• 『推し武道』全話放送を終えて 山本裕介監督インタビュー:後編
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2020.05.20

『推し武道』全話放送を終えて 山本裕介監督インタビュー:後編

(C)平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会


――次の質問です。
「質問です。アニメでは最終回の絵コンテは監督が担当する事が多いですが、この作品では一つ前の11話を山本監督が担当していました。これには何か明確な理由があったのでしょうか。また、余裕があれば12話も担当したかったですか。」

山本 第1話は監督がやるのが通例なので、まあ僕がやりますと。その後は第7話と第11話を受け持ったんですが、それは必ずしも重要な話だから選んだわけじゃないんです。今回は優秀なコンテマンが多かったので、「いい話」は任せて大丈夫だろうと。その隙間を僕が埋めるほうがシリーズにとって得だろうという作戦でした。
そういうわけで、最終回は今回の演出陣の中でも最も『エモ』を得意とする(笑)大脊戸聡に任せてしまおうと。同時に最終回間際は現場も疲弊しているだろうから、ラス前の話は省エネな作りにしたほうがいいだろう。それで僕がやることにしたんです。演出なら誰でも「自分の話数を一番にしたい」っていう欲がありますが、僕は監督ですから全体が持ち上がればいい、と割り切れますから。
しかし、だからといって第11話がつまらなくなったかというと全然そんなことはなくて。ファイルーズさんと藤原夏海さんのお芝居のおかげで、えりぴよと美結の掛け合いがすごく楽しいものになりましたし、「宮島をバックに鹿アイドル」なんて絵面もアホっぽくていい(笑)。結果的にはすごく気に入ってるんです。

――では次の質問にいきますね。
「今回のアニメでは随所に皆さんの原作愛を感じつつも、ほどよくエモいオリジナル要素が追加されていました。特に第8話の停電した後に、オタクのライトでアイドルが出口まで誘導されるというオリジナル展開が天才過ぎて気になっています。」

山本 第8話はひとえにシリーズ構成の赤尾(でこ)さんの功績ですね。いつもよりオリジナル要素が多い話数で心配だったんですが、しっかり練り上げてくれました。「さすがシリーズ構成!」と感心しました(笑)。
それ以外だと第10話などがライターのあおしま(たかし)さんの個性が前面に出ていると思います。シリーズ終盤にさしかかって、ますます筆が走っているといいますか。原作を全く変えずに作ることもできたんですけど、せっかくやる気のあるスタッフに恵まれたので、思いついたアイディアはどんどん平尾先生に提案させてもらいました。原作とアニメの距離感として、こういう作りもあると思うんです。

――そのへんがコミックであることと、アニメーションであることの媒体の違いをどう演出できるかっていう、先程おっしゃっていたお話(インタビュー前編参照)につながりますね。

山本 大きな方向性さえ間違っていなければ、スタッフがある程度自由にやっても、そう外れない筈なんです。これが、真逆の方向に突っ走ってる人がいたら注意しますけれど。みんなが向いている方向が同じであれば、個々の独創が悪い結果を産まないんじゃないかなって思っています。

文/阿部雄一郎

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