• 押井守が『ぶらどらぶ』に込めた「自分が面白いこと、やりたいこと」
  • 押井守が『ぶらどらぶ』に込めた「自分が面白いこと、やりたいこと」
2021.02.04

押井守が『ぶらどらぶ』に込めた「自分が面白いこと、やりたいこと」

(C)2020 押井守/いちごアニメーション



押井 本当に思うんだけど「笑わせる」って難しい。前からBBCのドラマにハマってて、『オックスフォードミステリー ルイス警部』、あと『ニュー・トリックス~退職デカの事件簿~』とかね。イギリスのドラマは蘊蓄が多くて、おじさんが面白くて、おばさんがカッコいい、と三拍子そろっててメチャメチャ面白いんだけど、周りにそういう人がいないんだよね。

まあ最近のアニメは深刻な話も多いしね。『鬼滅の刃』もそうなんだろうけどさ、観てないからわかんないけど(一同笑)、笑える話ではないわけでしょう? 笑える話だけでは300億は稼げないわけだよ。さしもの宮(崎駿)さんも『千と千尋(の神隠し)』みたいに重い要素を入れてくるわけじゃない。世間はそれを求めているんだと思うよ。昔から笑わせるより泣かせる方に価値があると思われ続けているんだから。でも、僕はそういうの大っ嫌いだからね。だからやりたいようにやった。

そういう意味では、コロナ禍とかそういうのはさておいて、仕事のストレスはなかったな。脚本もコンテもあっと言う間に書いたし、現場にも基本好きなようにやらせた。特撮をやりたいっていうから「いいよ」と返事したし。その辺り、現場を仕切っていた西村(純二)君は大変だったのかもしれないけど。

――美術も、写真をコピーして使用した、かつての『迷宮物件』みたいなテイストもあったりしますよね。


▲実景を持ち込んだ美術スタイルは本作に独特のムードを持ち込んでいる。

押井 学校にロケハンして撮影したものを加工して使っちゃおうっていうね。今回はさらに一歩進んで、実写の美術さんに頼んで実際に保健室の作り込みをやってみたりした。

――それは贅沢ですね。贅沢といえば、空撮カットがあったのもビックリしました。

押井 空撮は最初から入れるつもりでいたんだ。とりあえず数を撮っておけば場面カットに使えるからと思って。それは『CSI』から学んだ手法。まず初期投資をして、それをとことん使い回す。そして、よく出てくるセットには金をかける。シリーズ物の方法論を取り込んでいます。

作画だとてっつん(西尾鉄也)、水野(歌)ちゃんの絵を入れてみたりしてね。あとアニメーターもいろいろ遊んでくれたみたいだし、こちらからも「好きなように描いて。マズかったら上から(『自主規制』の文字を)貼るし、音声だったら『ピー』入れるから」って伝えた。元々地上波でやるつもりもなかったし。

――そうなんですか?

押井 今、自分が地上波でアニメをやる意味なんてないよ。もっと(内容が)専門化していっていいと思っている。ジブリアニメならともかく、今までも僕の作る映画を何百館の規模で公開するなんてどうかしていると思っていたし。

――そこまで言いますか(笑)。

(C)2020 押井守/いちごアニメーション

アニメージュプラス編集部

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