• 『閃光のハサウェイ』村瀬修功監督がこだわったメッサーの造型
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2021.06.17

『閃光のハサウェイ』村瀬修功監督がこだわったメッサーの造型

メッサ―のモデリングには予想以上の苦労が…… (C)創通・サンライズ


――村瀬監督から「こんな風にCGを使いたい」というイメージの提示などありましたか?

藤江 明確にこれというのはなかったですが、「画の嘘をつくような作りにはしたくない」というのは作業していて感じました。例えば見栄えのカッコよさを優先してモデリングを変形させるようなことはせず、CGで作られた正しい形をキチンとカメラで撮れる画を作る、パースをつけるなら実写のレンズでできる範囲内でやるようにする、いわばバーチャルな3D空間の中で実写撮影をしているような感じでしょうか。

――全面的にCGを取り入れるにあたり、メカデザインも今までと異なったステップを踏んでいるのでしょうか。

藤江 今まではある程度CG側の都合を考慮して頂き、動かすことを最優先としているところがありましたが、今回はメカ単体でもカッコよく見えて、どのようなアングルでもシルエットでΞガンダムやペーネロペーだとわかるくらいに落とし込むようにしています。それも村瀬監督の希望で、モデリング作業と並行してデザイナーさんとのやり取りは多かったです。設定に合わせて作っても、立体になるとどうしても違和感ある部分が出るので、そこをやり取りしながら調整していきました。またディテールに関してはあまり増やさず、通常の手描き作画レベルまで抑えた感じですね。CGだと細かくやろうと思えば、それこそネジの1本まで作ることができるわけです。でも、そこまでやってしまうのは違うだろう、と。

――Ξガンダムやペーネロペーは形状もかなり複雑ですから、モデリングもかなり手間がかかっていそうですね。

藤江 その2機はそれぞれ通常のモビルスーツ3機分くらいの負荷がありましたね。データそのものも重いですし、モデリングに関しても「ここはこうしてほしい」という的確な指示がメカデザイナーの方からも出ていたので、手間はかかっています。
あとマフティー側が使用するメッサーという機体は渋い人気があり、村瀬監督やメカデザイナーも思い入れが強いので苦労しました(笑)。ガンダムのような四角いデザインは鋭角的な部分をしっかりと作れば格好良くしやすいのですが、メッサ―のデザインは曲面が多い味のある形状なので、キチンと作らないとかわいくなったりショボく見えたりするのです。MSはいつもお願いしている外部チームにモデリングをお願いしてからこちらでディレクションしているのですが、メッサーだけは内部スタッフが専任でモデリングし、最後には村瀬監督やメカデザイナー陣とCGモデルの画面を見ながらやり取りをして仕上げました。
▲メッサ―F01型(左)、そして脚部にリフティング・フレアを追加したF02型。

――こだわられただけあって、メッサーは劇中での活躍も印象深いです。

藤江 それだけの手間をかけてしっかり作り込んだおかげで、「このアングルだとまずい」という部分がないモデルを作り上げることができたと思います。ありがたいことに監督からも最終チェックで「どこから見てもメッサーになったね」という感想をいただけまして、専任のスタッフもホッとひと安心で、喜んでいました。

――最も苦労したモデルはどの機体ですか?

藤江 Ξガンダムはイメージどおりにできた感じですが、ペーネロペーは意外と苦戦しました。中身に素体となるオデュッセウスガンダムが入っていることは線を減らしていけば見せることができるのですが、足に付いているフレアや肩に背負ったFF(フィックスド・フライト)ユニットが大きすぎるのです。面が広すぎて線の強弱もつけづらく、しかも線を減らすとノッペリしてしまうし、バランスも悪くなってしまう。見た目のバランスがしっくりくるようにできるまで、予想以上に時間がかかりました。

また、村瀬監督の求めるリアル志向に合わせると、サイズ感なども嘘がつけなくなってきます。そういう意味で今回特に時間がかかったのは、メッサーや地球連邦軍の量産機であるグスタフ・カールが乗るサブ・フライト・システムです。足場の広さ、並んで乗っても肩がぶつからないか、などを検証し、無理なく乗れるサイズを割り出してモデリングしています。特にメッサーが乗るギャルセゾンの方は、メッサーを機体内部に格納して成層圏まで飛べるようにしなければならなかったので、断面図を作ってデザイナーさんとスペースを吟味しながら形状の調整を行いました。
▲メッサ―を運搬するギャルセゾンが意外な強敵だった!?

>>>『閃光のハサウェイ』MS設定画・場面カットを見る(写真10点)

(C)創通・サンライズ

アニメージュプラス編集部

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