• 『鬼滅の刃』で注目のufotable、その “原点” に巨匠が迫った!!
  • 『鬼滅の刃』で注目のufotable、その “原点” に巨匠が迫った!!
2020.11.05

『鬼滅の刃』で注目のufotable、その “原点” に巨匠が迫った!!

アニメージュ2003年11月号より

社会現象規模の大ヒットを記録し、コロナ禍の日本を元気づけるカンフル剤ともなった『鬼滅の刃』。
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 』は公開から3週以上が経過したが、累積観客動員数は1100万人を突破し、いまだその勢いは衰えていない。
この異例ともいえる人気の大きな原動力となっているのが、原作の世界をハイクオリティなアニメーションで映像化したufotable(ユーフォーテーブル)の存在だ。
『鬼滅』をきっかけに、ufotableの名前を意識した人も、きっと多いだろう。
そこで今回は、アニメージュのバックナンバーに掲載されたufotableにまつわる記事をお届けしよう。

紹介するのは何と17年前、2003年11月号掲載の連載コラム「ギサブローのアニメでお茶を」。
『タッチ』や『銀河鉄道の夜』で知られるアニメーション監督・杉井ギサブローさんが、ufotableが手がけた初のTVシリーズ『住めば都のコスモス荘 すっとこ大戦ドッコイダー』をピックアップ、当時まだ設立されて間もなかった同スタジオについて語っているという貴重な記事だ。
巨匠がいちはやく発見した、新しいスタジオのエネルギー。後のufotableの躍進に思いを馳せながら、あらためて読むと味わい深い。
そして、あらたにufotableに興味を持った人はぜひ、過去の作品にも触れてみてはいかがだろうか。

ギサブローのアニメでお茶を
僕が監督で彼らがスタッフだったら……

最近(注*2003年)は深夜に地方局に衛星にと、放送枠が広がって、アニメの本数もかなり増えていますよね。そんな中で、1クール(13話)で完結する作品は、放映期間が3ヵ月しかないんで、どうしても見落としがちになってしまうでしょう。でも、気になるタイトルを見つけました。『住めば都のコスモス荘 すっとこ大戦ドッコイダー』という作品です。

アニメのうまさにビックリ!

最初に見た時、驚きましたよ。なんだ? このチームは、って。なんでもありのドタバタ世界を描いていて、ややリアルな絵もあったり、ギャグもあり、メカは出てくるし、可愛い女の子も出てくる。それで、その絵がまたうまい。美術もしっかりしているしね。
動きのタイミングもめちゃめちゃうまいですよ。相当いろんな作品を経験してきていないと使えないだろうというタイミングも使っていたり。第3話でヒヤシンスというキャラが土手を這い上がってくるシーンの動きなんかも面白い。TVシリーズの事情で、話数が重なったら崩れてしまうんだろうな、と思っていたんだけど、まったく崩れない! 相当有能な人たちが作っているんじゃないかな。
技術面はもう、言うことなしですね。文字を出したり、CGを使ったり、画面分割やハーモニー(止め絵)を使ったり。今までにアニメで使われた、あらゆるテクニックが網羅されていて、その使い方もはまっている。

小説→マンガ→アニメへの流れ

こういう作風のアニメって、原作をかなり脚色しているんだろうなと思い、その差を知りたくなって、本屋へコミックスと小説を買いに行きました。興味を引かれたのは、小説からマンガ、そしてアニメになっていく過程。小説では、読者が文字の行間から自分で映像を想像して動かしていく。それがコミックスになると絵で表現されて、アニメになると、音声と動きがつく……だんだん具象化していくわけですよ。『コスモス荘』では、原作のどこをどうふくらませて具象化したのかなと知りたくなったんです。
まず小説を読んで感じたのはね、根底に流れる「優しさ」。宇宙連邦警察で新型変身ベルトを採用してもらうために、業者たちが地球にやってきて競い合うという設定なんだけど、ライバルといっても妙な仲間意識が漂う。軽快なギャグのりなんだけど暖かい。面白かったです。作者はなかなか優しい人だと感じました。
マンガ版は、イントロからアニメとほとんど同じ展開。つまりアニメはマンガを元に制作したようですね。マンガでは、アクションやギャグを強調して描いていて、その分、小説で僕が面白いと思った「優しさ」の印象が少し減っている。さらにそれがアニメになると、テンポが強調されたせいか、その味はほとんど消えてしまっていた。これが惜しかったかな。
もちろんアニメにも、残ってはいるんですよ。アイキャッチにクレヨン画を使ったり、エンディングを切り紙アニメにしたのもたぶん、そんな感触を表現したものなんじゃないかな。

アニメージュプラス編集部

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