• ロボットアニメの新機軸を打ち出した『装甲騎兵ボトムズ』誕生への道
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2021.03.03

ロボットアニメの新機軸を打ち出した『装甲騎兵ボトムズ』誕生への道

(C)サンライズ



大きな戦争が終わり、精神的にも肉体的にもひどく疲労した状態で普通の生活をすることになった戦争しか知らない主人公のキリコ・キュービィー。その姿は、ベトナム戦争から帰還したものの、普通の生活に馴染めずにたったひとりで戦争を始めてしまう男の姿を描いた『ランボー』をモチーフにしている。そして口数が少なく、その心情をモノローグでのみ吐露するハードボイルド的な姿は近未来SF映画の金字塔『ブレードランナー』の主人公デッカードを想起させる。
また、キリコがさまよう、戦争からあぶれた人間が集まる退廃的だが渾沌とした活気が漂うウドの街、戦争の為に能力を強化された結果2年間という短い寿命となったPSの設定も『ブレードランナー』とイメージが重なる。

第2部クメン編の舞台となる湿地とジャングルに覆われた独立国家での戦いは『地獄の黙示録』をはじめとしたベトナム戦争を題材とした戦争映画を、第3部サンサに登場する閉鎖された宇宙船内での探索劇はSFホラー映画『エイリアン』、第4部の身体を捨て去って精神を巨大なコンピュータに移した「神」を名乗るワイズマンとキリコの戦いは『2001年宇宙の旅』の人間と人工知能の戦いをモチーフとしている。

映画から得たアイデアを単なるサンプリングとしてツギハギにしていくのではなく、あくまでイメージソースとして使用され、それらの要素は『ボトムズ』の世界観や映像へと違和感の無い形で昇華されている。そして、こうして成立した背景が、ひとりの戦いに疲れ果て兵士が運命的に出会った女性を追う「純愛」の物語となり、超古代文明に起源を持ちその世界を司る「神」へ戦いを挑むという壮大な物語を彩る舞台と背景として機能していくことになる。

『装甲騎兵ボトムズ』は、80年代初頭のリアルロボットアニメ創成期に練り上げられたアイデアと、多くのハリウッド系映画が流入してきた時代背景があったからこそのリアリティが混ざり合ったことで、40年近くの時代が経過した現在でもシリーズが継続し、支持され続ける作品となったと言えるだろう。

アニメージュプラス編集部

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