• 【おそ松さん特集05】赤塚不二夫的ナンセンスの世界へ
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2020.10.05

【おそ松さん特集05】赤塚不二夫的ナンセンスの世界へ

(C)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会


サブキャラたちの異様な存在感

——監督的に、1クール目で特に良かったエピソードは?

藤田 「北へ」じゃないですかね。

——あれは、なかなかの異色エピソードでしたよね。

藤田 そうですか?「北へ」、めっちゃオモロいと思うんですけど。

——いや、おもしろいはおもしろいですが(笑)。何を思ってこのエピソードを『おそ松さん』で? と。

藤田 ちゃんと「ナンセンス」をやりたかったってことですかね。キャラクターがわからなくても楽しいと思うんですよ。変なおっさんが2人で旅をして、途中でヒドい目に遭うという、オーソドックスなナンセンスコメディ。あとあれは、最初は短いネタだったけど、「これを5分でやっても普通だから、ちゃんと半パートでやろうよ」って。で、台詞は「ダヨ〜ン」と「ホエホエ〜」しか言わない話を作りたいと思って作った感じです(笑)。こういうのは楽しいですよね、作ってても。

——そういう異色のエピソードも許容する幅の広さが楽しいですよね。

藤田 いやぁ、あのくらいじゃまだ全然、全然! いくらやっても、赤塚(不二夫)さんの世界の幅の広さには、全然追いついてないと思ってるんで。

——6つ子以外のキャラクター、イヤミやチビ太は描いてみてどうですか? いくつかフィーチャーされたエピソードもありましたが。

藤田 やっぱスターだなと思いますね。キャラクターが完成されてるというか、何やってもおもしろい人というか。特にイヤミは、ズルいと思います(笑)。イヤミのエピソードは「動いてく」っていうんですかね。会話劇というより、ばんばん動かしてって楽しいってほうが似合うなって気がしてますね。

——「イヤミの大発見」もあっという間に話がデカくなって、どんどん転がってく荒唐無稽な展開でした。

藤田 ビジュアルからして相当、荒唐無稽ですから、地に足をつけても仕方ねえなという(笑)。

——監督自身は、特に好きなキャラクターはいるんですか?

藤田 ガキの頃からダヨーンは好きでした。造形が好きなのかなぁ……ほんとに何を考えてるかわからない感じがいいっすね。それに、原作だと一番幅広くいろんな役をやってるけど、その割には個性がありすぎるだろっていう(笑)。

——今回も、ブラック工場で製造されてたり、デカパンの助手をやってたり。

藤田 何やっても絵になるな、おもしろいなって思います。

いつも心に赤塚スピリッツ

——2クール目からはの『おそ松さん』は、どんな風になっていくのでしょうか?

藤田 ……どう思いますか? どうなんでしょう?(笑)

——いや、そこをぜひ、教えてください(笑)。「こんな風に作っていきたいなぁ」みたいな感じで。たとえば、ここまで反応が大きくなって、それが影響したりする部分はありますか?

藤田 まあ、そこをどうこうするのは松原くんに任せているかなぁ……。というか、そもそも自分的には、それこそ『銀魂』の頃からお客さんを意識して作っているので(笑)。反響がデカいからといって別に、スタンスが変わるわけではないって感じですかね。でもまあ、せっかくキャラクターに馴染んでもらえたみたいなので、そこに乗っからせてもらう感じで。もうちょっとポイント、ポイントで、赤塚さんらしい「ナンセンス」感を出していきたいかなぁとは思いますかね。赤塚さんは「ギャグ」というより、「ナンセンス」だと思うんですよね。

——先ほど、一番のお気に入りだという「北へ」でも、「ナンセンスをやりたかった」と仰いましたよね。「ギャグ」と「ナンセンス」の微妙な違い。その感覚が『おそ松さん』の肝なのかなという気が、今聞いていてちょっとしたのですが。

藤田 赤塚さんって、「何がおもしろいんだろう?」と何周も考えた末に、「おもしろい/おもしろくない」じゃなくて、ルールを壊したり、普通じゃないことすること自体が目的化していたりするじゃないですか。「笑える」っていうより、もう「ズレてる」「狂ってる」という領域に足を踏み入れてるというか。

——「とりあえず壊してみよう」って感覚ですよね。

藤田 そうですね。「とりあえず壊してみよう」ってことだけが、どんどん目的化していったようなところがあると思うので。まあ、『おそ松くん』ではあまりやっていないですけど、『天才バカボン』の後半とか、『レッツラゴン』とか。

——赤塚さんの後期の作品に、特に顕著ですよね。

藤田 そういう世界を、せっかくのチャンスなので『おそ松さん』でも垣間見せることができれば、と。

——赤塚スピリッツを継承していきたい、と。

藤田 そこは原作がある限り、守っていきたいとこだなって思ってはいますね。今風になっていても、赤塚作品であるってことは忘れずに……まあ自分なりに、ですけど。

——『おそ松さん』本編でも、単純にバカバカしくて笑える部分もありますが、それを通り越して何が起きているかわからないとか、むしろちょっと不気味でさえあるような感覚があるときもあります。そのあたりに、赤塚スピリッツが漏れ出ているわけですね。

藤田 自分も、小学校低学年頃に赤塚さんのマンガを読んでたんですけど、変な気持ちにしかなんないんですよ。『バカボン』の後期のエピソードとか。「怖えな」っていうのはありましたね、やっぱり。それが、「常識を崩していく行為」を目の当たりにしている感覚なのかなって。

——意外に奥が深い……というより、「ひょっとするとここは空っぽかもしれない」という空虚さ。一生懸命探したけど、結局何もなかったときの怖さ、ですよね。

藤田 はい。いい表現ですね(笑)。そんな感じです。

——その感覚が、単純にいかない『おそ松さん』の世界のベースになっている気がします。

藤田 自分もそこは、忘れないようにやっているので。もちろん、わちゃわちゃ楽しところもあるけど、オチは結構突き放してたりもしますからね。むしろ、お客さんがよくついてきてくれてるな、と。反応があるのが不思議です(笑)。

——逆に、それだけ6つ子のキャラクターが魅力的だったということではないでしょうか。6人でワイワイやってるのを見ているだけで楽しいというか(笑)。

藤田 はははは(笑)。そこはほんと、時間かけて作っていったんで。それが何とか形になったなってことですかね。



(C)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会

アニメージュプラス編集部

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