• 押井守が『ぶらどらぶ』に込めた「自分が面白いこと、やりたいこと」
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2021.02.04

押井守が『ぶらどらぶ』に込めた「自分が面白いこと、やりたいこと」

(C)2020 押井守/いちごアニメーション

『ぶらどらぶ』押井守総監督インタビューの後編は、いよいよ押井トークが全開モードに。本編にちりばめられたギャグへのこだわりからメイキングマル秘エピソード、吸血鬼ジャンルへの偏愛、好き放題やり過ぎた故のまさかの不安(?)まで余さず語り尽くします!

▲押井 守総監督

――貢とマイの主人公コンビに、なぜそこまで苦労されたんですか。

押井 (『うる星やつら』の)あたるとラムと違って、こっちは女の子同士なんだよね。男女のカップルならともかく「これは苦労するぞ」と気づいていたけど、とにかく貢を男にしたくなかったし、じゃないとやれる気がしなかった。だから「ガール・ミーツ・ガール」なんてのは、実は全部後付けですよ(笑)。

――何か貢を男性にできない理由があったんですか。

押井 渡部マキなんかはまさに映画青年だった自分そのものだし、言ってしまえば(『うる星やつら』の)メガネだよね。その部分以外のダメな自分、フェティッシュな部分をそのまま男の姿に乗せるのが耐えられなかった。だから貢に「男だったらたまらないわね」とか「私は女子だー!」と言わせることでギリギリ成立させられた、という気分がある。あとは演じた佐倉(綾音)に助けられたね。彼女は若いのに大したもんだと思った。

――では、マイは?

押井 ああ、あれは(『うる星やつら』の)ラムと一緒だから棚に上げとけばいいやって(一同笑)。一見かわいいけれど人間じゃないし、何だかんだで貢の家にお世話になって、衣食住の世話を見てもらっている。したたかな奴ですよ。

彼女が語る話が全部嘘かもしれない、っていうところもラムと一緒。『うる星』やってる時、ずっと考えていたからね。「ラムって本当は諸星家に押しかけた詐欺師じゃないのか?」って。それが後で『御先祖様~』に発展したんだけれどね。

逆に言えば、それ以外はこの作品で何の苦労もしていない。スタッフに「こんなことやっていいんですか?」「こんなことやっても売れると思えないんですけれど」と言われることは結構あったけど。

――ストレートな物言いが(笑)。

押井 まず映画ネタなんて興味の範疇外でしょう。『アメリカの夜』や『ひまわり』、『吸血鬼ゴケミドロ』なんて誰が知ってるんだよっていう話でね、まあ、あなたたちは知ってるんだろうけど(笑)。実際スタッフはこの仕事で初めて観た人が多かったから。

▲貢とマイが松竹のSFホラー映画『吸血鬼ゴケミドロ』を観る場面ほか、本作は数多くの映画ネタが投入されている

でも、自分から出るナチュラルなものがアレだから。そもそも笑いに関しても、吉本(新喜劇)みたいなギャグが好きなんです。あと、こっちにあるのは「ちゅどーん!」だけ。「『うる星やつら』から何も変わってないじゃん、笑いが古い」と言われても、「はい、そのとおりですよ」と。そのつもりでこっちは始めているからね。それしかできないなら、中途半端にやるんじゃなくて全面的にやるんだよ。自分が面白いと思うものを作るしかない。

――ええ、わかります。

(C)2020 押井守/いちごアニメーション

アニメージュプラス編集部