• 〈原作・作画・編集〉に贈られるさいとう・たかを賞、第3回は『レイリ』が受賞!!
  • 〈原作・作画・編集〉に贈られるさいとう・たかを賞、第3回は『レイリ』が受賞!!
2020.01.18

〈原作・作画・編集〉に贈られるさいとう・たかを賞、第3回は『レイリ』が受賞!!

「第3回さいとう・たかを賞」授賞式より(下左から)室井大資、岩明均、さいとう・たかを、沢考史、(上左から)長崎尚志、やまさき十三、佐藤優、池上遼一氏。

第3回さいとう・たかを賞の授賞式が1月17日に行われた。受賞したのは原作・岩明均、作画・室井大資、担当編集・沢考史(秋田書店)による『レイリ』。百姓の娘であったレイリが武田信勝に似ていたために影武者となり、織田信長軍との血戦のはざまで数奇な運命を生きていく戦国時代劇で、『別冊少年チャンピオン』(秋田書店)にて連載、全6巻が刊行されている。

「さいとう・たかを賞」とは、『ゴルゴ13』連載開始50周年を記念して一般財団法人さいとう・たかを劇画文化財団が創設した、シナリオ(脚本)と作画の分業により制作された優れたコミック作品を顕彰する賞。さいとう・たかをが長年、大人の読者に向けた本格ストーリーコミック作品を制作するうえで採用してきた、分業によるコミック制作システムに光を当てることを目的としており、原作者(シナリオライター)、作画家、プロデューサーとしての担当編集者(または編集部)の三者それぞれに賞を授与するという、数あるマンガ賞の中でも他に例を見ない賞だ。さいとう・たかを、池上遼一、佐藤優、長崎尚志、やまさき十三が選考委員を務めている。
第3回は2016年9月1日から2019年8月31日の期間中に単行本第1巻が刊行された作品を対象としており、最終候補作品全5作品の中から『レイリ』が選出された。他の候補作は『アイとアイザワ』(原作・かっぴー/作画・うめ/株式会社ナンバーナイン)、『前科者』(原作・香川まさひと/作画・月島冬二/小学館)、『マイホームヒーロー』(原作・山川直輝/作画・朝基まさし/講談社)、『約束のネバーランド』(原作・白井カイウ/作画・出水ぽすか/集英社)。
ちなみに2017年度の第1回は『アブラカダブラ〜猟奇犯罪特捜室〜』(原作・リチャード・ウー/作画・芳崎せいむ/小学館)、2018年度の第2回は『イサック』(原作・真刈信二/作画・DOUBLE-S/講談社)が受賞している。

授賞式で登壇した岩明均は

「レイリという可愛らしい少女の物語をこんなオッサン達で作っちゃって、なんか、すみませんって感じではあるんですけども(笑)、ホントどうもありがとうございます。
私は自分でも画を描くマンガ家でもあるんですけども、誰か人と組んで作品を作るとか、チームでマンガを作るのが本当にできないと思っていたんです。その結果として35年間ほとんど一人でマンガを描いてきました。そういう中で『レイリ』を自分で描くのはまったく無理な状況だったわけです(苦笑)。誰か他の人に作品化をお願いする意外に無くて、結果として、『レイリ』という分業による作品が生まれました。『レイリ』はほかに二人の指揮官をお願いしました。全体の指揮を編集者の沢さん、現場の指揮をマンガ家の室井さんにお願いして、うまくいったんだと思います。私は物語全体の設計図を作るという担当でこのチームに参加しました。私のこの先の人生でまたこういうようなチームを組んでの作品作りがあるのかどうかちょっとわかりませんが、今回はすばらしい「さいとう・たかを賞」を頂けて、本当にありがたく、幸せだと思っております。」と挨拶。

続けて室井大資が

「すごく光栄な賞を頂けて、とてもうれしく思っております。『レイリ』の原作を渡されたときのことをすごくよく覚えてるんですけども、脚本原作を一日で読み終えて、一日で8回くらい泣いてしまいました。僕は岩明均さんという人をすごく尊敬していて、こういうマンガを描けたらなってずっと思ってました。僕をこの座組の中に入れて頂けて本当に光栄ですごくうれしいです。
五十嵐さんというチーフスタッフがいるんですけど、奇妙な縁というか、元さいとう・プロにいらっしゃった方で、その方に作画ですごく舵を取っていろいろやっていただいて、五十嵐さんがいなかったら『レイリ』は回らなかったと思います。改めて五十嵐さんにも御礼を言いたいと思います。」とさいとう・たかをとの意外な縁を披露。

そして担当編集者として関わった沢考史が

「私は現場の編集者として大体30年ぐらいで、いまはもう現場を離れてしまったんですけど、最後に『レイリ』の最終巻をコミックスを作って僕の現場は終わったんです。まぁ編集は黒子であると教わってきましたのでので、このような派手やかな賞を頂けるなんて考えてもいなかったんで、本当にありがとうございます。
とにかく岩明先生のマンガが本当に好きで、会社に入った翌年に『寄生獣』の第1巻が出たときに岩明先生に初めてお目に掛かってお話をしていただき、10年経った2000年ぐらいの時に『剣の舞』という短編を描いていただいて、また10年経って2011年頃『ブラックジャック〜青き未来〜』という作品で岩明先生に原作を書いていただきました。その後『RED』という雑誌を立ち上げたときの最初の打ち合わせで「あ、描くよ」って言っていただいてそこから12年、岩明先生の原作が完成してから室井先生に描いていただけるまでまた2年かかり、そしてそこから3年間、一生懸命室井先生が原作とぶつかってすごい頑張って描いていただき…最後までやり通して、『レイリ』という、私にとっても本当にもう何も言うことの無いすばらしい作品を私の人生に下さった岩明先生と室井先生には本当に感謝しております。
本当に私は何も出来ず、ただ、信じて待つことだけは出来たぞと思っております。待っていれば、すごい人たちはすごいマンガを作り上げてくれるんだ、マンガ編集者というのはそれでいいんだ、ということを証明できたと思います。 今日は本当にうれしいです!」と熱っぽく語り、授賞式を盛り上げた。

また、さいとう・たかをの名前を冠した賞を受賞された時の気持ちはどうでしたか?という質問に、
岩明「人と一緒にやる事が本当にダメなマンガ家なので、(チームで作品作りをしてきた)さいとう・たかを先生は、私とは対極のマンガ家だと思っていたので、その先生の名前の付いた賞を頂けるのは『ホントかな?』って思いました(笑)」
室井「受賞の連絡が来る当日に岩明さんから連絡があって「どうなの?」みたいな感じでそわそわしていたと沢さんから聞いて、すごいチャーミングだとおもいました(笑)。受賞の知らせを聞いた時はもうガッツポーズですよ!」
沢「岩明先生の原作は本当に完璧でしたし、室井先生は明らかに天才だと思っていたので、才能を注ぎ込みんで一つの作品を作り上げる、これはさいとう先生がお考えになっている、脚本とマンガの分業のすごくいい形なんじゃないかなという気持ちでした。先生方にご連絡するのが本当にうれしかったです。」とそれぞれ喜びをかみしめるように答えた。 

最後にさいとう・たかをが「どんな世界でも天才は出ますけど、我々の世界は天才だけでやっていく世界じゃない。いろんな才能を持ち寄れば、より完成度の高い物ができるはずだ、ということをこの仕事に入ってからずーっと65年吠えてきました。それでこういうちっぽけな賞でも作らなきゃダメだという気になってこういう形になったわけです。今後もぜひ、ご協力の程をよろしくお願い致します。」と挨拶して会を締めた。

文/今秀生

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