• 【おそ松さん特集11】藤田陽一が『えいがのおそ松さん』に込めたこと
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2020.10.11

【おそ松さん特集11】藤田陽一が『えいがのおそ松さん』に込めたこと

(C)赤塚不二夫/えいがのおそ松さん製作委員会2019

『おそ松さん』第3期放送開始を記念し、月刊アニメージュのバックナンバーに掲載されたインタビューを再掲載して6つ子の世界の魅力をあらためて紹介する特集「おそ松さんを6000倍楽しもう!」
今回は2019年5月号掲載、『えいがのおそ松さん』について監督・藤田陽一が語ったインタビューだ。
2019年3月15日から劇場公開された『えいがのおそ松さん』は、“思い出の世界”へ迷い込んだ6つ子たちが高校時代の自分たちと出会う、というストーリー。
かつての“イタい”自分たちの姿に悶絶する6つ子の姿は爆笑を呼び、卒業式間際にカラ松が受け取った謎の“手紙”の記憶と、同級生・高橋さんをめぐるエピソードは切なくほろ苦く、しかし、この上なく優しいドラマを紡ぎ出す。
シリーズを追い続けたファンにとって最高のプレゼントでありつつ、独立した映画としても完成度の高い本作について、藤田監督が語る。
なお、このインタビューは映画公開後に掲載されたものなので、映画の核心部分に触れた内容が含まれていることをお断りしておく。

>>>『おそ松さん』特集の全容はこちら!

がっつり語るよ! えいがのこと
藤田陽一【監督】

高橋さんで映画がしまった

ーー今回は公開後の記事なので、ネタバレありでいろいろ聞かせてください。まずはやっぱり「高橋さん」の話、聞いてもいいですか。

藤田 はいはい(笑)。

——高橋さんはどういう経緯で誕生したキャラクターだったんですか。

藤田 今回、まずはファンが喜んでくれるものを詰めていこうってところからスタートして、18歳の6つ子を出そうとか決めていったんです。でも、まだ“映画”になってないな……と思った時にふと風呂場で、高橋さんのこととか、それにまつわる「思い出の世界」とかのアイデアを思いついたんですよ。その時に、一気に映画としての筋が通った感じはありましたね。

——「“映画”になってない」というのは、具体的にどのあたりが引っかかっていたんでしょう?

藤田 ずっと「過去」ってところが引っかかっていて。「同窓会に行って、過去に行って……」という6つ子の話から組み立てていったんですけど、同窓会の後悔だけで過去に行けちゃうっていうのが、いまひとつ説得力が弱く感じたんです。それだけなら、いつでも過去に行けちゃうじゃんって。だからもうひとつフックがほしいなと思って。6つ子たち自身以外に6つ子に関連して後悔を残している人というか「自分のことを覚えていてほしいと思っている誰か」、それから実際の過去の世界ではなくて夢なのか現実なのか曖昧な「思い出の世界」。それだったら「思い出」というテーマで1本、映画としての筋が通せるな、と。

ーー高橋さんの「自分のことを覚えていてほしい」という気持ちと、6つ子自身の後悔が、6人を思い出の世界へ引き寄せた。

藤田 そうですね、どっちかだけだと弱いかなと思って。相互作用じゃないですけど、たまたまあの瞬間に2つの思いがリンクして奇跡が起きた、みたいな。そんな奇跡が起こるくらいだから、それなりに重たい思いがないと、自分の中で何となく腑に落ちなかったっていうのものありましたね。で、そこからスタートして高橋さんまわりを組み立てて行ったけど、松原(秀)くんが脚本で膨らませてくれた結果、思った以上に含みのあるキャラクターになったんですよ。正直あんなメタな感じに見えるとは、最初は思ってなくて。

ーー「メタな感じ」というのはつまり、高橋さんの姿や視線に、『おそ松さん』という作品や6つ子たちを応援してきたファンの気持ちみたいなものが重なるという……。

藤田 そうですね。

ーーじゃあ、そこは「高橋さん」というキャラクターに後から付け加えられた要素なんですね。

藤田 後から付け加えたというより、そういうニュアンスがより顕著になったのかな、という感じです。そうなるのはもちろん、悪いことではないし。あとは、あの6人だけじゃあ、過去に行ってもストーリー的に行き詰まるなと思ったんです。賢い奴が誰もいないんで、誰か水先案内人がいないといけないなという都合から、黒猫が登場したりとか。黒猫になったのは、赤塚(不二夫)さんが猫好きだったから、映画やるんだったら猫を出したいなという思いがあって。そんな風にいろいろな要素が並列で、たまたま組み合わさったっていう面もあります。

ーー高橋さんは、見た目はちょっと地味で、マイペースで、天然ボケも入っていて、でもわりと元気のいい子というキャラクターでしたね。

藤田 そこは自分好みのバランスも入ってますけどね。あと、手紙をもらって会いに行ったら、めっちゃ美少女がいた……というのも、なんか嘘くさいなと思って。何てことない普通の子が、自分たちの肯定してくれるっていうほうが、むしろ気持ちよいというか。絶世の美少女に「好きだったよ」と言われるような立派な青春ではないし(笑)。あの6人のことを気に入るのって、どんな子だろうなっていうイメージから、ああいうキャラになっていったってとことですかね。浅野(直之)くんとキャラクターデザインの打ち合わせしたときは、「こういう感じの子って十四松の彼女もいたから、難しくないですか?」って話も出たけど。また違うパターンあるかなと、いくつか描いて探ってもらった中から、あのデザインに落ち着いた感じです。あと、ほとんど前振りのないところから、佐藤利奈さんがよくあそこまでバッチリ演じてくれたなと思いますね。

ーー冒頭から思わせぶりに存在が匂わされつつ、前半は黒猫に想いがダブらされていて……。

藤田 「ニャー」しか言わない。

ーーそして最後の最後に登場し、いきなりストーリーの軸を担う。

藤田 TVシリーズを含めると2年以上、好き勝手やってきた作品に、いきなりゲストで登場して、いきなりえげつないバトンを渡されるというね(笑)。音響監督の菊田(浩巳)さんとも相談して、しっかり場数を踏んでいるベテランの方にお願いできればと、佐藤さんにお願いしたんですが、想像以上のお芝居でした。最後の手紙も、あんな風に見事に読んでもらえるとは。おかげで、しっかり映画がしまったなと思います。



(C)赤塚不二夫/えいがのおそ松さん製作委員会2019

アニメージュプラス編集部