• Zの向きが個性です! マイティコウZデザイナー 倉持キョーリュー
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2021.02.11

Zの向きが個性です! マイティコウZデザイナー 倉持キョーリュー

マイティコウZのデザイナー・倉持キョーリューさんにインタビュー!



デザイナーになったきっかけは



――倉持さんがデザイナーになったきっかけを教えて下さい。

倉持 僕、元々はエンジニアで、美術の勉強も特にしてなかったんです。でもちょっとイラストレーターに憧れがあって、突然会社を辞めてやってみたところ、すごく貧乏になっちゃって。やっぱり向いてないのかなって思いつつおもちゃ屋さんでアルバイトをしていたら、おもちゃ屋さんの方に『おもちゃショー』の業者日に誘われて、初めて行ってみたら、大の大人がおもちゃでむちゃくちゃ大金の交渉事をしてるんだな、ちゃんとしたマーケットとして安定してるんだなと思ったんです。そういうマーケットを目の当たりにして、「よし! バンダイの人になろう!」と思ったんです。

――(笑)

倉持 バンダイの社員になったらきっといい人生を送れるんじゃないかなと思ったのですが、社員はみんな高学歴で、入社試験の倍率も高くて、とてもじゃないけど僕じゃ無理だなって思いましたが、ちょっと絵が得意だったので、グループ会社のデザイン会社に入って、そこからうまいことバンダイに入れないかなという気持ちでプレックスという関連のデザイン会社に入社したんです(笑)。
そこでしばらく働いていたところ、バンダイの方に「そんなにうちで働きたいなら相談に乗るよ?」とお声をかけていただいたのですが、その時点ではデザインの仕事をかなり好きになっていたんです。もともとバンダイに入って高給取りになるぞという邪悪な目標があったのですが(笑)。「あれっ? 別にプロデューサーになりたいわけじゃないな」と、そのときは断っちゃったんですよ。あらためてその時に、自分はデザインが好きなんだなって気がついて、デザイナーとしてやっていこうっていう気持ちになったんです。
ひと通りプレックスでいろいろなデザインを学ばせていただきつつ経験させていただいて、もっといろいろなジャンルの玩具やゲームをやってみたいなということで、フリーになったんです。当初は人生の勝者になりたかったんですよね。目的と手段が途中で入れ替わっちゃいました。

――なるほど。ではデザインの専門的な勉強をしていたわけじゃなく、働きながらレベルアップしていった感じなんですね。

倉持 ただのファンなんですよね。本当にオタクでプレックスとか入った人ってあまりいないし、美術の学校とか出てない人もあまりいなかったのですが、「絵はヘタだけどプレゼンうまいからアルバイトからがんばってみたら?」みたいな感じで受け入れていただきました。たくさんの先輩方に迷惑をかけながら絵を勉強して、気がついたらそっちのほうが好きになっていていたという感じですね。

――デザインが面白いと思うきっかけはありましたか。

倉持 初めて僕が手掛けたおもちゃが発売されたとき、おもちゃ屋さんに行ってお子さんが買ってるところを見たんです。「買って買って」ってすごく駄々をこねていて。それを見て、自分のデザインを喜んでもらえるという経験が、理屈ではわかっていたんですが、実際にお子さんがほしがってるのを見たりとか、ヒーローショーを観に行ったときに、僕がデザインしたお面を被っているお子さんがヒーローを応援してるところを見て、だんだんデザインの仕事が好きになってきて。「いい生活をするぞ!」という気落ちから、だんだんと変わってきましたね(笑)。よこしまな気持ちがだんだんと仕事として浄化していったというか。そんな感じです。

――倉持さん自身が子どもの頃に見て影響を受けた作品はありますか。

倉持 僕、スーパー戦隊とか仮面ライダーが大好きだったんです。特撮作品がすごく好きでした。『太陽戦隊サンバルカン』とか今考えると全部プレックスですね。『仮面ライダーBLACK』も大好きで。よく玩具を買ってもらっていました。

――その頃から絵も描いていたんですか。

倉持 親戚に彫刻家とか美術の先生がいて、子どものころその人に教わっていたことはあるのですが、それ以外は全然描いていなかったです。


キャラクタービジネスを育てたい


――現在はロボットのデザインを手がけている印象が強いです。『ロボットを描く基本 箱ロボからオリジナルロボまで』(ホビージャパン刊)という書籍も出されました。読ませていただきましたが、すごくわかりやすく書かれていて、絵心が全くない私でもここに書いてある通りにすれば描けそうに思いました。なにか教科書のような印象です。

倉持 ありがとうございます。

――後進を育てる意識というのもお持ちなんでしょうか。

倉持 ちょっと生意気なんですがそういう気持ちがあります。日本はキャラクタービジネスは多く、描くことを教えるところも日本にはいっぱいあるのですが、実用的なキャラクタービジネスを教えてる人って、もしかしたらあまりいないんじゃないかなって思うんです。How to本も、スキルを磨くというよりはキャラクターの組み立て方、考え方、好かれるようなキャラクターの作り方という感じなので、もしかしたら絵の描き方の本ではなかったのかもしれないと、この本を書き終えたときに思いました。

