• 楠木ともり◆しなやかな挑戦者のクリエイティブな横顔
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2020.08.21

楠木ともり◆しなやかな挑戦者のクリエイティブな横顔

楠木ともり◆しなやかな挑戦者のクリエイティブな横顔

2020年8月19日にメジャーデビューEP『ハミダシモノ』をリリースされた楠木ともりさん。EPの表題曲「ハミダシモノ」は、TVアニメ『魔王学院の不適合者〜史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う〜』のエンディングテーマに決定しており、楠木さんはヒロインであるミーシャ・ネクロンとしても出演されている。
また、EP『ハミダシモノ』ではCDの盤面デザインも手がけており、声優の枠に収まらないクリエイティブな面を発揮されていることでも話題だ。

そんな楠木さんに、音楽や創作意欲の源についてお伺いしたのはリリース日よりも前のこと。ご自身の思いを凛々しくお話しされる合間に、ふんわりとした空気をまといながら微笑まれる姿が印象的だった彼女の横顔をご紹介する。

◆色んなことを良くも悪くも考え過ぎてしまう性格

――声優、アーティスト、そしてデザインを手がける多才な楠木さんですが、インスピレーションや創作意欲の源は何かありますか?

楠木 写真家の方がインターネットに上げている写真や、イラストレーターさんがインターネット上に上げている作品はよく見るので、そういったところですごく刺激されているのかなと思いつつ……。もっと根本にあるのは、私って色んなことを良くも悪くも考え過ぎてしまう性格で、ちょっとしたことが気になってしまったり、すぐ疑問が浮かんだりするタイプなんです。それで自分の中で知らない間に考えていることがどんどん固まっていって、固まった瞬間に「じゃあ、どこにアウトプットしようか」ってなって。そういうものが、曲だったり絵だったり……どちらにも表現されていくのかなって思います。

――考え過ぎてしまうというのは……例えば、作品を見て、色々な解釈をされるというようなことでしょうか。

楠木 そうですね。作品に刺激されることも多いですし、普段過ごしていて何気なーく受け入れているものでも「あれ? そういえばこれって、どういうことなんだろう?」っていうのがふと浮かんだりしてしまうので、そういうところなのかなと思います。

――余談ですが、レオナルド・ダ・ヴィンチも「どうしてなんだろう?」という疑問が尽きなかったという話を聞いたことがあります。

楠木 えー、嬉しい!(笑)じゃあ、ダ・ヴィンチと、一緒……??(笑)一緒ってこと……?!?(笑)

――楠木さんの根幹には、とても大きな知的好奇心があるということですね。

楠木 そうですね。そうなのかなあと思います。

◆音楽は、ずっと一緒にいる存在

――作曲も手がけられる楠木さんですが、幼い頃から日々の暮らしの中に音楽があったという資料を拝見しました。楠木さんにとって、音楽というのはどういうものでしょう。

楠木 すごく身近にあって、特に意識していないものなんだと思います。「音楽ってこういうものだな」って思うというよりは、本当に自然と日々を過ごしている中で、すぐ隣にあって。ずっと一緒にいる存在な気がします。

――今は外出するのも少し難しい状況かとは思うのですが……ジャンルを飛び越えたお仕事をされる中で、気分転換はどのようなことをされていますか?

楠木 最近は、家族と話すことを気分転換にしています。今までも家族とは仲が良かったんですが、特に自粛していた期間は、より仲が深まって色んな話や意見を聞くことができて。人生相談もするので……行き詰まったりすると、家族と話したり少し出かけたりして気分転換しています。

◆「どうしたら、キャラクターが生きてるって感じてもらえるんだろう」っていうのを意識しています

――声を使ってお仕事をする上で、気をつけていることはありますか。

楠木 健康が基本だと思っているので、特に喉には気をつけています。
お芝居的な面だと、私は養成所や学校に通っていたわけではなくて、本当にもう、独学みたいな感じでこの業界に入ってきて、現場で日々成長できるように頑張っているという感じなので、色んな先輩からお話を聞くこともあるんですけど……声のお芝居に説得力を持たせられるようにしたいなっていうのは、ずっと思っています。
滑舌とか技量的な部分はもちろんですが、先輩方の演技を聞いていると、声が絵に入った途端、その世界に馴染んでしまうというか。多分それって、そのキャラクターが生きているっていうのをより感じさせられる、説得力のある演技をしているからなんだなって思うんです。なので、「どうしたら、キャラクターが生きてるって感じてもらえるんだろう」っていうところを意識しています。

――「説得力」を持たせるために、原作の解釈にもかなり注力されているのではと思うのですが、その辺りはいかがでしょう。

楠木 そうですね。原作はよく読み込みます。先輩方とお話しするうちに、「この子はどういう感情の流れでこういう発言をしたのか」っていうことを考えることは大事な作業なんだなって思うようになって、台本は読み込むようにしています。
ただ、演技の勉強をしたことがないので……本当に、現場に立つばかりなので、すぐに自信を失ってしまうと言うか、これで合っているんだろうかと考えてしまうことが多いんですが、そこで自信を失ってしまうのももったいないなと。
アニメを楽しんでくださっている方には、そのキャラクターの声優が新人かどうかとかは関係ないのではないかなと思うんですよね。作品を楽しむことが一番で「新人だから妥協して聞こう」なんてことはないはずなので、とにかく皆さんに楽しんでもらえるように、いつもベストパフォーマンスができるようにということを考えています。

――挑戦してみたいキャラクターや、やってみたいと思う役はありますか?

楠木 ありがたいことに、可憐だったり可愛らしいヒロインを演じさせていただく機会が多いのですが、私としては自分の地声はどちらかと言えば低いと感じていて。今演じている『デカダンス』のヒロインのナツメちゃんっていうキャラクターが、ちょっと泥くさい、男勝りなところがある子で、それもすごく楽しいので、力強いキャラクターや悪役など、普段使っていない声の部分を使える役をやって、また更に演技の幅を磨いていきたいっていうことも、いつも思っています。

――EPで言えば、『ロマンロン』での、少しダークな雰囲気のお声が印象的でした。

楠木 『魔王学院の不適合者』の収録の時に、音響監督の納谷さんから初めて言われたのですが、私は暗めに聞こえる響きを持っている声質らしくて。明るい役は、意識的に明るく喋っていないとそう聞こえないことがあるみたいなんです。多分、響きの問題なんですけど、そこを明るくせずに演じられる役は今までにあまりなかったので、自分の声の響きをより活かせる役もやってみたいなって思っています。

――EP『ハミダシモノ』には、“強く生きる”や“夢を追う人”、“憧れ”といったメッセージがちりばめられているように感じました。夢を追う人達へ、ぜひメッセージをお願いします。

楠木 ……私は、夢を目指し始めてから挫折も経験していて……。それを越えてからは、実際に夢をひとつずつ叶えていけているんですが、夢を追うことってそれだけですごくハイカロリーで。言ってしまえば、「これでいいや」って妥協できれば、夢は叶わなくても生きてはいけると思うんです。でもそこで、自分のクオリティ・オブ・ライフじゃないですけど、より自分の人生を豊かにするために夢を追いかけているっていうことは、それだけですごく尊いことだと思うんです。大変だと思うし、自信をなくしてしまうこともたくさんあると思うんですけど、その姿がかっこいいんだっていうことを自覚して欲しいし……とても素敵なことだなって思います。なので、そんな皆さんを、私は応援したいなって思っています。

出雲ゆき弥

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