• 【おそ松さん特集09】松原秀の第2期エピソードコメンタリー
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2020.10.09

【おそ松さん特集09】松原秀の第2期エピソードコメンタリー

(C)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会


「6つ子あるある」に正解はない!?

——6つ子の個々の新たな面や、今までになかった関係性が描かれるエピソードもありますが、では、そこは松原さんがネタ出ししていることが多いわけですね。

松原 そうですね、はい。おかげさまで6つ子たちがかなり勝手に動くようになって、「こんなのやりたいな」みたいなアイデアも、第1期以上に出るようになったんです。無理に変わった一面を見せようとか、新しい面を付け加えようとかじゃなくて、同じ奴も違う方向から見たら違うパターンが出てくるかな、みたいな描き方で立体的になればいいなと。それから、第2期でやりたいと思ったことのひとつが「6つ子あるある」だったんです。

——「6つ子あるある」ですか。

松原 そうですね。言うまでもなく、6つ子って「特殊」じゃないですか。ふたごの方々はたくさんいて、「ふたごあるある」もきっとありますよね。3つ子の方々も探せば、難しいかもしれないけどまあ、見つかるとは思うんです。でも、さすがに6つ子はいないだろうし、6つ子ならではの習慣とか、6つ子によくあることとか、実は誰も知らないと思うんですね。僕らもわかった気で描いているけど、それが本当に「6つ子あるある」として正解なのか、探りようがないじゃないですか。たとえば普通の兄弟で「こんなことありえないよ」ということだって、もしかしたら6つ子なら「6人もいるから、そういうこともあるよ」ってこともあるかもしれない。そういう「6つ子あるある」を探ってみたい、と。

——第3話の「チョロ松と一松」は松原さんが描きたかったと、先ほどおっしゃっていましたが。

松原 第1期が終わった頃に、まだ描いてない6つ子同士の組み合わせってどれかなって考えて。何組かあった中の「チョロ松と一松」を考えた時、「あれ、どんなシチュエーションで、どんな会話にするのかわかんない?」ってなったんですね。で、わからないのがオモロイなと思ったんです(笑)。他の組み合わせはだいたい想像がついたんですよ。「コイツとコイツだったらこんな会話だな」とか、「コイツとコイツがここに行ったら、こんな状況になるな」とか。でもチョロ松と一松はわかんなかったんで、シンプルに何も起きずに、どこの場所でもないところってことで「じゃあ家だな、家で急に2人きりになるっていうのどうだろう」みたいなとこからスタートして、結果、大変なことになりましたね(笑)。「みんな一緒の時は馴染んでたはずなのに、あれ? 2人だとぎこちない?」っていう感じ、ありますよね。

——第7話「おそ松とトド松」の合コン話もリアルでした(笑)。

松原 結局、何か好き勝手に適当にやってた奴がモテちゃって、気を遣った奴が損する、みたいな感じですよね。あと、ラストですね。「あんだけ盛り上がったのに何? このリセット感」みたいな(笑)。

——飲みの場であんなに盛り上がったのに、別の場所で再会したら異様によそよそしい女子。男子なら一度は経験しているはずです(笑)。

松原 アフレコでも男性スタッフに「リアルですね、この話」「超わかるわ〜」って言われてました。「あれ? あれ? 敬語? あれ?」みたいな(笑)。あと、あのエピソードは少しだけ新しいパターンかなと思ってます。6つ子は「合コン行きたい!」とか話してても、いざとなると結局ビビって、行動に移さないんですよ。「夏のおそ松さん」でも、ナンパだ〜ってさんざん盛り上がっておいて、結局行かない。でも「おそ松とトド松」では「一回、本番行きます?」みたいな話しになったんですよ。合コンに行く手前でわちゃわちゃしゃべった挙げ句「やっぱ無理だわ〜」じゃなくて、ちょっと生々しく。

——口だけで実際には現場に行かないパターンを一歩踏み越えて、現場に放り込むと。

松原 そうしたら、どうなるんだろうってことですね。トド松が気を遣ってしゃべる、おそ松は最初は固まってる、みたいな。観ている方もちょっと、そわそわすると思うんですよ。僕自身、アイツらが女の子にあっさりフラれたら嫌ですし、かといって、上手くいくのも何か違うし。

——上手くいっちゃうと、『おそ松さん』が終わってしまう(笑)。

松原 そういう意味でもそわそわしますね(笑)。これも、ちょっとやりたかったパターンですね。あと、作中で「兄弟で合コンにくるなんて気持ち悪い」と言われて、おそ松が特に気にせず笑い飛ばしてますけど、あの感じがさっき言った「6つ子あるある」からの発想です。2人兄弟だったら一緒には行かないでしょうけど、6つ子だったらわかんなくない? という。

——長男と末っ子でしたしね。その距離感ならありえるかも。

松原 だからアリとしました、僕的には(笑)。

——「キャンペーン発動!」(第9話)の一松や「カラ松とブラザー」(第10話)のカラ松には、集団行動のあるある感がありましたね。ひとりだけ神経質になったり、一番のお人好しに何もかも任せたり。

松原 そうですね。あるあるだけど、6つ子だからちょっと特殊な感じもある、という感じですね。

——第2期になってより強く感じますけれど、ある意味、あの6つ子の中には社会の縮図があるのかなと。

松原 ああ、なるほど(笑)。普段自分たちが思ったり感じたりしていることが、どうしてもシナリオに出ますからね。周りの人にも「笑えるけど、よく考えたら結構、生々しい話だよね」と言われます。

——そういう意味では「チョロ松事変」(第14話)が……。

松原 はい、来ましたね(笑)

——あれも、社会のあちこちで起きている事件ですよね(笑)。

松原 「デビュー事件」ですね。あのエピソードは、茶髪になったチョロ松の雰囲気が絶妙でした。

——色の微妙さも、前髪のぎこちなくラフな感じも、「あ、確かに無理してデビューするとこういう感じになりがち」っていう(笑)。

松原 あれは浅野さんの仕事ですよね。あざとすぎない絶妙なダサさで、ちょうど「ダッサー」って笑いやすい雰囲気でおもしろかったなぁ。




(C)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会

アニメージュプラス編集部

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