• 『鬼滅の刃』はなぜヒットしたのか!? 3つの環境から読み解く
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2021.03.20

『鬼滅の刃』はなぜヒットしたのか!? 3つの環境から読み解く

『鬼滅の刃』はなぜヒットしたのか!? 3つの環境から読み解く


コロナ禍における共感トレンドの変化

新型コロナウイルスという、自然という「強者」からもたらされた脅威に現在の人類社会はどう対応すべきか、大きな課題を突き付けられています。そして、この「コロナ」は人類社会の中で「勝ち組」と呼ばれた、経済的あるいは政治的な意味での強者も、自然の前では「弱者」になりうることを露にしました。そういう「みんなが弱者」となったからこそ、圧倒的強者に立ち向かう鬼殺隊や炭治郎の姿勢に多くの共感が集まってヒットがつくりだされているのではないかと考えています。そして、それは世の中において「共感」のトレンドが変わったのではないか、とすら言えるのではないかと考えます。

みんなが何に共感しているのか、ということを常に気をつけています。Twitterのトレンドでもそうです。Twitterでわざわざつぶやくとき、無意識的に私たちはみんな(フォロワー)と共感できること、共感してくれるだろうことを多くの場合、書き込みます。「反発」の意見などの反応を引き出そうと戦略的に(あるいは無自覚的に)ふるまう方もいますが、それは少数派です。ですので、Twitterのトレンドにはある程度「世の空気」が反映されています。この共感のトレンドはこれまで、ある意味強者が強者らしく振る舞うことを、格好よいと考える点が前面に出ていたように思います。強い力を持った方が自らの強さ、「我」を通していく格好よさを演出してフォロワーを集める状況はこれまで度々見られてきました。そのような強者への共感トレンドが一定数に支持される状況はこれからも変わらないと思うのですが、一方で『鬼滅の刃』で描かれ、多くの人が共感したのはそれとは違う形で人は生きられるのではないか、という点ではないかと考えています。

このような状況を踏まえて、現在、私の一番の関心は、「今後どのような考え方が社会の前面に出てくるか」という点です。「どのような、新たな作品が生まれるか」だけではなく、政治的・経済的な思想にもそのような萌芽が生まれていないか、注目しています。個人的には、これまでないがしろにされてきた「建前」や「理想」を改めてとらえなおし(それが『鬼滅の刃』で描かれたことだと考えます)、新たな社会の価値観が生み出されてくることを期待しております。


Profile
谷村要(たにむら かなめ)
大手前大学建築&芸術学部准教授。専門は情報社会学・ファン文化研究。アニメ聖地巡礼現象など、メディア・コンテンツが社会に及ぼす影響について研究している。著書に『ポケモンGOからの問い』『地方創生―これから何をなすべきか―』『無印都市の社会学』(いずれも共著)など。
大学では、ゼミのほか「サブカルチャー分析」「デジタルメディア論」「メディアデザイン演習」を担当。ゼミでは、聖地巡礼フィールドワークや地域連携活動に取り組んでいる。


【大手前大学】
大手前大学は、兵庫県西宮市と大阪府大阪市にキャンパスを持つ大学です。
さくら夙川キャンパスでは、建築&芸術学部(2021年4月、メディア・芸術学部より名称変更)、総合文化学部、現代社会学部を開設しており、所属する学部だけでなく、他学部を含む18専攻から選んで学ぶことができ、学問分野を超え、物事を総合的に捉える力を身につけることができます。
また、「レイトスペシャライゼーション」という制度を導入しており、1年生で様々な基礎科目を学びながら、自分が深めたい主専攻をじっくり考え、2年生で専攻を決定することができます。また全授業をネイティブスピーカーによる英語で行う「実践英語教育」などで、グローバルに活躍できる人材を育成します。

建築&芸術学部では、建築コース、芸術コース、メディアコースの3つがあります。
芸術コースでは、マンガ制作専攻、映像・アニメーション専攻など5つの専攻があります。
マンガ制作専攻では『味いちもんめ』の倉田よしみ先生、映像・アニメーション専攻ではベルリン国際映画祭 短編部門銀熊賞を受賞した和田淳先生をはじめ一流の教員が直接指導を行っています。
質の高い授業により、業界で活躍する卒業生を数々輩出しています。
公式HP:https://www.otemae.ac.jp/

アニメージュプラス編集部

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