• 【おそ松さん特集04】浅野直之の6つ子デザイン裏話!
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2020.10.04

【おそ松さん特集04】浅野直之の6つ子デザイン裏話!

(C)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会


衝撃の真実!?
青い描線の秘密

——今回は線のタッチ、太さや強弱の付け方に独特の風合いがありますね。もちろん、浅野さんご自身の絵柄というところもあるとは思いますが、どんな狙いがあってあの線になっているのでしょうか。

浅野 まず、キャラクターがシンプルじゃないですか。線も色も少ないから、それだけだと本当にペタっとした絵になっちゃうんです。じゃあ、どうしましょうとなったとき、線をちょっと途切れさせたり、強弱をつけたりすると、それで画面が保つというのがあって。いままでの作品でも、いかに線やパーツを増やさずに情報量を増やすか、自分なりにいろいろ試みてきたんです。そういう絵のほうが好きだし、自分で作画もしやすいし。で、今回もちょっとやってみたんですが、ただ、線のタッチを統一するのって大変で(苦笑)。TVシリーズではスケジュール的に間に合わないかもしれないってことになって、色指定の垣田(由紀子)さんとお話ししたら、作画段階でタッチの強弱を付けなくても、撮影段階で処理を加えてアウトライン(キャラクターの一番外側の輪郭線)だけ太くできるような処理があるみたいで。だから実際の本編の作画では、線は普段よりちょっと太いくらいで描いて、そこに撮影段階で処理を加えてもらって、強弱をつけてます。おかげでペタっとした印象にならずに、少しメリハリがついたかなと。

——それと、輪郭線が青いのには、何か理由があるんですか?

浅野 あの……死んでるんです。

——……え!?

浅野 ……と、ファンのみなさんのあいだで噂になっているとお聞きしましたが、すいません、実は何も考えてないです(笑)。

一同 (笑)。[注:当時「輪郭線が青いのは実はキャラクターたちが“死者”だからで、『おそ松さん』は死後の世界の物語なのではないか?」と一部のファンの間で噂になった]

浅野 いや、藤田監督や垣田さんとキャラクターに色をつけているときに、多少何か違和感というか、変な感じになってないと、観た人の印象に残らないんじゃないかって話になったんですよ。黒い線で「『おそ松くん』の現代版の『おそ松さん』です」って普通にやっても、何となくもうその時点で「ああ、そんな感じね」って、流されちゃうというか。その頃は誰もこんなに注目されると思ってなかったんで、何かしら変わったことしないと、誰の目にも止まらないまま終わっちゃう、と。で、最初は線を茶色にしてみたんです。茶色の線って結構、ありますよね。細田(守)さんの作品とか。でも茶色でやってみたら、すごく優しい印象の絵になっちゃったんですよ。優しくはないじゃないですか、『おそ松さん』は(笑)。で、じゃあ別の色ってことで青にしてみたら、何か今までにない不思議な印象になったので、これでいってみましょうってことになりました。ただ、一番最初のティザーPVの映像を観たときは、自分で「わ、これはちょっとやり過ぎなんじゃないか?」と思っちゃったんですよ。観ていて色が気になりすぎて、お話の内容に入っていけないかも、と。あと、プロデューサーの富永(禎彦)さんにも「大丈夫ですかね?」みたいなことを言われ、「ちょっと抑えた方がいいかもしれないですね、今度、相談をしましょう」……と、言っているうちに、相談する時間がなくなっちゃいまして(苦笑)。本当はもうちょいマイルドな青にする予定だったんですが、「もう間に合わないから、このまま行きましょう」ってことになりました。だから、実はちょっと不安だったんですけど、放映がはじまったら以外と良かった。

——結果オーライですよね(笑)。独特の質感の絵で、ぱっと観た瞬間に『おそ松さん』とわかります。

浅野 ラッキーですね。今回はかなりラッキーが多いと思います。偶然みたいなものに、相当助けられてますね(笑)。

6つ子のイメージその1
「おそ、カラ、チョロ」篇!

