• できればずっと「一歩」を描いてたい…森川ジョージ「はじめの一歩」連載30周年記念展!
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2019.11.18

できればずっと「一歩」を描いてたい…森川ジョージ「はじめの一歩」連載30周年記念展!

「連載30周年記念 はじめの一歩 大原画展〜魂のバウト〜」の第1話原稿前にて森川ジョージ先生。

連載30周年を記念した「はじめの一歩 大原画展〜魂のバウト〜」が12月1日(日)まで西武渋谷店モヴィーダ館6階特設会場で開催されている。
『週刊少年マガジン』1989年43号で連載がスタート以来の初の原画展に相応しく、単行本126巻分の全ての表紙用カラー原画、劇中に登場する試合ポスターのために描かれたカラー原画を始め、記念すべき第一話の原稿、数ある名試合の中から幕之内一歩VS千堂武士戦、間柴了VS木村達也戦、鷹村守VSブライアン・ホーク戦の湯気が出るような原稿など250点以上の原画が並べられた濃厚な展覧会だ。会場限定のオリジナルグッズも多数あって見逃せない。
そして、特別に会場で森川先生にお話を聞く事が出来たのでお届けしたい。すでに観に行ってしまったファンも、このインタビューを読んだら再度足を運びたくなること間違いなしだ!

<森川ジョージインタビュー>

◆「あしたのジョー」があるのでボクシング漫画はやりたくなかった

——森川先生は「はじめの一歩」連載前に「インサイド・グラフィティー」「一矢NOW」「シグナルブルー」と三本連載されてますが、「はじめの一歩」が初めてのヒットになりますよね?

森川 そうですね。前が全部打ち切りだから、「一歩」がデビュー作ですって言いたいくらいです(笑)。これがデビュー作だったら、僕、天才なんですけど(笑)。

——では今回原画が展示されている、「はじめの一歩」の第一話はかなり気合いが入っていたんですね?

森川 いや、気合いは入ってたけど…その前の事があるから成功するわけがないと思ってました。

——とっておいた大事な題材で勝負に出た、というワケではなかったんですか?

森川 ボクシングは好きな題材過ぎて手付けられなかったというのもありますし、『少年マガジン』でボクシングやるっていうのは勇気がいるんですよ。「あしたのジョー」があるんで。だから、本当に手を付けたくなかったんです。

——じゃあもう、かなりの覚悟で始められた?

森川 編集部から、もうこれが最後の挑戦だよって言われて、好きなジャンル描きなよって担当に言われたんですよね。あの時、22歳ぐらいですからね。まだ子どもです。まだ子どもなのに、これが最後だって言われて、はぁー……と思いながら描いたのを覚えてます。

——第一話のネームはすんなり出来たんですか?

森川 いやぁ〜、これ、1年半掛かりましたよ。1年半掛かってもう、ずーっと直しばっかりでしたね。もう週3回直しやってたんで、何回直したか覚えてないです。
 最初は、とにかく「あしたのジョー」と比べられるのがすごい嫌だったので高校のアマチュア・ボクシング部の話でした。ところがその時の編集長が根性の座った人で(笑)、「『あしたのジョー』と勝負する気無いんですか?」「プロボクシングじゃないと連載認められません」って言い出して。「嘘でしょう?」って思いながら考えました。ホントに嫌だったの忘れられません。

——そのおかげか、読んだ人の記憶に強く残る第一話だと思います!

森川 僕はもう不安でしょうがなかったです。週刊連載のためにスタッフを集めないといけないんですけど、「10週だけお願いします」って言ってました。10週で打ち切りになると思ってたんで、こんなに長くなるとは夢にも思ってませんでしたね。

——その時には終わらせ方も考えてたんですか?

森川 いやいや、打ち切りで終わらせられると思ってましたんで、全然考えてないです。毎週目の前の事やっていくしか無いなっていう感じで。いつ、あと3週で終わりねって言われるかなって。

——どの辺りで打ち切りの心配なくなりました?

