• 日本でも数少ない4D職人が戦場を作る!『荒野のコトブキ飛行隊 完全版』鼎談
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2020.08.28

日本でも数少ない4D職人が戦場を作る!『荒野のコトブキ飛行隊 完全版』鼎談

(C)「荒野のコトブキ飛行隊 完全版」製作委員会


――匂い以外で、水島監督から受けた指示はどんなものがありましたか?

野中 細かいことだと、引きのショットの時に起こる爆発(カメラから遠いところで起こる爆発)は、リアリティを求めてワンテンポくらい振動が遅れてくるようにしたいとリクエストがあったので、そうしています。

――え? そんなところまで⁉

野中 はい(笑)。距離感を感じるようにしていますね。

吉田 あとは、最終決戦に向かう時に、みんなが燃料タンクを捨てて飛んでいくシーンがあるんですけど、そこは燃料タンクを捨てた分ちょっと浮くっていう……。

――はぁぁ……! 凄い。そんなところまで。

吉田 そうですね。そのシーンは映像でもちょっと浮いているんですが、そういった細部の描写にこだわっていらしたので、動きにもそれを反映させました。

條々 普通に見てたら分からないですよね。

――分からないですね。けれどこの記事を読んだ皆さんは心積もりができるから、その場面の浮遊感も体感できますね。他にも何か指示はありましたか?

吉田 全体的な指示としては、最初の戦いと最終決戦を際立たせたいので、中間は少し動きを抑えてメリハリが付くようにというのもありました。

――確かにクライマックスに向けてどんどん衝撃が強くなっていって、没入感がより高まりました。最後に後ろから撃墜される時は特に衝撃を感じたのですが、これはどんな風に再現するのですか?

吉田 衝撃を付けるには動きの大きさと鋭さがあって。鋭さというのは、傾くスピードを速くして作ります。動きが大きすぎると、椅子が行って戻ってくるまでに時間がかかるので、あまりやられた感が出なかったりするんです。動きが小さくてもスピードがあると、バシッと背中に椅子が当たるので、やられた感があるんです。

――撃墜のシーンは本当に自分が撃たれたような気持ちになりましたが、実際に物理的な衝撃を作っていたんですね……。今回4D化する上で一番印象に残っているシーンはありますか?
▲キリエの発艦シーンも丁寧に描写

野中 発鑑シーンですかね。発艦シーンって一番ワクワクするところだと思うんです。なので、そこは「はい! 今、戦闘機に乗っていますよー!」という感じが出るように凄くこだわりました。

――エンジンが始動する時のブルブル感と、飛び立つ前に進んでいく時のガタガタ感は違うような気がしたのですが、そこは変えて?

野中 変えてますね。計器を動かす描写に合わせて振動を変えていますし、機体ごとにお尻の振動も変えています。

――それは自分で椅子に座りながらプログラミングを調整されて?

野中 そうですね。発艦シーンではないですが、機銃のダダダダダダダダダダッというのはもっと振動を強くしようとか、わりと細かく調整しました。そういうところは『荒野のコトブキ飛行隊 完全版』ならではの「感じポイント」かなって。

――是非実感してほしいところなんですね。吉田さんはどのシーンが印象に?

吉田 動き的には市街地ですかね。宙返りあり、柱を避ける動作あり。あの辺の宙返りは苦労した分、上手くいっているんじゃないかなと思っています。飛行機が宙返りするシーンが結構多いのですが、椅子は宙返りしてくれないので、それを再現するのが大変でした。

――宙返りってどんな風に再現するのですか?

吉田 椅子の動きって前後の傾きと左右の傾きで付けているのですが、それを上手く組み合わせて、振り回す感じで付けました。

――ガクガク動かすというよりは、滑らかに回す感じなんですね。

吉田 プログラムの波形にするとサイン関数とコサイン関数みたいな(笑)。

一同 その表現は難しい(笑)。

――純粋な興味なんですが、モーションプログラマーは比較的新しい職業だと思うのですが、どうやったらなれるのでしょうか

條々 MX4Dに限って言えば、ダイナモさんに入る事ですかね。MX4DSBSCが日本国内での製品販売・コンテンツプログラムの提供を行っておりますが、椅子の動きや効果などのプログラムは、弊社からダイナモさんに委託しておりまして、国内のMX4Dで上映される邦画作品については、すべてダイナモさんで制作しております。従って、ダイナモさんに入社されるのが一番の近道かと……。

――今私は、凄くレアな職業の方を目の前にしているのですね!

野中 そうなりますね()。私も吉田もたまたまこのMX4Dプログラマーという仕事に就いただけなので、どうやったらなれるのかというのは言えないのですが……。

條々 これからもっと4Dが普及していけば、モーションプログラマーの需要も数も増えていくかもしれませんね。

――もっと多くの作品が4Dで楽しめるようになっていってほしいです。皆さんが調整を重ねて作り上げた『荒野のコトブキ飛行隊 完全版』のMX4D版、是非多くの方に観ていただきたいですね。

野中 遊園地のアトラクション並みに動くので、観に行く時は、体調は万全にしたほうがいいかもしれません(笑)。

條々 MX4Dは監督さんの演出がきちんと組み込まれたもう一つの作品ですので、是非楽しんでいただけたら嬉しいです。

作品の魅力をいかに体感として落とし込むかの技術を日々蓄積し、監督の要望に事細かに応えていくモーションプログラマーの二人の姿はまさに「職人」だと感じました。細部までこだわり抜いた結果生まれた、まるで自分が操縦しているかのような空中戦の臨場感や大空を駆ける爽快感。『荒野のコトブキ飛行隊』の予備知識が一切無い人でも存分に楽しめる魅力がMX4D版にはあります。劇場版アニメ『荒野のコトブキ飛行隊 完全版』は、通常版、MXD版共に9月11日(金)に全国の映画館で公開されます。少数精鋭の4D職人が作り上げた圧倒的臨場感の空戦を是非その体で体感してみてはいかがでしょうか?

C)「荒野のコトブキ飛行隊 完全版」製作委員会

アニメージュプラス編集部

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