●大切にしたのは「東京感」
——監督のお二方は初の長編映画となるわけですが、これまでに手掛けてこられたCMのお仕事と違ったことや苦労したこと、あるいは楽しかったことなどはありますか?
平牧 細かく分ければ普段やっていることとそんなに変わりはないんですけど、最大の違いは「長い」っていうことですね(笑)。「試写するたびに1時間半掛かるんだな」とかはポスプロ段階では感じましたね、普段は15秒で終わるので。あとは、想定していたことが現場で相当変わっていくっていうのはありました。役者の方々もライブ感を大切にするメンバーだったので、現場で演技も変わっていくんですよ。現場では僕がどちらかというと画まわりを担当していたんですけど、演技が変わることによって想定していた画も変わっていくんですよね。役者さんが現場に入って実際に演じてみて立ち回りが変わったりすると、「このアングルは無理だな」とか「このカット割りは無理だな」ということが出てくる。それは驚いたことでもありますし、楽しかったことでもありますね。
川崎 広告では「これをやります」ということがバチッと決まっているので、15秒なら15秒でどういうアングルでどういう台詞を言うかっていう固定したものがあって、タレントさんが入る前日に同じものを撮影してこんな仕上がりになります、っていうベースを作っておく。あとは台詞の言い方とかニュアンスが違ってくるくらいの感じですね。映画では、実際にここにカネキという人がいて、どうやって動いたらもっとリアルに感じられるんだろうと考えたときに、脚本があって、僕が考えていったものがあって、窪田さんが考えてきたものがあって、それらをぶつけてみて初めて形になるものがあるんですよね。それが最も違うなと思った点ですね。経験がなくて慣れていくのは大変だったんですけど、一番面白かったところですね。
——役者さんや現場のスタッフさんとキャッチボールしながら作られていくという。
川崎 前日にコンテを切っていたけど実際に現場に入ってみると(役者さんは)そっちに行くんだ、みたいなことはよくありましたね。
平牧 結局同じことを言ってるよね(笑)。
川崎 今回は登場するのがほぼ喰種だけの世界観なので、それをリアルに感じてもらうためにどうやって設計しようか、っていう話をしていたんですよ。こちらでバチッとハリウッド映画みたいに決め込んでしまうよりも、もっとラフにインディーズっぽい仕立てにしようっていうのは考えていました。それが利いていたので、余計にそういうことが起きやすかったっていうのはあると思いますね。
平牧 ドキュメンタリーっぽい感じで撮ろうみたいな話は最初にしてましたね。〈東京〉をもっとフィーチャーしてほしい、ということも永江さんから言われて、「東京感」を大切にしているんですよ。喰種たちが実際に東京に住んでいるような感じで撮影したいなと思って。それこそ『ロスト・イン・トランスレーション』(2003年/ソフィア・コッポラ監督)の中に喰種がいるみたいな感じかな、みたいな。
——ああ! オープニングからまさにそんな感じですね。
平牧 ドキュメンタリーっぽくちょっと長回しで撮って、演技も自然な感じでしてもらうみたいな。それは最初からありましたね。
——永江さんから監督にオーダーされたこととしては他にもありますか? 「リブートするつもり」というお話もありましたが、前作から引き継いでもらいたかったところ、進化させてもらいたかったところなどありましたらお聞かせください。
永江 前回って人間ドラマの部分もそうなんですけど、キャラクターそれぞれも原作でも人気があるキャラクターで、それ以外にも衣装だったりアクションだったり音楽だったりと、こだわったポイントは結構あったので、それをパート2でも引き継いでアップデートさせていきたいよねっていう話しはさせて頂きました。逆に、新しくやっていくこととしては、もっと遊びの部分が必要なのかなと思っていて。前回はわりと王道路線でド直球のストレートボールを投げたような感じだったんですけど、今回はどちらかというと変化球にしたいなと。それがお二人のアイディアですごく活かされていて、街並みの撮り方もそうですし、アクションやドラマパートでもいい形になったなと思っています。