橋さんの中ではこれが本音でこれが嘘っていうのはありましたか。
高橋 本来、今までの不二子であればビンカムと戦う必要がない。もう逃げちゃえばいい、相手にしなくていいじゃないですか。それなのに戦うというのは、きっとそこに本音があるんじゃないかなっていう。それは言葉じゃなくて行動の本音……僕の個人的な一個の回答がそこにあるだけかもしれないですけど、僕はそこに勝手に母性を感じてはいるんです。ジーンのためなのかもしれないしそうじゃないかもしれない、あくまでビンカムへの色気なのかもしれないし別の何かかもしれない、いろんな捉え方があると思うんで、難しいですよね(笑)。
――ジーンという子どものキャラクターはどうやって生まれたんでしょうか。
高橋 不二子を描くにあたって、本心が読めないところに魅力を感じてる部分がありながらも、ジーンみたいなキャラクターをぶつけたときに、不二子はどういう反応をするのかっていうのを見てみたかった。
つまり色気とか話術が通用する相手だと今まで見たことがある、じゃあ色気が通じなくて話が通じない相手って誰だろうと考えたときに、子どもっていうのは、一つ不二子の弱点になる。子どものわがままには付き合いきれないとか、そこからちょっと生意気で言うことを聞かないわがままな男の子っていうところからジーンが生まれた感じですね。