• 【おそ松さん特集06】藤田陽一監督、第1期を総括!
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2020.10.06

【おそ松さん特集06】藤田陽一監督、第1期を総括!

(C)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会

『おそ松さん』第3期放送開始を記念し、月刊アニメージュのバックナンバーに掲載されたインタビューを再掲載して6つ子の世界の魅力をあらためて紹介する特集「おそ松さんを6000倍楽しもう!」
今回は2016年5月号掲載の監督・藤田陽一インタビューだ。
インタビューが行われたのは、第1期の最終回(第25話)が放送された直後。
最終回1話前の第24話「手紙」で、それぞれに自立する兄弟とひとり硬くなな長男・おそ松というドラマがシリアスかつ繊細に描かれる。さあ、次回はどうなる?……と盛り上げての最終回第25話「おそまつさんでした」は、いきなり「それどころじゃないよ! センバツに選ばれちゃった〜!」のひとことですべてを振り切り、問答無用のエクストリームな野球ネタを展開。謎のハイテンションとともに第1期は終了した。
そんな結末を踏まえつつ、主に後半のエピソードを振り返りながら、藤田監督が第1期を総括する。

>>>『おそ松さん』特集の全容はこちら!

高らかに! 6つ子の〈人間〉宣言!?
藤田陽一【監督】

100%には残念ながら1%も近づかなかった

——シリーズ完走お疲れさまでした。どうですか、今のご気分は。

藤田 いつもそうですけど、あんまり終わった実感がないですね。実感する間もなく次の作品の準備で絶賛作業中なので。完全に仕事の取り方を間違えたと思います。

——藤田監督の秋の新作も楽しみですね……というわけで今回は、『おそ松さん』の総括をお話ししていただくためにやってまいりました! 2月号でお話をうかがった時もすでに大騒動になりつつありましたが、今やもう完全に社会現象です!!

藤田 ……はぁ(笑)。

——……という感覚はないですか、相変わらず。

藤田 相変わらず、なんもないですよ。相変わらずモテないですし。作品が売れても、エロいこととか全然おこらないですね。本当は『いちご100%』みたいな人生を送りたかったんですけど、作品が売れても1%も近づかないです(笑)。

——(笑)。まずおうかがいしたいのは最終回についてです。何でまた、ああいう内容に?

藤田 『おそ松さん』はもともと昭和のアニメのノリなんで、野球回は義務です(笑)。義務は一応、はたしておかないと。それに、自分も松原(秀/シリーズ構成)くんも野球を観るのが好きだし、松原くんにいたっては選手としてもバリバリにやってたし。やっぱ、野球回って楽しいじゃないですか。『ゲゲゲの鬼太郎』の野球回だけを集めたDVDとか、発売して欲しいですよ。

——とはいえ、よりにもよって最終回にしなくても(笑)。

藤田 まあ、2人とも好きなだけに、ネタが思いつきすぎるっていうんですかね。野球だったらどういうアプローチでもやれるから、逆にまとまんないなぁ、どうしようかなぁ……と保留にしてたら、最終回になっちゃいました。「今までやってなかったし、みんな野球好きだし、いいよね?」っていうことで(笑)。

——しかも、第24話の「手紙」でちょっと泣かせる方向に走るのかと見せかけて、最終回がはじまったら「センバツに選ばれた!」ですべてひっくり返すというトリッキーなクライマックスでしたね。

藤田 もちろん、いろんなパターンの締め方を考えましたが、泣きと笑いは両方やっておきたかったんです。「手紙」みたいな方向で締めるやり方もあっただろうけど……でも結局、野球回になったんで(笑)。そこからの逆算というか、最終回で野球やるからその前に、ちゃんとテイストの違う話を入れて、ドラマチックに盛り上げておこうという感じだったかと思います。

——「手紙」のムードのほうが何となく、正統派のクライマックスっぽくはありましたが。

藤田 でも、「正統派」で終わることの方がむしろ『おそ松さん』の場合はスカシになるかなぁと。そっちのほうが、なんだか不誠実になるような気がしました。

徹底的に重ねたり叩いたり、洗ったりした

——でも、野球回とはいっても、かなりヒドい野球でした(笑)。

藤田 はい、ちゃんとプロットをまとめて筋立てしたコントより、ムチャクチャやって終わろうという方向で、思いつくこと全部入れてみました。

——逆に言うと、シリーズ通してプロットはしっかり立てて、エピソードを作っていたわけですね。

藤田 そうですね。もうホント、週2、週3で打ち合わせをして、プロットを叩いてましたから。

——以前もシナリオにはこだわっているとおっしゃっていました。そこがやっぱり、全体的に『おそ松さん』のキモだった。

藤田 そこはホント、デカいと思います。これだけ密度の高いシナリオ作りは、なかなかやろうと思ってもできないので。今回は、松原くんも忙しいなかフレキシブルに動いてくれて、何か思いついたらいろいろお互い話し合って、常にそれを取り入れて、フィードバックするというやりとりを繰り返しました。

——のべつまくなしでネタ出しし合う、みたいな。

藤田 そうですね、ネタを重ねて、重ねて、叩いて、洗って。まとめるのは松原くんにお任せしつつ、「この辺になんか欲しいんですけど」とか聞かれたら「こういうことやれば?」とか。「コイツどう動けばいいですかね」「じゃあ、こういうことさせて」とか。話数によっては、最初から「こういう話数を作りたい」というプレゼンがあって、みんなで微調整をするだけで決まったときもありますし。たとえば初期の話数ですが、「おそ松の憂鬱」や「自立しよう」は松原くんのほうで構想を練っていたものをベースに作りました。真面目な話系で「エスパーニャンコ」や「恋する十四松」はアイデアを出し合いつつ、かなり叩いて、叩いて作った記憶がありますね。

——2クール目に入ってから、エピソードにどんどんドライブがかっていく印象もありました。

藤田 1クール目はとりあえずキャラクターを理解してもらうことを心がけましたね。視聴者にキャラクターを理解してもらったら、よりネタの振り幅を広くとることができます。2クール目はネタそのものがわからなくても、キャラクターの個性が分かれば楽しんでもらえるお話を作っていこうと決めていました。

——エピソード的には後半、“置いてけぼり感”が非常に増してきましたけど(笑)。

藤田 へへへ(笑)。

——でも、なんとか食らいついて見ていこうという感じになっていたような気がします。

藤田 こちらとしては、全部おもしろいと思ってやっているんですけど、その「おもしろい」には「intresting(インタレスティング)」もあれば「laugh(ラフ)」や「funny(ファニー)」や「strange(ストレンジ)」など、いろんなパターンがあるんですよね。その振り幅についてきてもらえていたなら、よかったですけどね。

——ある意味、2クール目で好き勝手やるための1クール目だった、みたいな。

藤田 好き勝手というか……笑いに対してなりふり構わなかった赤塚不二夫さんの背中を追って、自分たちがおもしろいと思うことを追求しました。




(C)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会

アニメージュプラス編集部