現在全国公開中のガンダムシリーズ最新作『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』特集のラストを飾るのは、CGディレクターの藤江智洋さん。本作の大きな見どころのひとつである、モビルスーツのモデリングや映像表現はいかなる意図でディレクションされたのか、『閃光のハサウェイ』のCG制作の裏側についてお話をうかがった。
▲CGディレクター・藤江智洋さん
――まず『閃光のハサウェイ』にはどのような経緯で参加されることになったのでしょうか?
藤江 『機動戦士ガンダムUC』の頃から、サンライズ第1スタジオのCGに関する専任ディレクターのような形で常駐させていただいておりまして、『機動戦士ガンダムNT』からの流れで『閃光のハサウェイ』にも参加させていただきました。
――今回、増尾隆幸さんとお二人でCGディレクターを担当されていますが、お仕事はどのような分担で?
藤江 当初は『UC』から培ってきたノウハウや経験値で作る予定で進んでいましたが、打ち合わせを重ねる中で、それだけでは村瀬(修功)監督からの要求に全然対応できないことがわかりましたので、CGに関して広い技術や知見を持っていらっしゃる増尾さんを監督からの推薦もあり、お声がけさせていただきました。今までの作品で携わってきたセルルックのモビルスーツやコックピットなどに関しては私が担当し、現実世界から地続きの風景内に登場する車両などのメカ、カメラマップを用いた映像表現などの部分を増尾さんにお願いしました。お互いが得意なところでカバーし合う、という感じですね。
▲情報量ギッシリのコックピット描写も見逃せない。
――村瀬監督の現場への要求は、そこまで高いものだったのですか。
藤江 『UC』の時のモビルスーツ描写は作画メインの体制で、変形や緻密な動き、巨大なものが時間をかけて動くところなど、CGが得意とする部分を主に担当していました。『閃光のハサウェイ』では、もう少しCGの活用頻度は増えるだろうとは思っていたのですが、正直なところ予想をはるかに超えた話になりまして。
――CGの作業量が大幅に増えたということですか。
藤江 はい、みんな「モビルスーツの作画とCGの割合は半々のバランス」という、いつもの作り方を想定していました。しかしモビルスーツだけでなく、他の場面でも作画や美術で見せるのではなくCGが関わる部分が増え、準備段階のCG、コンテ用のCG、フィルムのフィニッシュで加えるCGなどを含めると、作業全体の9割くらいにCGが絡むことになりましたね。
――それが村瀬監督や小形尚弘プロデューサーの希望だった?
藤江 はい、当初から「フルCGぐらいの気持ちでやりたい」という話が出ていました。確かに、最近の映像は全般的に緻密になってきていて、作り手としてはメカも説得力のあるディテールを表現したい欲求がある。それを手で描くとカロリーは高くなるし、画を量産することも大変です。だったら3Dモデルで作って動かした方が演出としての自由度の幅が広がりますし、そういう意味ではメカをCGで動かすのは時代の流れなのかとも感じています。もっとも、今回もここぞというところは中谷誠一さんなどのメカが上手いアニメーターの方に作画していただいています。
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アニメージュプラス編集部