• 【山寺宏一+福井晴敏インタビュー】「宇宙戦艦ヤマト」という時代とデスラーという男
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2021.06.07

【山寺宏一+福井晴敏インタビュー】「宇宙戦艦ヤマト」という時代とデスラーという男

(c)2012 宇宙戦艦ヤマト2199 製作委員会 (c)西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会


新たなデスラーの造形

ーー『2199』、『2202』を通して、山寺さんが演じるデスラーはステレオタイプの悪役ではない、深みのあるキャラクターでした。それは今回の『ヤマトという時代』からも感じられますが、演じていての印象はいかがですか。

山寺 もともとデスラーはオリジナルのシリーズの頃から、ただの悪役ではなかったですよね。敵役として、これだけ人気が出たキャラクターはいないと言われるくらい、魅力的です。そこを福井さんが、『2202』でさらに掘り下げてくださっています。もちろんデスラーだけでなく、いろいろな登場人物が掘り下げられていますが、特にデスラーは驚きました。こんなことになっていたのか、と。すべて腑に落ちるというか、合点がいくというか、「そうだったのか」と思わせられます。もともとは優秀な兄にコンプレックスを抱いている弟だった。それをすべて背負っているからこそ、ガミラスのためにあそこまで冷徹・冷酷に……。それがわかって、嬉しかったですね。『2202』で過去のガミラスを描いたシーンは非常にプレッシャーを感じましたが、同時に、演じていて本当に嬉しかったです。『2199』の段階でも、単なる侵略者ではないと匂わされていましたが、それだけの人間関係や想いがあったのか、と。イスカンダルに対しての想い、スターシャに対しての想いも同時に描かれていたので、そこをどう出すかは難しかったです。けれど、声優は難しければ難しいほど、やりがいがあって嬉しくなるものですから。

ーー福井さんはデスラーという人物を描くにあたり、どのようなことを意識なさったのでしょう。

福井 デスラーって実は、捉え方がある時点からガラっと変わるキャラクターです。1作目(『宇宙戦艦ヤマト』)の時は「帝王」なんです。「私は今、戦争をしているんだから、邪魔しないでくれたまえ」というセリフが象徴的ですが、常人には及びも付かない超然とした帝王。もちろん、ガミラス星を救わねばという使命感があってのことですが。それが『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』で、古代進たちの人間的な姿を目の当たりにして、「自分の人生には何かが決定的に欠落していた」と人生の最後の5分間で悟り、死んでいった男になる。あの5分間で、人物としての評価が爆上がりしたんですね。

山寺 なるほど。

福井 あの瞬間、「帝王」から「亡国の王子」になった。そして『さらば』ではそのまま亡くなったけれど、TVシリーズ(『宇宙戦艦ヤマト2』)では生き残り、以後「亡国の王子」としての人物像が広がっていった。スタート地点とその後に歩む道程が違うんですね。そういう意味では、『2199』のスタート地点があった上で『2202』のデスラーのドラマを描くというのは、原作を踏襲しているとも言えます。それをよりわかりやすく、言葉を選ばずに言えば、あざとく(笑)、狙いにいったところはありますけれど。

山寺 いや(笑)、物語を見事につなげていただいてありがとうございます。

ーー山寺さんご自身は今回のデスラー、どのあたりが「今のデスラー」になっていると感じますか。

山寺 やはりそれは、まさにガミラス星で過去にあったことですよね。今も言ったように自分の兄との関係、母との関係、そしてイスカンダルへの想い、スターシャへの想い。そこで深く描かれたことのすべてを抱えて生きている。そして、もともとはけっして “強い人間” ではなかったということ。それが今回のデスラーの特徴ではないかなと思います。

福井 かつてのシリーズのデスラーも、おそらくなにがしかのコンプレックスは持っていたと思いますが、そこは決して表には描かれない。コンプレックスの上にあぐらをかく、というくらいの腹の据わり方があった。でも今の時代、そういう人物像は共感を得にくくなってきているところがあるような気がします。だから、今回のデスラーもベースは同じだけれど、その表し方が違う。弱い部分も描かれる代わりに、その自分の弱さに対して向き合うことができる人として描いていくことで、今の観客に共感してもらいやすい人物になればと思っていました。

山寺 確かにそう描かれたことで、共感を得られるキャラクターになっていますね。でも、表面的には血も涙もない冷酷無比な男であるのも間違いない。ヤマト側とわかり合えた部分もありますけれど、地球の7割の命を奪ったのはそもそもデスラーであることも間違いない。ガミラスを存続させるためには、そういう行為も厭わない面も持っているわけですから。

福井 確かに、そこはありますね。

山寺 そんな冷酷な男でも、過去には重いものを背負っているという2面性……いや、2面ではないな。「そういう過去を背負っているからこそ」という描き方によって、デスラーという人物がより立体的になっている。そこが魅力的だし、演じていてもやりがいがあるんです。

(C)2012 宇宙戦艦ヤマト2199 製作委員会
(C)西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会

アニメージュプラス編集部

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