• 『推し武道』全話放送を終えて 山本裕介監督インタビュー:後編
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2020.05.20

『推し武道』全話放送を終えて 山本裕介監督インタビュー:後編

(C)平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会


――スタッフの方皆さんがそれぞれのキャラクターをちゃんとわかっているから、ちゃんとファンも納得いく結果になっていると思います。では次の質問です。
「アニメ化するにあたり、ChamJamメンバーカラーの色決めで迷ったりしましたか? 例えばピンクのれおと、サーモンピンクの舞菜とか、同じピンク系でもどのくらいの違いを出すか悩んだりしましたか?」

山本 たしかに、そこはちょっと悩みどころでした。例えばえりぴよの部屋のカーテンやシーツですが、美術の益田(健太)さんに「もっとサーモンピンクにできませんか?」なんていう相談をしました。そもそもスタッフそれぞれがイメージするサーモンピンクが微妙に違っていたようですね。サーモンといえば鮭の切り身が思い浮かびますが、それにしたって生の切り身と炙った後では色が違うし。結果的にはピンクよりもオレンジに近い色に落ち着いたと思います。

――平尾先生もサーモンピンクはなかなか色を出すのが難しいとおっしゃっていました。

山本 特にキンブレの光が難しくて撮影監督の浅村(徹)さんが悩んでいましたね。歌のコールでも「サーモンピンクの舞菜」って出てくるので絶対に外せない部分ですし。サーモンピンクはまだ色があるのでいいんですが、優佳のメンカラーのホワイトがさらに問題でした。元々の白いコスチュームの上に白い飾りを乗せても目立たないし、優佳のロゴもただの白だと味気ないので、結局「白と言えなくもない程度の淡い水色」にしてなんとか成立させるようにしました。
OPの虹もChamのメンカラーで七色にしてるんですが、そのままでは綺麗に見えなかったので、少しずつ色をアレンジしていった記憶があります。

――では次の質問です。
「ダンスシーンを3DCGではなく、手描きにした理由はなんですか?」

山本 最初の段階で手描きと3Dのどちらにするかはちょっと悩みました。エイトビットはどちらにでも対応できる制作スタジオですので。
でもやっぱりChamJamという存在を描くときに、かっちりしたCGは似合わないだろうと思ったんです。多少の崩れや若干のぎこちなさも含めて、温かみだったり味にならないかと考えたんですね。だから「今回はあえて手描きにしたい」と僕のほうから希望しました。
手描きといっても、アニメーターさんがゼロから描いているわけではなく、下敷きにしたダンスの実写ムービーがあります。実際にダンスを収録したムービーを編集して無駄を省き、それをベースに必要なカットだけを作画する方法を選びました。そうしないといつまでたっても完成しない恐れがありましたので(笑)。
その作り方を提案したら、制作現場もキャラソンプロデューサーの横尾(勇亮)さんもすぐに了解してくれました。でも、その時点ではそれがどれだけ大変か、誰もピンときてなかったんじゃないでしょうか(笑)。
最初の「ずっちゃむ(ずっと ChamJam)」の撮影はかなりリッチに、それこそMKキャンディ内装のモデルにもなったライブスタジオを借りて撮影しました。ステージにダンサーさん7人を立たせて客席視点で撮影したり、逆に2階席から俯瞰のロングで撮ったりと、様々なアングルで押さえることができました。
「ずっちゃむ」一曲だけなら良かったんですが(笑)、二曲め、三曲めとなると予算の問題で本格的なスタジオが使えなくなり、鏡張りのレッスン用のスタジオでの撮影になりました。ダンスを一曲目と同じように収録するのは難しかったんですが、カメラ位置を工夫してなんとか乗り切りました。
実写ムービーが完成した後の作画も、結局ダンスシーンが一番最後まで残っていましたしね。第1話は他のシーンはとっくに完成してるのに、ダンス作画だけが埋まらないという状態が長く続きました。途中で「やっぱり3Dにすればよかった」と後悔したスタッフもいたと思いますよ。「今時ライブシーンなんて3Dが主流なのに、なんで作画にしたんだ」って現場の子たちはみんな思っていたんじゃないかな(笑)。
ただ、いざ放映してみたら手描きというのが予想以上に好意的に受け入れられて。それは本当に嬉しい誤算で、スタッフの苦労も報われたわけなんですが、逆に後に引けなくなったというか(笑)。以降のライブもいい加減なものにできない、手描きゆえの動画崩れも極力修正しなくてはと、ますます手を抜けない状況に陥ったんです(笑)。

――全曲に振り付けはあるんですか。

山本 もちろんです。作品において最も重要なダンスを、アニメーターさんに「おまかせ」するなんて無責任なことできませんよ(笑)。劇中でダンスシーンがしっかり描かれている曲に関しては全部振り付けがあります。

――できればそれが見てみたいです。よくアイドルCDの特典であるじゃないですか。

山本 劇中ではオタクのカットが挟まっていますからね。でも、ちゃんと通して振り付けは作ってもらっています。

――いずれダンスが分かる映像が何かしらの形で世に出ることを待っています。

山本 さっきも言ったように必要なところしか作画していませんので、やるなら追加作画が必要になります。‥‥‥想像するだけで大変だなあ(笑)。ちゃんと予算が出てエイトビットのスタッフが頑張れば実現します(笑)。

文/阿部雄一郎