• 工業デザイン視点で設計したすごいガンダム!ガンプラ『HG 1/144 ガンダムG40』発売
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2019.09.28

工業デザイン視点で設計したすごいガンダム!ガンプラ『HG 1/144 ガンダムG40』発売

(C)創通・サンライズ



◆ガンダムをアニメから本物へ~『HG ガンダム G40』 商品化にあたり

★『伝統の伝承と革新』 工業デザイナー 奥山清行氏
プロジェクトのオファーをいただいて、いざ取り組んでみると、一歩目から大きな選択に迫られました。オリジナルのデザインをリスペクトすべきなのか、それとも自由にデザインすべきなのか。私自身、『ファーストガンダム』の TV 放送をリアルタイムで見ていたジェネレーションで、オリジナルデザインを壊すことにも抵抗がありました。松尾衡監督、サンライズ・スタッフの皆さんとのミーティングを重ね、今回のプロジェクトでの自分の役割は『 ガンダム』で新しい世界観を構築したシド・ミード氏とは異なっていることに気づきました。まずは一ファンという視点で何をすべきか、というところに立ち戻ることにしたのです。

この 『ガンダム G40』 で最も譲れなかったポイントは〈腰回り〉です。ガンプラが進化していく過程で、〈ショーツ〉のように一体化されていた腰の装甲が〈スカート〉のように割れるギミックが生まれ、股関節の可動域は飛躍的に広がりました。ただ フロントアーマーが開いた姿は、40年前の映像とはかけ離れてしまうというジ レンマを抱えることにもなりました。『ガンダム G40』 では〈ショーツ〉のままで本来の人間の動きをトレースできる股関節のギミックを提案しました。股関節を回転可動でブロックごと下へ移動させることで球体関節を引き出し、さらに大腿部にも可動軸を設けることで胸とヒザが 着く ほどの可動域を確保しています。

ヒジ、ヒザ関節は広範囲の可動を求めた結果、ガンプラでは二軸構造がスタンダードになっています。我々はガンダム40周年というコンセプトからオリジナルの形状に正直でありたいという観点から、一軸構造の関節を改めて成立させるべく 引き出しギミックを取り入れています。また、人の動きにはすべて〈ヒネリ〉が加わっていて、人体そのものも〈ヒネリ〉によってラインが変化します。 G40 の首と胴体、前腕、ふくらはぎに回転軸を設けることで〈ヒネリ〉を実現し、大地を踏みしめてビーム・サーベルを振り下ろす際にできる曲線を、キットのフォルムでも再現しています。

今回、人間らしいフォルムや動きにこだわる一方、その印象を残したままリアリティの伴った構造を考える事が課題でした。デザインの作業は主に動力源や関節、 全体の動きを成立させられるように、あくまで現実的に18mのモビルスーツという機械を想定して考えました。そのため、通常の工業製品、例えば、電車や、車などのデザイン製作と同じような工程を踏んで、 3D で設計をしながら検証していました。その中でも重要視したのが、商品には入らなかったのですが、コアファイターのサイズを割り出して、170cmの人間がコックピットに収まる想定、さらにそのコアファイターが18mのこの機体にどう収まっていたか、という稼動を前提とした全体のパッケージングを構成することでした。そこに実際に必要な要 素を掘り下げていったのです。そうすることでリアリティという意味では各部の構造だけではなくてメンテナンスの方法、内部のパネル、装甲の厚みまでも考慮して、できるだけ製品(工業製品としてのモビルスーツ)になった時をリアルにイメージすることができました。

昨今では人型のロボットも工業製品として成立しつつあるので四肢の可動範囲や関節構造などにも、アニメ演出と現実的な工業デザインを両立させた提案ができたと思います。最終的には1/144 スケールというアウトプットではありますが、実際に1/1スケールでアクションするために必要な機構やフォルムを、工業デザイナーとしてもガンダムの一ファンとしても納得のいく形でホビー事業部さんと作ることができたのではないかと考えています。


★『記憶の原点を再現する』 演出家・映画監督 松尾衡氏
まずお話ししておきたいのは、私たちの出発点は〈皆さんが記憶しているであろうRX-78-2ガンダムの動きを CG で再現する〉ことでした。幸運にも世界的な工業デザイナーである奥山氏に参加していただくことになり、実在するプロダクトを手がけるデザイナーならではのアイデアをたくさんいただくことになりました。ただ、プロジェクトのスタート時、奥山氏をはじめBANDAISPIRITS ホビー事業部スタッフと、私の創作の出発点は違っていました。

