• 【『映画大好きポンポさん』SP】椎名豪が語る監督・平尾隆之
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2021.06.08

【『映画大好きポンポさん』SP】椎名豪が語る監督・平尾隆之

(C)2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/映画大好きポンポさん製作委員会

現在、絶賛公開中の『映画大好きポンポさん』。
映画を愛する青年・ジーンが、天才プロデューサーのポンポさんに見出され、初監督作品に挑む姿を描くストーリーで、ジーンの苦悩や葛藤や、ジーンの映画に出演する新人女優ナタリーの奮闘などを通して、〈もの作り〉に夢を賭ける人々の姿を描く、映画愛に溢れた作品だ。
原作は杉谷庄吾【人間プラモ】(プロダクション・グッドブック)のコミックス。
そして、原作の世界に深く共鳴しつつ、さらに深いテーマやアニメーションとしての魅力を盛り込み、極上のアニメーション映画に仕上げたのが平尾隆之監督だ。
華麗な映像世界と骨太なドラマを描き出した平尾監督は、今、もっとも注目したいアニメ監督のひとりと言えるだろう。
そこでお贈りするのが、平尾隆之監督について縁の人に語ってもらう、このインタビュー企画だ。
今回登場するのは、ゲーム『GOD EATER』シリーズやアニメ『鬼滅の刃』などの音楽で知られる、作曲家の椎名豪だ。
ゲームPVおよびTVシリーズ『GOD EATER』や『ギョ』、『魔女っこ姉妹のヨヨとネネ』などの平尾監督作品で音楽を担当した彼に、過去の平尾監督との仕事を振り返ってもらった。

>>【画像】『映画大好きポンポさん』の場面カット(写真10点)


【椎名豪プロフィール】
作曲家。『GOD EATER』シリーズなどゲーム音楽を多数担当、平尾隆之監督『桜の温度』で音楽を担当し、以降、アニメーションの音楽制作にも携わる。『京騒戯画』、『十二大戦』、『鬼滅の刃』(梶浦由記と共同)などの音楽を担当。

平尾監督との出会い

——椎名さんは、平尾監督との初仕事は?

椎名 一緒の仕事はゲーム『GOD EATER』のPVが最初です。15分くらいある贅沢なPVでしたが、僕がもともと『GOD EATER』の音楽を制作しており、平尾さんがそのPVを作ることになって。それがはじめての出会いでした。

*『GOD EATER』シリーズ=人類が衰退した地球を舞台に、特殊な武器〈神機〉を使ってモンスター〈アラガミ〉と戦うアクションゲーム。椎名は本シリーズの音楽を担当し、平尾監督はPVやOP&EDアニメーション等を制作している。後述のアニメ『GOD EATER』は本作の世界感をベースにしたオリジナルストーリーを描く、平尾監督のTVシリーズ。


——初めて会った平尾監督の印象は、いかがでしたか。

椎名 初めの印象は……すごく難しい質問ですね(笑)。もともとは、そのPVを作るにあたって映像と音楽は別個の作業だったというか、映像は映像で独立して作り、それにゲームの音楽をつける予定だったんです。それが、ちょっと行き違いがあり、映像に音楽をぴったり合わせなければならなくなって。結果、直接会って話そうということになったのがきっかけでした。ですから、最初の印象はお互い「なかなか引かない人だな」みたいな感じだったと思います(笑)。

——ある意味、最初からお互い、本音をぶつけ合ったというか。

椎名 そうですね。平尾さんは、物腰こそ柔らかかったですが、言うことははっきり言う人でした。しかも、締め切りがその翌日か翌々日とかで、すごく大変だったのを覚えています。それでも、平尾さんは話をするためにわざわざ横浜の僕の仕事場まで出向いてくれましたし、僕も、平尾さんが音楽に本当にこだわっていらっしゃるとわかったので。それが、その後の仕事にも生きたのかなと思っています。ちょっと波乱含みの出会いが、結果としていい方向に転がっていきましたね。

——その出会いをきっかけに、平尾監督の短編映画『桜の温度』の音楽を担当することになったわけですね。

椎名 『桜の温度』では、平尾さんはできるだけ僕の作業負担を減らそうと考えてくれたようで。シーンに合わせてたくさん曲を作るのではなく、大きな1曲を全編に使用するという作り方をしてくれました。その手法にしたことで、いい意味で僕の作業負荷を減らしてもらえましたし、映像的にも効果的でした。ちょっとMVのような雰囲気もある映画になって。

——『桜の温度』は21分の短編映画ですが、その全体に合うような長い1曲を作った。

椎名 そう、オーケストラで言う組曲を作るような感覚でした。第一章、第二章、第三章……みたいな感じでそれぞれ主メロがあり、そのアレンジで曲を構成する。最初はピアノだけで作り、シーンに合わせてロック調の雰囲気も入れたりはしました。平尾さんの構想のおかげで僕も助かりましたし、表現という面でも統一感も出たので、すごくよかったと思っています。

——振り返ってみて、『桜の温度』にはどんな印象がありますか。

椎名 『GOD EATER』はあくまでゲーム準拠でしたから『桜の温度』が平尾さんのオリジナル作品に触れる初めての機会でした。印象としては……その後の作品も含めて、平尾さんが作るものは大体、平尾さんに似ているんですよ、主人公が(笑)。『桜の温度』も、主人公の性格とか目つきとかも、不思議と平尾さんに似ている気がします。内容自体は、わりとシビアですよね。人にはいろいろな愛し方がある……という複雑な心情を、情景描写を織り交ぜながら表現していて、すごく上手いなと思います。地方独特の風景、踏切とか、電線とか、その寂しい感じも平尾さんらしいなと。あとは、“曇り空” 感ですね。晴れた風景と、曇り空の風景の切り替わりの雰囲気が、平尾さんぽい。『桜の温度』は観るのがなかなか難しいかもしれないですが、機会があればぜひ観てほしいですね。

*桜の温度=2011年に公開された、平尾監督の短編映画。平尾監督の故郷でもある香川県の田舎町を舞台に、高校生の男女3人の複雑な感情のドラマを、独特の詩情あふれる映像で描く。現在、徳島市のufotable CINEMAで毎朝1回、上映されている。

(C)2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/映画大好きポンポさん製作委員会

アニメージュプラス編集部

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