• 水島新司作品、唯一の表紙!『野球狂の詩』(アニメージュ1979年1月号)
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2020.12.01

水島新司作品、唯一の表紙!『野球狂の詩』(アニメージュ1979年1月号)

アニメージュ1979年1月号表紙

漫画家の水島新司さんが12月1日、引退の意向を表明した。

所属事務所を通じて「昭和33年(1958年)18歳で漫画家としてデビュー。今日まで63年間頑張って参りましたが、本日を以て引退することに決めました。長年お世話になった出版関係者の皆様、漫画界、野球界、作画スタッフ、そしてなによりも作品を支えてくれた読者の皆様、本当にありがとうございました。これからの漫画界、野球界の発展を心よりお祈り申し上げます」とコメントを発表した水島さんは、81歳。
『ドカベン』『あぶさん』などの作品で知られ、野球大好きおじさんというイメージが強いが(そして、それも間違ってはいないが)、躍動感あふれる野球描写や濃厚な人間ドラマを描き出す漫画家としての実力も圧倒的。また、華やかなプロ野球の世界や熱く爽やかな青春群像劇を描く一方で、どちらかというと “日陰” に生きる人々の泥臭い生き様や、そんな人々が束の間の輝きを放つ瞬間を描くことも多い。その独特の視点は水島作品の大きな魅力といえるだろう。

数多い水島作品でアニメ化されいるものは以下のとおり。
『男どアホウ甲子園』(1970-1971年/日本テレビ系)
『ドカベン』(1976-1979年/フジテレビ系)
『野球狂の詩』(1977年、1978年/フジテレビ系)
『一球さん』(1978年/フジテレビ系)

その中で、アニメージュの表紙を飾った唯一の作品が、架空のプロ野球球団「東京メッツ」を舞台に愛すべき「野球狂」たちの姿を描く『野球狂の詩』だ。
アニメージュ1979年1月号の、黒い背景に水原勇気の横顔を配した印象的な表紙が現しているように、『野球狂の詩』のアニメ化は当時としては高年齢層を意識した意欲的な企画だったようだ。
77年12月に60分の1話完結スペシャルとして、原作の「水原勇気編」をアニメ化。
その後、78年の5月〜9月にかけて月に1本ずつ、同じく60分の各話を5本放送。
そして78年の11月〜79年3月には週1本(もちろん60分枠)で19話分が放送され、全体で全25話のシリーズとなっている。
特筆すべきは、上記の放送時間がすべて夜8時からだったこと。
制作会社である日本アニメの当時のプロデューサー・渡辺忠美は、79年1月号の記事で「夜7時代のアニメは飽和状態」「現在、増加している10歳以上の中高生のファンが視聴対象として浮かんできた」「アニメの質を向上させるために視聴年齢が高くストーリー性をより強く要求される8時台に1時間もののアニメを製作してみたいと思った」と語っている。
10歳以上の中高生が対象というと今では当たり前どころか、もっと高年齢の20代以上を意識した作品のほうが多いと言えるかもしれない。
だが、78年といえば『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』が8月に公開されたばかり。
『機動戦士ガンダム』のTV放送開始は79年なので、まだ放送前。
そんな時期に早くも、夜8時からの1時間枠でアニメ放送という画期的な試みが為されていたこと、そして、その作品が水島新司原作の『野球狂の詩』だったということは、覚えておいて損はないだろう。

なお、『野球狂の詩』はアニメージュ80年2月号で発表された第1回アニメグランプリにおいて「作品部門」の第6位にランクイン。
また、幼い日に離ればなれになった兄弟、火浦健と王島大介がともにプロ野球選手となり対決するエピソード「北の狼 南の虎」(第13、14話として放送)は特に人気が高く、同グランプリの「サブタイトル部門」で第2位、「キャラクター部門」で第6位(火浦健)、「主題歌部門」では見事に第1位を獲得。79年9月には再編集され『野球狂の詩 北の狼 南の虎』として劇場公開もされている。
▲1979年1月号の特集誌面。「北の狼 南の虎」にスポットが当てられている

アニメージュプラス編集部