――ただ格好よく仕上げるのではなくて、トイレをロボットにしてみようとか、そういう視点がとてもおもしろいですね。

倉持 現在デザイナーとしてはフリーですが、スタジオGS株式会社という、玩具の制作会社、設計とかデザインをする会社の役員もやらせてもらってるんです。そこでは僕はデザイナーではなく、若くてキャラクタービジネスをやってみたいという人たちと、新しいことをやってみようとチャレンジし始めたところなんです。

――若い方たちの印象はいかがですか。

倉持 僕が若い時に何年もかかって苦労して習得したことを、今の人達は数カ月くらいでクリアしちゃうんです。僕の苦労は何だったんだみたいな(笑)。賢いですよね、情報の集め方がうまいのと、いろいろなツールを使いこなしたり。自分を客観的に見られる人も増えてきているので、成長がとにかく速いです。僕が10年、5年とかけてやったことを、1年くらいでやってしまう。そういう人がいっぱいいる印象ですね。

――生まれた時点での環境がちがいますよね。当然のようにスマホがありますし。昔は録画すら大変でした。

倉持 映像をいっぱい見られるのは羨ましいですよね。見たくても見られない時代でしたね。

また現在の作品は、1作品に1ヒーローとか1グループではなく、1年間放送の作品だと、昔の作品だと5年、10年分くらい、たくさんのキャラクターやギミックが登場するので、キャラクターを理解する成長が速いと思います。それも羨ましいですね。今自分が観ている作品を、子供のころに観たかったですね。でも昔が悪いというわけではなく、昔は味わい尽くす感じで、1年かけてゆっくり好きになるよさもありました。
▲『ロボットを描く基本 箱ロボからオリジナルロボまで』(ホビージャパン刊)



おもちゃは本物


――有望な若手を育てつつ、今後やってみたいことはありますか。

倉持 おもちゃ屋さんを経営してみたいです。自分がデザインしたおもちゃを販売して、それを買う人を見てニヤニヤしたいです。

――至福の時間ですね。

倉持 それ以上の幸せを僕は知らないので。デザインの仕事は優秀な若い人たちにお任せして、僕はそれを販売して儲ける(笑)。幸せですね、きっと。

――ヒーローを作る側ではなくておもちゃを作る側なんですね。

倉持 そうですね、僕の根本はそうですね。ヒーローに直接会って触れたら最高なんですが、みんながみんなできないですよね。だから間接的だけど直接的というか、子どもにとっておもちゃは本物なんです。僕も子どものときにおもちゃだと思って触っていなかったと思います。想像の中では本物なので、なるべくおもちゃが主役、おもちゃのために全力を尽くしたほうが彼らにとっては本物として伝わるんじゃないかなと思うんです。楽しさとかワクワクが伝わったらいいな。

――現在もおもちゃをたくさん買われるんですか。

倉持 昨日も。すごくいっぱい買ってました。東京のおもちゃのイベントに行った後に、福島のほうに僕の探してるおもちゃがあると聞いて、福島まで車で行って買ってきました。

――我々にとっても倉持さんのおもちゃ屋さんは楽しいものになりそうです。

倉持 おもちゃ屋さん、やってみると結構大変だと思うんです。おもちゃ屋さんでいるとまたおもちゃを作りたくなると思うので。こういうおもちゃを作りたいという気持ちが生まれてくるかもしれないので、おもちゃ屋さんをやって、またデザインをして、と行ったり来たりしたいです。

――楽しみにしています。ありがとうございます。


Profile
くらもち きょーりゅー
トイプロダクトメカデザイナー。元エンジニア。
デザイナーを目指し「株式会社プレックス」に入社、カードゲーム企画のアートディレクション業務や海外玩具デザインに携わる。また、「スーパー戦隊シリーズ」「仮面ライダーシリーズ」にヒーローデザイナーとして参加。株式会社プレックス退社後、ペンネームを「倉持キョーリュー」に改め、フリーのトイプロダクトメカデザイナーとして活動しつつ、スタジオGS株式会社にて専務取締役も務める。主な参加タイトル【機動戦士ガンダムヴァルプルギス】【フレームアームズ バルチャー(シリーズ)】【ねこぶそう】【TENGAロボ】【コードビースト】

【スタジオGS株式会社】
美少女フィギュアの原型やメカ・ロボットなどの造形や設計を主な業務としている。将来的には企画・デザイン・造形・設計・パッケージデザインの工程を社内で行い、製造以外のすべてを自社で完結出来る企業を目指している。スタッフは随時募集中。

アニメージュプラス編集部

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