第2期もブレずにフルスイング!!——そして十四松は3DCG、トド松は実写で、それぞれ今風の「ちゃんとした」感を。
藤田 十四松はコンセプトと芝居だけ作って3DCGのチームに丸投げしました。実写版はグリーンバックで撮影して合成ですね。実写のチームもすげえちゃんとしたチームだったので。こっちの要望に対して、めちゃ細かく応じて撮ってくれたのでありがたかったです。お金かかってますよ!
——最後は「ちゃんとした敵」が出てきて、ロボットアニメになりました。
藤田 そこからは浅野元さんというアニメーターさんに、絵コンテから何からもう丸投げです。
浅野 ただただメカを描きたいという奇特な若い人で。じゃあ、全部お願いします! と。嬉々としてやってくれました。
——隅から隅までこだわり抜かれた、力の入った第1話だったかと思いますが。
藤田 はははは(笑)。どうなんすかね。ネタの数は多いし手もかかってはいますけど、やってることは悪ふざけなんで。そんな上等なもんじゃないですよ。
浅野 街道沿いにある焼き肉と寿司とラーメンとケーキと全部出る店、みたいな感じじゃないかと思いますよ。
藤田 まあ、多分1回観ただけじゃあ全部はわからないくらいの情報量はあると思いますけどね。
浅野 第1期でハチャメチャやったじゃないですか。だからちょっとネタをぶっこまないと、日和ったと言われるかもしれない——みたいな気持ちはあると言ってましたよね。
藤田 まあね、しれっと6つ子の日常から入っても、それはそれでいい作品かもしれないけど。でも、それはやっぱ違うかなと。それをやっちゃうと、少なくとも赤塚作品じゃあないよなっていう気がして。勝手な思い込みですけど。
浅野 期待してる人もめっちゃ多かったと思うんですよ。「あいつら、第2期で何かやらかすんだ?」みたいなことを。イヤですよね、期待を背負うって(笑)。
藤田 ははは……考えすぎじゃない?(笑)
——でも確かに藤田監督は、そういう「何かやらかすに違いない」という期待をあえて裏切るみたいなスカし方はしないですよね。
藤田 ああ……はいはい。
——予想はガンガンに裏切ってくれますけど(笑)、「何か無茶苦茶やるんじゃないの?」という期待には割と真っ正面からぶつかった上で、その斜め上で応えてくれる感じです。
藤田 まあそれは期待に対する頑張りというよりも多分、自分がつまんないからだと思います。普通にやっても、何かサボってるような気がしちゃうし。自分がやって納得するほうに行ってるだけって感じですかね。
浅野 スカさないっていうのはあるかもしれないですね。『おそ松さん』みたいな作品だと、もっとスカした方向で作るやり方もある気がしますけど。
藤田 まあ、空気かなぁ……アニメ全体の。最近またちょっと変わってきたけど、一時期わりとウエルメイドな作品が多かったから。そうじゃないものを作らないと意味がないというか、作品としても浮かび上がらないんじゃないかなって気がするんですよ。良くできたものがすごく多かったから、逆に良くできてるだけじゃあ観てもらえない。なら、ちゃんとフルスイングして三振かホームラン的なことをしないとなって。自分も人のフィルムを観るときは「良くできてるかどうか」より、何かものすごくアクが強かったりするものが好きだし。みんな結局、そういうもののほうが好きじゃんって気がするんで。
——では第2話以降、第2期の『おそ松さん』に向けての抱負をお願いします!
藤田 第1期がおかげさまでああいう感じで話題になったんで、「じゃあ、はじめてだけど1回観てみっか」という人にも伝わるものにはしたいと思ってます。そこはすごく大事にしてるかな。第1期から観てくれてたお客さんには……いろいろ散らかしていくんで、またついてきてねって感じです。
浅野 オレは、最初に話した手紙を書いてくれた小学校2、3年生に見続けてもらえるように頑張りたいと思います(笑)。
藤田 でも、そう言ってる子も2年経ったら4、5年生だから、おしゃまになってアニメなんかもう観ないなんてこともあるからね。惑わされちゃダメです(笑)。まあ最初に言ったように、自分たちがブレずにおもしろいもん作れてるかってところが、一番大事かなと思います。
(初出=アニメージュ2017年11月号)
(C)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会