CGは何でも表現できると思われる方がいらっしゃるかも知れませんが、RX-78-2ガンダムのデザインはおよそ CGに向いてないのです。作画のシルエットを極めて再現しづらい。では最新技術で精巧に作られたガンプラのギミックをそのままCGに活用すればいいじゃないかと思うかも知れません。ポーズの再現度がかなり高い最新ガンプラでも、実は人体の動きに不可欠な〈ヒネリ〉は考慮されていません。そのため、ガンプラを参考にCGを作るとプラモデルや玩具の動きの延長にしかならない。40年前のガンダムはヒロイックな存在で、機械というよりキャラクターでした。プロジェクトに参加する皆さんには、私と同じ方向を目指していただくために、長年にわたり培われてきたガンプラのギミックを頭の中で一度リセットしていただくお願いをしました。

丸みを帯びた胸の外装は写真では伝わりづらい微妙なラインで、映像であればライティングでハイライトと影が流れてくれる。車のフェンダー付近のデザインと同じで、カーデザインを手がけてきた奥山氏の経験が加味された部分です。また、左右が緩いラインを描くように凹んだシールドは私から奥山氏にリクエストしたものです。奥山氏がスタイリングを手がけたフェラーリ612 スカリエッティのテイストを盛り込んでいます。設定上では敵機の弾を受け流し、かつ跳弾で僚機が被害を被らないための凹みであると考えています。

スペシャルムービーでは、40年前に『ファーストガンダム』でやっていた演出と今回新しく設定した戦闘シーンをミックスしたものを目指しています。ザクIIももちろん登場します。人間のように動くガンダムに対し、ザクIIは戦車の延長としてデザインされています。スタイリッシュなガンダムと兵器然としたザクII。その対比も見どころです。映像をご覧になってカッコいいと感じてくださったら、次はぜひG40を組み立ててポージングを楽しんでみてください!


★『継承していくを誠実に』 BANDAI SPIRITS ホビー事業部 諸岡由輔氏
記念すべき『ガンダム40周年』および『ガンプラ40周年』を迎えるにあたり、我々BANDAI SPIRITSホビー事業部は今回の商品を通してガンプラ に新しい試みを取り入れられないかと思ったのが始まりです。おかげさま で2020年にはガンプラ発売から40年を迎えます。

我々も日進月歩でモノづくりの技術を蓄積してきましたが、我々とは異なる視点でモノづくりをしている方とタッグを組めれば、ガンプラのイノベーションが起こせるのではないかと思い、今回のプロジェクトが発足しました。そこで 、 世界で活躍する工業デザイナーの奥山氏にオファーさせていただき、我々のガンプラ40年で培った技術と伝統に、工業デザイナー目線というエッセンスを入れることで、今までのガンプラとは違うアプローチをしています。

特に着目していただきたい今回の商品ポイントは『可動』と『外観フォルム』になり、今までにない可動構造や可動位置と流れるような外観フォルムを取り入れています。一つ ひとつの可動や外観フォルムの面構成の一枚一枚が、ガンダムのプロポーションやポージングの美しさに繋がったと感じています。今回の商品は開発に携わったメンバーたちの、こだわりと情熱が詰まっていますので、ぜひ手に取っていただけると 嬉しいです。

(C)創通・サンライズ

◼️商品概要

HG 1/144 ガンダムG40(Industrial Design Ver.)
3300円(税10%込)
2019年12月発売予定

奥山清行(KIYOYUKI OKUYAMA)
工業デザイナー KEN OKUYAMA DESIGN 代表 1959年 山形市生まれ
ゼネラルモーターズ社(米)チーフデザイナー、ポルシェ社(独)シニアデザイナー、ピニンファリーナ社(伊)デザインディレクター、アートセンターカレッジオブデザイン(米)工業デザイン学部長を歴任。フェラーリ・エンツォ、マセラティ・クアトロポルテなどの自動車やドゥカティなどのオートバイ、鉄道、船舶、建築、ロボット、テーマパーク等数多くのデザインを手がける。2007年よりKEN OKUYAMA DESIGN代表として、KEN OKUYAMA ブランドで自動車・インテリアプロダクト・眼鏡の開発から販売までを行う。

松尾衡(MATSUO KOH)
演出家・映画監督
1968年生まれ。岐阜県出身の演出家、音響監督。緻密な演出と作品の世界観を丁寧に創り上げるほか、プレスコを使うことでも有名で、キャストから率先して名前が挙がる稀有なアニメ監督。ガンダム作品では『模型戦士ガンプラビルダーズ ビギニングG』『機動戦士ガンダム サンダーボルト』で監督を担当した。

アニメージュプラス編集部

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