• 『100日間生きたワニ』がレジェント・湖川友謙とのコラボで描く世界とは?
  • 『100日間生きたワニ』がレジェント・湖川友謙とのコラボで描く世界とは?
2021.07.08

『100日間生きたワニ』がレジェント・湖川友謙とのコラボで描く世界とは?

(C)2021「100日間生きたワニ」製作委員会


【 “間” を活かして人間を描く】

──そんな湖川さんとのコラボレーションで、どんなアニメーションの世界が生まれているのでしょうか?

上田 今回は、邦画の実写のようなアニメを作りたいというのが、コンセプトのひとつとしてあります。臨場感や生っぽさ、ライブ感みたいなものを大事にしたい、と。そういう意味でこだわっているのは「間」ですね。アニメと実写の違いって間だなと、今、作りながら感じています。ですから、一般的なアニメーションよりも間は多いと思います。絵コンテの段階から「もう少し間をとってください」とお願いして、どんどん増やしていきました。アニメーションってどうしてもある程度、感情の揺れをショートカットしているようなところがあると思うんです。でも今回は、脚本の「てんてんてん(……)」の意味を考えて、そのショートカットしている部分もしっかり描くことで、キャラクターが生きていると感じさせたいというか。ワニやネズミという動物キャラを使って、人間を描こうとしたということかもしれませんね。

──今回のキャラクターは一般的なアニメより絵的な描き込みが少ないですよね。でも、絵を描き込むことでリアルにするのではなく、空気感や雰囲気で生々しさを伝えたい、と。

上田 たとえば、リアルな人間を絵で描いて、そこに人間のリアルな声をあてると、「じゃあもうそれ、実写で観ればいいやん」となってくるので。そういう意味では、アニメーションでしかできない “リアル” とはなんだろう、みたいなことかもしれないですね。つまり、描き込まれていないシンプルに記号化されたキャラクターだからこそ、誰もが自分を重ねやすいという面もあると思うんですよ。

ふくだ そう、今回のような絵柄だからこそ、観る人それぞれにフラットに届くということかもしれませんね。それに、リアルなテイストで人間的なドラマを展開して、さらに「死」を描くとなると、観ていてしんどくなってしまう人もいるような気がします。でもワニくんたちだから自分にも重ねやすいし、逆に適度な距離も置ける。そういう、不思議な案配でお話を受け止めてもらえたらいいなと思います。

上田 アフレコでも、役者の皆さんと「この速度感では、次のこのセリフにはいけないですよね」とか、そんなことを話し合ったりしました。何かが起きて、一回咀嚼して、次の言葉が出てくる。そういう人間の生理みたいなものを大事にして作っているアニメで、そういう面では挑戦でもあると思います。

ふくだ 実際、私たちには「こういう風にしたい」というイメージがもともとありましたが、それを描いてくださるスタッフのみなさんは大変そうでした。今までのご自身たちが手掛けてきたアニメとは間合いも違うし、描き込みも少ないし。でも、私たちの要望にとても一生懸命応えてくださっていただけて、本当にありがたいです。


(C)2021「100日間生きたワニ」製作委員会

アニメージュプラス編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事

RELATED関連する記事

RANKING

人気記事