【『映画大好きポンポさん』SP】椎名豪が語る監督・平尾隆之

主人公と監督が似ている

——その後は『ギョ』という作品でご一緒されます。伊藤潤二の漫画が原作の、パニックホラー作品でした。

椎名　あれはどう表現したらいいんですかね……（笑）。でも、あの作品もやはり「平尾さん、上手いな」と思います。パニックムービーやスプラッタムービーって、随所に笑える描写が入ることも多いじゃないですか。この作品では、そのコミカルな要素と芸術性がうまく両立しているのが、平尾さんらしいいなと感じました。日本的なホラーの湿度みたいなものと、海外的なドライなエンタテインメント感が融合しているという印象があります。

＊ギョ＝伊藤潤二のホラー漫画が原作の2011年公開の作品。足の生えた不気味な奇形魚によって引き起こされるパニックを描く。

——その次が、『魔女っこ姉妹のヨヨとネネ』ですね。

椎名　『ヨヨとネネ』は僕自身、強い思い入れがあります。最初にイメージボードのようなものを見た時は、すごく驚いたんですよ。絵本みたいな絵で、色感なども鮮やかで。それまで一緒にやっていた “かわいらしくない作品” ……というと失礼ですが（笑）、これまでとは打って変わった雰囲気だったので、どんな音楽にしたらいいんだろうと悩んだ記憶があります。

——『ヨヨとネネ』をきっかけに、個人的な交流も深まって。

椎名　そうですね。仕事に関しては、日常茶飯事のように衝突もしていましたが（笑）。ぶつかり合いながら、ものを作っていた感じです。それに、宣伝で平尾さんと一緒に地方を回ったものめちゃくちゃ楽しかったですし、いろいろなお客さんの反応を見られたのは大きかったですね。すごくいろいろ考えましたし、作ってよかったなと感じられたので、思い入れの深い作品になりました。アジア圏で公開された時も一緒に行ったのですが、国によって反応が違うのもおもしろかったです。そして、主要キャラクターのタカヒロという男の子が、これも平尾さんに似ている気がします（笑）。

＊魔女っ子姉妹のヨヨとネネ＝2013年公開の平尾監督劇場作品。原作はひらりん（物語環境開発）の『のろい屋しまい』。〈魔の国〉でのろい屋を営むヨヨとネネの姉妹が主人公で、強力な魔力を持つ姉のヨヨが現代世界に迷い込んで起こる事件を描く。

——『ヨヨとネネ』に続く仕事が、TVシリーズ『GOD EATER』ですね。

椎名　これは、ゲームの世界観がベースですが、ストーリーはアニメオリジナルなので、平尾さんの色がわりと強く出ている気がします。そして、繰り返しっぽくなっちゃいますが、主人公の空木レンカがやっぱり平尾さんに似ているんですよ（笑）。

——そこは、平尾監督作品の特徴かもしれないですね。それだけ、主要人物に監督の思いが強く込められているというか。

椎名　それと、僕は平尾監督の “子供” の表現がすごく好きです。『GOD EATER』でも、おチビちゃんたちが結束してアラガミ（『GOD EATER』シリーズに登場するモンスター）を倒すシーンがあるんですが、音楽も作りがいがありました。大人ほどの能力はないけれど、子供なりの知恵を絞って頑張る姿は、『ヨヨとネネ』にも通じるものがありました。平尾さん自身、まったく悪い意味ではないですが、ちょっと子供っぽいというか、ピュアというか……。そういう部分が、作品の随所に “らしさ” として表れている気がします。だから平尾さんの作品を観ると、忘れかけていたチビだった頃の自分を思い出すような感覚が、すごくあります。『ヨヨとネネ』なども、自分が子どもだった頃を思い出しての共感と、それを俯瞰で見つめている大人の目線の共感と、軸がふたつある気がして、二度楽しめる。それも、平尾さんの作品の魅力ですね。今回の『映画大好きポンポさん』も、現時点（取材時）ではまだ完成品を観られていないのですが、そういう作品になりそうですよね。子供たちが憧れる夢のような雰囲気と、大人が昔を思い出して共感するような部分とーー平尾さんらしい作品になっているんじゃないかなと思います。

——ご自身ではこの先、平尾監督と機会があれはどんな作品を作ってみたいですか。

椎名　やっぱり『ヨヨとネネ』や今回の『ポンポさん』ように、幅広い層に楽しんでもらえる作品は、今後も作ってほしいですね。もちろん、ハードなものも引き作られると思いますが、家族で観られるような作品にも期待したいです。

（C）2020 杉谷庄吾【人間プラモ】／KADOKAWA／映画大好きポンポさん製作委員会