• 『鬼滅の刃』はなぜヒットしたのか!? 3つの環境から読み解く
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2021.03.20

『鬼滅の刃』はなぜヒットしたのか!? 3つの環境から読み解く

『鬼滅の刃』はなぜヒットしたのか!? 3つの環境から読み解く

昨年10月に公開された映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』、公開から120日を超えた現在でも動員数を伸ばし、興行収入も400億円が見えてきている。『鬼滅の刃』がなぜこんなにもヒットしているのか? 大手前大学の建築&芸術学部でサブカルチャーを研究している谷村要准教授の考察を2回に分けてお届けする。
1回目の今回は、3つの環境からヒットの理由を読み解く。


3つの環境とは

最初に、私自身についてお話しますと、この十数年、文化社会学あるいはファン文化研究の視点からオタク文化をとらえる研究を続けてきた者です。研究対象としてきたのは『涼宮ハルヒの憂鬱』のハルヒダンスの当事者たちやアニメ聖地巡礼者(舞台探訪者)たちです。いずれも2000年代後半にまずネットにおいて盛り上がった現象ですが、内向的で外部とつながりをあまりつくらないと思われていたオタクたちが「オソト」化したことを当時社会が認識する役割を担いました。私は、これらの現象について、ファンが作品をどう受け止めるか、どう解釈するか、外部とどうつながりをつくろうとしているか、といったファンの活動に注目した調査研究しています。

『鬼滅の刃』について語るにしても、その視点が第一にあります。私自身も中学生の頃からずっとアニメやゲームのオタクを続けてきた者なので、アニメファンの方々の気持ちや空気感といえるものがなんとなくわかるときがあります。そのようなファンの意識や共感のポイントをどのように言語化していけるかを自身の研究テーマの一つとしています。

『鬼滅の刃』のヒットの要因については、物語、キャラクター、アニメーション表現、過去の作品との類似点などに着目した記事をよく見かけます。もちろん、ufotableさんも素晴らしい作画をされていますし、それら作品を構成する要素の個々のクオリティの高さがあっての現在の人気があると思いますが、「ここまでヒットしたのはなぜか?」という問いの答えにはじゅうぶんにならないように思います。
ヒットする環境が整っていたことと相まって『鬼滅の刃』はあそこまでの大ヒットになったのだと考えます。では「ヒットする環境」としてどのようなことが指摘できるのでしょうか。私は以下の3点の環境をヒットの要因と考えています。

• 作品の根幹を形成する基本設定において、日本人にとってなじみ深いモチーフが多く、幅広い年代が受け入れやすかった。話の基本的な筋書きが「鬼退治の物語」の一言で説明できるのも大きい。海外でも同様に「鬼」を理解できる文化圏(台湾、香港、韓国など)でヒットしているのも同様だろう。(文化的環境)
• コロナによる自粛期間中に動画配信サービスでアニメ作品に触れた人が多かったことはよく指摘されるが、動画配信サービスがこの2、3年で普及し、作品への導線が各家庭にできあがっていたことが作品の多くのフォロワーを生み出し、ヒットを後押しした。(メディア環境)
• 作品に流れる「(特に弱者に向けられた)慈しみ」と圧倒的強者である鬼と対峙する鬼殺隊隊員の姿(生き様)がこの新型コロナウイルス感染拡大状況下において「みんなが弱者化」する中で、多くの人の共感を呼んだ。(社会的環境)

アニメージュプラス編集部

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