• 『推し武道』全話放送を終えて 山本裕介監督インタビュー:前編
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2020.04.24

『推し武道』全話放送を終えて 山本裕介監督インタビュー:前編

(C)平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会


――最終回ではED『♡桃色片想い♡』がデュエットになっていました。寺田さんに聞くと、ずいぶん始めの段階から考えていたそうです。

山本 最後のエンディングだけ『♡桃色両想い♡』にしたいっていう話があったことは記憶してます。ただ、当初の最終回のコンテでは映像は通常のEDの予定だったんです。実は最終回のBパートの締め方については、僕と寺田さんとTBSの浅水(歩)プロデューサーとの間で、「これでいいのか?」とちょっとしたカンカンガクガク(笑)がありまして。僕らも引っかかっていたのですが、聞いてみたら演出の大脊戸(聡)君も引っかかっていた(笑)。だったらもう一度見直そうということになったんです。それで一晩考えて直しを入れて、ついでに特殊エンディングにすることを思いついて、最終的にあの形に落ち着いたんです。

――具体的にはどのようにひっかかっていたのでしょうか。

山本 最初は「武道館いってくれたら死ぬ!」っていうえりぴよのクローズアップで終わっていたんですが、それだといつもとあまり印象が変わらないじゃないかと指摘を受けました。それで寺田さんの発案で、舞菜のリアクションで終わるように修正したんです。「死ぬ」と言われたアイドルはどんな顔をするか。ドン引きしてしまったかもしれないという余地を残しちゃダメだろうと。だから、嬉しい舞菜の顔をしっかり見せて終わるようにしたんです。ただ、今にしてみれば舞菜のアップをあと2秒くらい伸ばしたかったなと思ってますが(笑)。

もうひとつは一話からずっと続けてきたチェキのネタ。近づこうとして近づけないえりぴよと舞菜の距離っていうテーマがあったのを思い出して、それであの特殊エンディングに落ち着いたんです。もちろんデュエットにもハマりますしね。その上でさらに、桜の花びらが重なってさりげなくハート型になるという演出を大脊戸君が追加してくれたんです。あれは彼のファインプレーでしたね。といった具合に、僕のプランだけで完結するのでなく、いろんなスタッフがアイディアを追加してくれた事が『推し武道』を底上げしてくれていると思います。

――その後のCパートでは、いつもの感じに戻っていて、メリハリがあっていいなって思います。

山本 そう感じていただけたなら良かったです。Cパートも実は自分の中では最後まで確信が持ててなかったんです。人によっては、「ChamJamは日本武道館の形すら知らないでアイドルやってるのか」って本気で呆れるかもしれませんし。でも、「武道館、武道館」やたらにこだわっていたれおも、実はよくわかっていないってところが可愛くて、僕はすごく好きなんですよ。それはそれでChamJamのリーダーらしいなと思ってるんですけどね。

――確かに。最終回は一度も止まることなく、気持ちがどんどん上がっていって感動した後、最後にChamらしい一面が見られて、安心というか、大きく頷いて終われるような感じでした。

山本 それはすごく嬉しいですね。「原作となぜ変えたんだ?」という感想もいただくんですが、あくまでメディアの違いを考慮した上での変更なんです。アニメの場合はこうしたほうが余韻が出る、わかりやすい。ここはギャグで横道にそれないほうがいい、など様々な理由です。それに毎回20分50秒に収めなければならないという時間的な制約もあります。「何であのネタがなくなったんだ」って言われると、本当に「ごめんなさい」としか言いようがないです。自分も観ている側だった頃は「何で原作と違うんだ」って不満を持った記憶がありますから。

やむをえず原作を改変する場合も、全部平尾先生に確認してもらっています。我々としても原作を尊重し、愛を持ったうえでやっているということをわかってもらえるといいんですけれど。

――『推し武道』では、スタッフのみなさんがこの作品を好きだということが伝わっていたので、原作ファンも納得できていたんじゃないですか。

山本 そうだといいですね。それで思い出しましたが、1話のアバンで「私はあの日、君に殺されかかったんだ」っていう台詞が入っていましたが、アニメオリジナルの台詞なんです。それなのでシナリオ会議のときに、原作にない台詞を入れるべきかどうか議論になりました。赤尾さんの考えは「アニメを初めて見る人たちを引き込むパワーワードが欲しい」ということだったんです。それは僕も賛成してあの台詞を生かしたんです。

もちろん、平尾先生が「いらない」とおっしゃるようでしたらやめるつもりでしたが、まずはこれでやってみたいという現場の希望をお伝えしました。そうしたら先生から快諾をいただけて、アバンの決め台詞になったんです。あの台詞はえりぴよのオーディションの原稿にも含まれてましたね。

文/阿部雄一郎