——6つ子の描き分けについて、もう少し詳しく教えて下さい。同じ顔からはじまって個性をつけていく過程で、藤田監督たちからどんな説明があったのでしょうか。

浅野 最初にもらった「キャラ分け一覧表」に、好きなモノとか、仕草とか、私服のイメージとか、細かく書いてあって……そういえば、その段階ではイメージカラーはなかった、ざっくりとした性格分けがあるだけだから、区別がつきにくいってことで、こちらにいる坂元(亜衣)さん(設定制作)に、「ちょっとこれ、色分けしてください」ってお願いしたんですよ。最近は、キャラクターのイメージを色分けするみたいだから、何となくそんな感じでよろしくって。

坂元 最初は提案程度だったんですが、いつのまにかフィックスになってしまいました(笑)。

——今はもうこのイメージカラーで、グッズ展開もされていますよね。

浅野 わかりにくいから……というだけだったんですけどね。これもラッキーでした。で、その一覧表を見ながら表情だとか、ファッション的なものとか、姿勢とか、それぞれ考えていきました。

——実際に描き分ける上でのポイントはあるのでしょうか?

浅野 明確なビジュアルの違いとしては、まあ、チョロ松はアホ毛がないとか、一松はちょっと髪の毛ボサボサとか、十四松はアホ毛が1本とか。そのへんはもう、ファンのみなさんもお気づきの通りです。自分としては性格面から(チョロ松は)髪整えるだろうとか、(一松は)髪整えないだろうとか、(十四松は)変な電波とか受信してそうだからアンテナみたいにアホ毛1本とか(笑)。でも、監督たちとバカ話をしながら「それでいっちゃいましょう!」という感じで決めていたので、実はそれほど重要視してなかったんですよ。みんな描くときに間違えるだろうし、別に間違ってもいいんじゃないですか、くらいの気軽さで。それをファンのみなさんが、キャラクターの個性として捉えてくださって、定着して……これもまたラッキー(笑)。ただその結果、「こいつは(アホ毛が)ないから消さなきゃ」とか「こいつは1本に直さなきゃ」とかいう作業が、だんだん重要になってしまいました(笑)。

——(笑)。6人、ひとりひとりについても教えてください。まずおそ松の特徴……というより、この人はスタンダードなんですよね。

浅野 そうですね。最初に描いたデザインの、ほぼそのままです。むしろ他の5人を、おそ松の別人格だと捉えるような感覚で、どう差別化していくか、と。子供時代から無邪気に、普通に育ったのが今のおそ松。ちょっと違った育ち方をしたので、他の5人になっていった、みたいなイメージですかね。

——では、カラ松のポイントは?

浅野 カラ松は、自分のなかではロックスターですね。ああいうナルシストというか、ヒーローというか。自分がカッコイイと思っていて、すべてのポーズや表情をキメている人って、いるじゃないですか。つねに油断しないというか……やっぱロックスターです。スターって、自宅とかでも絶対油断しないと思うんですよね(笑)。そんな風に「普段はこいつ、どうしてんのかな」みたいなことを考えながら、自分のなかでイメージを固めていってますね。

——ではチョロ松は?

浅野 チョロ松は、知り合いでこういう人がたまにいるですよ。特定の誰ってわけじゃないんですけど、「あの人のあの感じ」とか、「誰々のあの表情」とか。つねに怯えているというか(笑)、神経質すぎる人っているな、と。たぶんチョロ松って、自分が6つ子だってことに、一番納得いってないんじゃないかと思うんです。「オレは違うぞ」みたいな。で、つねに不満を抱えているから、ずっとへの字口と困り眉。「なんでお前らと一緒なんだ」と、いつもイライラしているようなイメージ。版権イラストとかだと、ほぼ100%で困り眉を描いてる気がしますね。




(C)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会

アニメージュプラス編集部

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