• 『すごい!』と『読め!』から見た『2019年のマンガベスト10』
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2019.12.29

『すごい!』と『読め!』から見た『2019年のマンガベスト10』

『すごい!』と『読め!』から見た『2019年のマンガベスト10』



 で、「フリースタイル/「THE BEST MANGA 2020 このマンガを読め!」になりますが、こちらの1位が、「このマンガがすごい!2020」オンナ篇2位と同じ作品で、ここが被っているということに時代の変化を感じます。大学漫研の皆さんの心が広くなったのか、コミケのお客の年長化が進んだのか。ということで――

読め1位は『夢中さ、きみに。』和山やま(KADOKAWA)
 ジャケ買いしました。個性的な画風と間で印象に残る短編集なのですが、1年間に刊行されたすべてのマンガ作品のベストかと聞かれると、「?」となってしまいます。これからの作家さんだと思うので、次回作を楽しみにしています。ただ、ふたつのベストの重複箇所(つまりAとBとの積集合)のうち一番上位だったがこの一作だというのは、検証ポイントだと思います。

 そして、10位以内でほかに重なっている作品をあげると――

読め2位『水は海に向かって流れる』田島列島(講談社)=すごいオトコ篇5位。
読め3位『ロボ・サピエンス前史』島田虎之介(講談社)=すごいオトコ篇2位。
読め4位『心臓』奥田亜紀子(リイド社)=すごいオンナ篇5位。
読め5位『SPY×FAMILY』遠藤達哉(集英社)=すごいオトコ篇1位。
読め8位『パンダ探偵社』澤江ポンプ(リイド社)=すごいオトコ篇9位。
読め同数9位『ポーの一族 ユニコーン』萩尾望都(小学館)=すごいオンナ篇6位。

 逆に重なっていなかったのが――

読め6位『未来のアラブ人――中東の子ども時代(1978―1984)』リアド・サトゥフ(花伝社)
 第42回アングレーム国際漫画祭・年間最優秀作品賞。こういった作品が「このマンガがすごい」に載る可能性は今のとことゼロでしょう。既読。

読め7位『不条理日記 完全版』吾妻ひでお(復刊ドットコム)
 吾妻先生、色々ありがとうございました。私が担当した作品も収録されています。既読。

読め同数9位『海街diary』吉田秋生(小学館)
 既読。完結おめでとうございます。

読め同数9位『ドロヘドロ』林田球(小学館)
 ここ数巻読んでいませんでした。そういえば『月刊IKKI』がなくなって5年経つのですね。

 うん、出版もマンガもアニメも映画もなにもかも、来年はますます状況は変わっていくのでしょう。
 10位外でしたが、「このマンガがすごい!2020」オトコ篇11位の『異世界おじさん』殆ど死んでいる(KADOKAWA)と同12位の『ライドンキング』馬場康誌(講談社)、このふたつの異世界転生もののアレンジ作をどう読み比べたらいいのかを、ゲーム文化に触れずに年を重ねた身としては、しばらく考えてみたいと思います。

 そういえば年が明ければ獣神サンダー・ライガーが引退してしまいます。よく考えればライガー選手が東京ドームでデビューしたのも30年前、手塚治虫が逝去した1989年のこと(ちなみに天安門事件がおきたのも1989年)。私が編集者として初めて手掛けた本も(どういう経緯で他社雑誌で連載された作品を徳間書店で刊行することになったのか実は分からないのですが)1988年刊行の『スープレックス山田くん』でした。山田選手とは同じ1964年生まれ。プロレスファンの身としては、これは取材がしたいと、原作者&作画担当のお二人とあわぬままに、リフォーム前の若獅子寮で取材もさせていただきました。玄関を開けたら正面のソファに全裸の橋本真也選手が座っており、長州選手に「チンタ」と呼ばれているにふさわしいキュートな一物が丸見えだったことがなつかしい。先日の「M-1グランプリ」に決勝進出したす「ゑひろがりず」の扇子担当の方の面貌に、「ライガーの中身」といった声がけが(ギャオの番組で)ありましたが、すこし違うと思うのですが、あれから30年、マスクからはみだす髪も付け毛になったライガー選手は、どんな素顔になっているのでしょう。あと少し、頑張ってください。

7代目アニメージュ編集長(ほか)大野修一

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