変わりはてた6つ子に込めたイメージ浅野 まあでも、やっぱり本編の作業は楽しいです。特に第1話は本当に自由にやれたから。
藤田 言うても、マトモな6つ子をろくに描いてないしね、第1話は。
浅野 マトモな6つ子、5カットくらいしか描いてないですね。
——「未来の6つ子」はどれもインパクト大でした(笑)。それぞれどんなコンセプトでデザインを?
藤田 もうシナリオである程度、何をやるかは決めてあって。それを読んでもらって、浅野くんに自由に描いてもらう感じでしたよ。
浅野 おそ松は、『グーニーズ』とかアメリカの映画によく出てくるような頭の悪いデブってイメージですね。何か、ピザとか似合う感じ。カラ松は格好つけてる太った人。
藤田 カラ松が一番びっくりしたけどね。シナリオの時より盛られたデブになってた。
浅野 そうでしたっけ? シナリオだと「ガウンを着てる」くらいでしたっけね。カラ松は結構、イメージがすぐに浮かびましたよ。カラ松が太って格好つけたら、こんな感じだろうなって。
——作中だと、売れて太ったミュージシャンという雰囲気で。
浅野 売れた後、ちょっと休んで、しばらくぶりに表に出たときに太ってるミユージシャンっているじゃないですか。そんな感じです。あとは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のビフみたいな、いかにも私腹を肥やしてる感じで人相の悪い人。
——では、チョロ松は?
浅野 チョロ松はまあ、見た目的にはただ太らせて髪型をちょっと変えたくらいですけどね。でも、それだけでも充分、変な感じになったんでいいかなと。
藤田 ははは(笑)。
浅野 オタクの雰囲気を出している、太ったタレントさん的なイメージですね。
——一松だけはみんなと逆に、やせ細りましたね。
藤田 こいつは、ああいう環境に放り込んだら逆に病むのかなと。余計な金を手に入れたらアブないうモノに手を出したりするのかなってコンセプトで(笑)。
浅野 子役で売れちゃったハリウッドの俳優とかのイメージですね。
藤田 あと、コタツから出ないで自分では動かない、でも動く——とか打ち合わせで適当にダベってたら、コタツが動き出した。
——そして十四松にいたってはもはや、人間としてのフォルムもとどめていない(笑)。
浅野 これは描いてて楽しかったですよ(笑)。他の5人は一応、顔の原型とか残ってるんですけど……。
藤田 十四松はないもんね。
浅野 ないですね。このアホ毛1本だけですね。でも、それだけあれば十四松ってのもスゴいですが。一応、極端に太ったお笑い芸人さんとか参考にしてますね。顔のしわの入り方とか。不健康な感じの太り方。
藤田 欲望のままに喰った結果。
——トド松はある意味、一番おかしなことになってますが。
浅野 トド松はね、何か難しかったですね。最後まで(アイデア)出なかったです。
藤田 そうっすね。
浅野 毎回そうなんですけど、結局、長男から順番にネタをぶっ込んで、しかも十四松がとてつもなく化けちゃうので。それを越えられないというか。
藤田 まあね。そんなにボケキャラでもないしね、トド松は。
浅野 だからどうしても……損する(笑)。
藤田 まあでも、ほかの連中と違う太り方ってことで、ハンプティダンプティみたいな感じにしてもらいました。
浅野 そうでしたね。脚だけ異様に細い感じ。
藤田 鍛えてないっぽいイメージ。で、トド松は金を持ったら、これだけ太っても何とか自分をかわいい方向に持っていくのかなっていうことで、王子様風の格好にしました。
浅野 いやあ、みんな描いてて楽しかったです(笑)。
——一方で「ちゃんとした6つ子」のほうも、これはこれで謎のインパクトがありますね。
藤田 「ちゃんとしたおそ松」は、わりと苦労したかなぁ。今時の「ちゃんとしたアニメになる」っていうコンセプトは、F6でもうやっちゃってるんでね。
浅野 それに、いつもの『おそ松さん』の世界観から変わり過ぎちゃうのもよくないかなってことで、難しかったですよね。こっちの世界観を残しつつちゃんとした感じというので、あんな感じになりました。
藤田 結果、絶妙に気持ち悪いバランスに着地したんでいいと思いますけどね。
——ほかの6つ子も、それぞれいろんなスタイルで「ちゃんとする」というコンセプトですね。
浅野 そこはもう、藤田さんからのオーダーです。
藤田 オチっぽく3DCGと実写をぶち込みたいっていうのが前提で、あとはそこから逆算した感じですね。カラ松は『メタルギア』シリーズとかに出てきそうな、サイバ風のSFヒーローみたいになればいいのかな、と。チョロ松はトト子とセットで、まあ90年代風ですよね。
浅野 輪郭のラインと、目のデカさが90年代の感じですね。でも最初は、もうちょっと今っぽいデザインでしたよね。
藤田 そうね、ゼロ年代とかの「ちゃんとした」ラインを探ってみようかと思ってたんだけど、どうしても特徴が出にくいというか、おそ松ほどのパンチが出なかった。それに、今風の絵柄で入れ替わりネタとかやったら、ギリギリアウトにもなりそうだし(笑)。
——「ちゃんとした一松」のコンセプトは?
浅野 これも最初は、もうちょっと今っぽいアメコミ寄りだった気がしますね。で、そこからもっと、レトロな感じに直しました。
藤田 アメコミ系でやりてえなぁと思ったんですけど、アメコミ系の絵柄は割と最近あるんで。じゃあ「ハンナ・バーベラ」やるかって。「ハンナ・バーベラ」はわかる人にはすぐわかるだろうけど、『おそ松さん』観てるお客さんにどれだけわかるかは、てんで見当もつかないですよね(笑)。
(C)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会