• 『おそ松さん』監督が『若おかみは小学生!』を語る!
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2020.05.16

『おそ松さん』監督が『若おかみは小学生!』を語る!

©令丈ヒロ子・亜沙美・講談社/若おかみは小学生!製作委員会


宮崎系絵柄からの脱却

ーーあと、健気な子供の姿を見て泣いてしまう、お父さん的な感覚もあったりしますか?

藤田 いや、うちは2人とも男の子なんで、そこはそんなに……そうだ、そういう意味では女の人の感想を知りたいっていうのはありますね。感想を聞いている相手が男ばっかりなんで。異性(女の子であるおっこ)の気持ちが本質的にはわからないから、純粋に応援する側にいられるというのもあるかもしれないじゃないですか。ジェンダー的にもうちょっと主人公に入り込める側だったりすると、「そうじゃない」とか「しんどい」とか、感じたりするのかなって。その辺ってどうだろうというのは、観ながらずっと思っていました。これが『若だんなは小学生!』だったら、大人の男性より大人のお姉さんのほうがハマったのかな、とか(笑)。聞こえてくるのが大人の感想ばっかりだから、子供は実際どのくらい観てるんやろな? とも思いますね。子供の感想は聞いてみたいですよ。

ーー確かに、原作は児童文学だから当然、子供が観客として想定されているでしょうからね。もちろん「子供の頃に読んでいた大人」も意識してはいるでしょうが。

藤田 ある程度の分別がないと、理解できなさそうな描写もありましたから。それに原作はもう少しファンタジー寄りだけど、劇場版はちょっとリアルにしているじゃないですか。その分ひっかかったというか、野暮と思いつつツッコミを入れるなら……あの若さで、占い師で、あんな金持ちって、相当うさんくさい人間やで、と(笑)。

ーーああ、グローリーさん(笑)。【注:グローリー・水領は作中に登場する占い師】

藤田 まあ基本ファンタジーってことで、占い師というより予知能力者、エスパーだよねって思えば納得はいくんですけどね。あと、高坂(希太郎)さんのフィルムらしくないと感じるくらい、アップのショットが多くて。キャラクターをわかりやすく見せてあげようとしているところもありましたけど、そうかと思えばドライブに行く場面ではバイパスの複雑な立体交差がすごいリアルに描いてあって、ここに力入れるの? みたいな(笑)。その辺も含めて、どのくらいリアルにしてどのくらいファンタジーにするのか、行ったり来たりしながら高坂さんなりにバランスを探っている感じも、おもしろかったです。

——映像面に関してはどうでしたか?

藤田 そこで言うなら、ジブリ系のディレクターさんが宮崎駿系のデザインから脱却して成果をあげられたっていうのはひとつ、大きいかもしれないですね。アニメーター出身のジブリ系の人は、どこか宮崎さんの香りがするデザインでしか描けてない気がするんですよ。もちろん、それが一概に悪いってことではないですけど、宮崎さんの絵の「呪縛」は本当にすごくて。お客さんはちょっとでもジブリ=宮崎アニメの香りを感じた瞬間に、こちらが思っている以上に「ジブリっぽさ」を期待して観に行き、宮崎作品と比べちゃう。そういう意味では今回、原作ものという縛りのある作品で、高坂さんがあの絵柄から脱却して力を発揮したというのは、実はすごくデカいことなのかなと、ふと思いました。みんな自力のある人たちだし、これをきっかけにジブリ系の人たちがジブリ風味の薄い映画を作るようになったら、おもしろいと思いますね。


▲イラスト=浅野直之

アニメージュプラス編集部

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