森川 いや、今だって打ち切られる心配当然ありますよ(笑)。人気ないとドキドキしちゃうし……まぁお陰様で人気はまだあるんですけど、でもちょっとでも数字が悪いとドキドキしますね。

——それがなんと30年間も続いてきて、いまでもゴールはあまり考えずに描かれてるんですか?

森川 いや、一応ゴールは考えてますね。でも考えてもそうなるかどうかわかんないじゃないですか。連載ってそういうもんなので、あまり先のことは決めつけないようにしてます。
 「一歩」の前の連載の終わりは自分ではなく人に決められたし、「一歩」も長く続いたけど、自分で決めなくても良いかなとも思ってます。きっと、作品の寿命っていうのがあるんですよ。


◆できればずっと「一歩」を描いてたい

——30年間で、一番想定外の活躍をしたキャラクターはだれですか?

森川 そもそも全員想定してないですから、みんなそうです。1話目に出てきた、一歩とお母さんと鷹村しか設定してないので、あとはもう自然に出てきたキャラクターばっかりです。幸運なことにそれがドラマを生んでいってくれてます。

——そのドラマを楽しんだり感動したりしている感じですか?

森川 感動はないです(笑)。あのう、漫画作業って、楽しい事なんて何ひとつ無いですから。描き上がったときには自分で下手くそって思うばかりなんで。上手くないなってずっと思って描いてるんで、だから感動なんてひとつも無いですね。漫画家で楽しいのは、読んでくれた人が面白いですって言ってくれることだと思うんで、その一言が救いになりますよね。もう楽しいことひとつも無いです、苦しいことばっかりです。

——そうやって30年間描かれた仕事がこうやって並べられるのはどんな気持ちですか。

森川 どうですかねぇ。まぁ、恥ずかしい限りです(笑)。いま見ると、よく頑張って描いたなっていう画面はありますけど…、う〜ん。
 どの試合が一番好きかとか、どのシーンが好きかってよく質問されるんですけど、やっぱりそれは次の試合が一番良くなきゃいけないし、いま描いたコマよりも、次のコマのほうが上手くなきゃいけないと思ってるんです。だから、自分の作品をこうやって飾って頂いても、なんか足りないなって思うばっかりですね。ああすれば良かったのに、こうすれば良かったのにっていうのはいっぱいあります。何かひとつ足んないな、とか。

——足りないって思うんですね。

森川 うーん、何かこう、体温が感じられるのが理想的なんですよ。本当にキャラクターが動いてて、そのキャラがいま何度あるんだっていうぐらいの体温が感じられる画面が一番理想的なんです。生きてるんだって読者が思ってくれるような、そういう画面が理想なんですけど、いまだに届かないですね。

——30年間読んでるとどのキャラも架空の人に思えないです。いまの、引退してからの一歩の話なんてずーっと気が気じゃない状態です(笑)。

森川 あー、僕も気が気じゃないんです。早くどうにかしたいですね(笑)。

——もし『少年マガジン』編集部が40年50年と「はじめの一歩」を続けて欲しいと言ってきたら、続けるんですか?

森川 それはわかんないです。やっぱり、どっかで寿命が来ると思うんですね。でも、続けられるんだったら続けますけど。

——「一歩」を始めてからほとんど「一歩」以外の漫画は描かれていませんが、ほかの漫画を描きたいと思うことはないんですか?

森川 全くないんです。できればずっと「一歩」描いてたいです。可愛くてしょうがないです。僕を漫画家にしてくれた漫画なんで。


■「連載30周年記念 はじめの一歩 大原画展〜魂のバウト〜」開催概要
【期間】2019年11月16日(土)〜12月1日(日)
【場所】西武渋谷店モヴィーダ館6階 特設会場(無印良品上)
【開催時間】10:00〜21:00(入場は各日開場の30分前まで/最終日は20時閉場)
【入場料】一般900円(税込)/大高生700円(税込)/中学生500円(税込)/小学生以下無料
【問い合わせ】紀伊國屋書店 西武渋谷店 TEL 03-5784-3561

公式サイト

(C)森川ジョージ/講談社

文/今秀生

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