• 高畑勲の挑戦がいかに日本のアニメーションを豊かにしたか—回顧展開催中!
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2019.09.25

高畑勲の挑戦がいかに日本のアニメーションを豊かにしたか—回顧展開催中!

「高畑勲展—日本のアニメーションに遺したもの Takahata Isao: A Legend in Japanese Animation」

「高畑勲展—日本のアニメーションに遺したもの Takahata Isao: A Legend in Japanese Animation」が、2019年10月6日(日)まで東京国立近代美術館にて開催されている。そこで9月10日発売のムック『ハイパーホビーVOL.14』の「ミュージアムへ行こう!VOL.123」コーナーで紹介した「高畑勲展」のレポート記事を「アニメージュプラス」でも再度掲載し紹介する。

日本のアニメーションが特別になった理由
世界を変える巨大な才能

昨年亡くなった高畑勲の大規模な回顧展が東京国立近代美術館で10月6日まで開催されている。1000点を超える初公開の物も含めた貴重な資料が展示され、高畑の業績を東映動画(現・東映アニメーション)入社時から、遺作となったスタジオジブリでの『かぐや姫の物語』までを総覧できる濃厚な内容になっている。高畑ファンやジブリファンには大満足の充実度だが、「日本のアニメーションに遺したもの」というサブタイトルに込められた意味こそがこの企画のもうひとつのテーマだ。仕事を振り返るだけでなく、高畑の圧倒的な意志と理想がいかに日本のアニメーションを高い所に押し上げたかを再確認させられることだろう。

展示は、東映動画時代の『安寿と厨子王丸』『狼少年ケン』『太陽の王子 ホルスの大冒険』を紹介した「第1章:出発点ーアニメーション映画への情熱」、『アルプスの少女ハイジ』『母をたずねて三千里』『赤毛のアン』とTVシリーズの名作を次々に生み出した「第2章:日常生活のよろこびーアニメーションの新たな表現領域を開拓」、日本を舞台に選んで『じゃりン子チエ』『セロ弾きのゴーシュ』『火垂るの墓』『おもひでぽろぽろ』『平成狸合戦ぽんぽこ』を作った「第3章:日本文化への眼差しー過去と現在との対話」、さらなる新しい表現で『ホーホケキョ となりの山田くん』『かぐや姫の物語』に到達した「第4章:スケッチの躍動ー新たなアニメーションへの挑戦」と四つのブロックに分けられ、それぞれの時代に高畑が何を考え、アニメーションで何を表現できるか、何を表現すべきなのかを模索した様子が企画書やメモ、指示書などで垣間見る事ができるようになっている。そして、そのつど高畑が出した結論と高い要求に、才能溢れるスタッフたちが苦しみながら応えていったさまが展示されていく。

これは、日本のアニメーションが進化、深化していったドキュメントでもあるのだ。なぜレイアウトという役職が生み出されたか、なぜ大きなドラマが起きないアンの日常があんなにも面白かったのか、なぜタエ子の顔に笑い皺があるのか、なぜ山田家の背景は簡素なのか、かぐや姫の線がラフなのはどうしてなのか、そういった高畑の挑戦がいかに日本のアニメーションを豊かにしたかをこの回顧展は語りかけてくる。そしてその要望に応えたスタッフたちが新しい力となって日本のアニメーションを作り続けていくのだ。多くの人間でひとつの作品を作るアニメーションという世界をなぜ高畑が選択したのか、その核心に少し近づける時間を堪能して欲しい。

文/今秀生

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