『おそ松さん』第3期放送開始を記念して、月刊アニメージュのバックナンバーに掲載されたインタビューを再掲載して6つ子の世界の魅力をあらためて紹介する特集
「おそ松さんを6000倍楽しもう!」。
今回掲載するのは2015年12月号のシリーズ構成・松原秀インタビューだ。
放送スタートから役1ヵ月を経て、徐々に、だが確実に人気に火がつきはじめていた時期の記事。
後半の6つ子それぞれのキャラクターについてのコメントは、あらためて『おそ松さん』の基本を確認するという意味でも、「ここからキャラクターがどう育っていったのか」という現在ならではの視点で捉えても、興味深い。
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過激な6つ子の誕生秘話!松原秀【シリーズ構成】──『おそ松さん』のシリーズ構成を担当することになった経緯は?
松原 『森のおんがくだん』でご一緒して、僕を『銀魂』のシナリオチームに入れてくださった藤田陽一監督と食事していたときに、ふと「今度、『おそ松くん』をやることになるので、助けてもらうかも」と言われたのが最初です。「シリーズ構成やりますか?」と聞かれて、最初はシャレだと思って「もちろん、やります」と気軽に答えたんですけど、マジだったという(笑)。
──そのとき、なぜ今『おそ松くん』なんだろうと思いませんでしたか?
松原 思いました。それに深夜枠だと聞いて、二度びっくりしました。
──シナリオに入るにあたって、過去のアニメや原作には触れたのでしょうか?
松原 アニメもちょっとは観ましたけど、主に参考にしたのは赤塚不二夫先生の原作です。実際に読んでみると、どぎついネタがちらほらあって(笑)。
──赤塚作品ですからね。
松原 真っ向からギャグをやっているのがすごいと思いました。ギャグから逃げないって、大変だと思います。
──原作も過去のアニメも、6つ子よりイヤミやチビ太が目立っていた印象があるのですが?
松原 まあ、そうですね。6つ子は原作でもよく見ればキャラの違いがあるんですけど、基本的に6人でひとかたまりの存在でした。でも今回は、ひとりひとりに個性をつけることにする、と。それは僕がシリーズ構成として加わった時点で決まっていました。だから、僕の最初の仕事は6人のキャラ作りだったんです。
──松原さんが、彼らの性格を形作った張本人?
松原 もちろんスタッフみんなで話し合いましたが、6人の言動や細かいクセを固めていくというのは、僕に与えられた最初の課題でした。
──6つ子については、次のページで詳しく語っていただくとして、イヤミたち脇役の魅力も教えていただけますか?
松原 イヤミとチビ太は完成されたキャラクターで、新たに手を加えることはほとんどなかったですね。10年後の話ということで微調整はしていますが、ほぼ原作のままです。この2人はスターですから。
──作品世界を飛び越えて、世間的にも超有名人ですからね。
松原 だから、「シェー!」というセリフを自分が書いているのが最初は信じられなくて。鈴村健一さんが「まさか僕がイヤミをやることは」とおっしゃっていましたが、僕も同じ気持ちでした。
──チビ太はまともな社会人になっていますね。
松原 苦労してきた雰囲気がありますね。カラ松を誘拐したり、いろいろやってもいますが(笑)。
──トト子はいかがでしょう?
松原 第4話で目立ちましたが、なかなかのキャラクターですね。原作に、トト子がボディブローをするシーンがあるんです。それを見て「見た目はかわいいけど、エグいところのある女の子なんだろうな」と。第4話はまだ序の口で、この後、いろいろな面が出てきます。
──原作の要素をうまく使いながら新しい挑戦をしているのが、『おそ松さん』ですね。
松原 原作の要素をうまく抽出するところと、今までのイメージを裏切らなきゃいけないところのバランスは難しいですね。でも、フジオプロの方から「思いっきりやってください」と言われたので。赤塚先生の作品なので、とにかくおもしろいことをやるだけです。
──脚本を書く時に気を配っていることはなんでしょうか?
松原 6つ子も、ほかのキャラも個性が強いので、どんどん勝手に動き出すんです。打ち合わせで作ったプロットを元に脚本を書き出すと、キャラがみんな好き勝手をはじめるのでまとまらなくて。「ホント、お前らいい加減にしろ!」と思いながら書いているんです。何をやっても許される世界観なので、とにかくキャラクターを中心に描いていこうと思っています。
──最後に、藤田監督の印象をお聞かせいただけますか?
松原 NGがない監督さんだなと思います。出したアイデアは絶対に否定から入らず、活かす方向で進めてくださるので、ライターとしてはものすごくノリます。あと、お客さんのことしか考えてないです。究極のサービス精神おじさん(笑)。藤田さんが作ってくださる前向きな空気が、『おそ松さん』の脚本の最大の武器な気がしています。
(C)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会