• 【おそ松さん特集06】藤田陽一監督、第1期を総括!
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2020.10.06

【おそ松さん特集06】藤田陽一監督、第1期を総括!

(C)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会


「このキャラこうですよね」と断定されるとイラっときた

——最終話まできて、6つ子のキャラクターの変化や育ち具合の手応えはいかがですか?

藤田 あんなにデフォルメされた絵柄なのに、とても〈人間〉ぽくなったなって、自分では捉えてますね。浅野(直之=キャラクターデザイン)くんも、松原くんも、2人とも変にアニメずれしてなくて、ちゃんと自分が体感したものや観察したものからデフォルメして、キャラクターに落としこんでくるんですよ。何か他の作品からの借り物っていうより、自分の実体験みたいなものをベースにキャラクターを描いているから、セリフも表情も生っぽい。だから、よくあるギャグアニメみたいに極端にぶっ飛んだ芝居付けはあまりしてないつもりです。まあ、十四松とか例外は多少ありますけど(笑)。

——後半、ところどころ「顔芸」みたいなものも結構出てきて。

藤田 それも、実際の感情を強調した「顔芸」であればOKかなと。表情は結構こだわっていたので、絵コンテチェックでも直しました。「変えてもいいけど、こういう感情の延長で描いてください」って感じで。松原くんのセリフはさっき言ったように生っぽくて、込められてるニュアンスの量も多いから、表情には気をつけないといけない。しかも非常にシンプルで、パーツ数も少ないキャラクターだから、眉毛の角度や眉間のしわのちょっとしたニュアンスで相当変わってしまう。そういう意味では、作画が上手い人の方が悩むキャラクターだったと思いますね。上手い人ならどこまででも遊べる可能性を感じられるデザインだけど、そういう人ほど勘もいいから、「このキャラ、意外に遊べねえぞ」っていうのも感じると思うから。

——実は、表情の細かいニュアンスが勝負だったわけですね。

藤田 非常にセンシティブにやったつもりですね。そういう生っぽさを積み重ねた結果、「このキャラこうですよね」と断定されるとちょっとイラッとするし、逆のことを言いたくなる(笑)。いきなり「あなたの性格ってこうですよね」ってザックリ言われたら、普通はちょっと「いやいや」ってなるじゃないですか。「そういう時もあるけど、違う時もあるよ」って。6つ子だって状況によって全然キャラクターはブレるし、気まぐれもおこすし、二律背反も抱えて生きてる。自分のなかでは、それを全部ひっくるめて「普通だな」「人間らしくなったな」と感じています。もちろん、視聴者がそこから何をどう捉えるかは自由だし、それぞれにキャッチーなところを切り取ってもらえばいいんですけどね(笑)。

2クール目はB面で勝負してみた

——1クール目で立ったキャラクターが2クール目に広がる、ということの象徴が、チョロ松ですよね。「事故?」(第13話)をきっかけに、ツッコミ役からイジられ役にキャラチェンジしました(笑)。

藤田 (笑)。キャラチェンジというか、わかりやすいところは一通り見えたので、今度はB面が見えてより立体的になったということかな。あとはちゃんと6人平等に扱いたかったという意図もありました。1クール目の後半ぐらいから視聴者がそれぞれのキャラクターを認知して、やりとりもこなれてくると、それほどツッコミ役が必要ではなくなってくる。じゃあチョロ松にも、そろそろ別の役割を与えてあげなきゃなと。

——でも、ツッコミをして止める人がいなくなったから、どんどん暴走していくエピソードが多くなりました(笑)。

藤田 そうですね(笑)。ただ、むちゃくちゃやる方が本来の赤塚作品の本質だと思うので、よりそっちへ向かっていったってことですね。

——トド松のB面が描かれたのは「トド松のライン」(第14話)ですかね。

藤田 あの話は、100%松原くんらしい脚本だなって思います。本人も言ってたけど、2クール目になってやっと、動きの少ない「会話劇」を披露出来たのかなと。あの話は基本的には部屋から一歩も出ないけど、松原くんは本来、そういう狭い空間でのコントもいっぱい書いたりしている人ですから。あと「一松事変」も、狭い空間で展開するベタなシチュエーションコントですね。

——「一松事変」(第16話)も、カラ松と一松のB面ですよね。カラ松が何かすると一松がキレるという関係の裏返しで。

藤田 一松とカラ松の関係性が1クール目で刷り込まれたからできた話ですよね。犯人と刑事みたいな相反する関係の2人が、密室で一緒になるという定番コント風味。

——一松は、当初よりかなり心開いてきた印象です。

藤田 最初はもっと、毒づいたりする役割のつもりだったんですけど、掘り下げていくと気の弱いところも出てきたというか。オフェンスに回ると強いけど、ディフェンスは弱いタイプかなと。いつもとじこもっている分、いったん踏み込まれたらすごく脆くなる(笑)。

——一松の芝居にノってあげるカラ松の対応も、「ああ、こういう感じなんだ」というB面感がありました。

藤田 難しいバランスですけどね。でも、キャラクターももちろん大事だけど、それに引っ張られすぎないようにして。毎話、毎話のおもしろさを大事しつつB面も見せてくことで、それもアリになってくる。最初は「こいつがこんなことするなんて意外だ」と思っていたことも、「これはこれで、別にキャラクターから外れてないんじゃね?」って、自分のなかでもすんなり思えるようになってきたっていうのはありますね。

——つまり、あのシチュエーションならカラ松はああいう風にノッていった方が、多分おもしろくなるけれど……。

藤田 けど、おもしろいからやらせているという感覚だけではなくて。「確かにコイツなら、こういうこともやりそう」と思えてくる。そんな風に思えるくらい人間らしく育ったと感じています。



(C)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会

アニメージュプラス編集部

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