• 【細田守インタビュー・後編】ネットの世界があるという前提で強く育ってほしい
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2021.07.18

【細田守インタビュー・後編】ネットの世界があるという前提で強く育ってほしい

(C)2021 スタジオ地図


CG表現の方向を模索

ーー映像面も今回は、今までの細田作品とは少しテイストが違うと感じました。

細田 それで言うと、たとえば今回は1/3がCGです。その割合は年々加速していて、ひょっとしたらこの『竜とそばかすの姫』を経たら次は、100%に近いくらいCGになるかもしれない。僕は演出家としてCGを積極的に使ってきたほうだと思いますけれど、今回はじめてCGの中でキャラクターに芝居をさせて、感情表現をして、人と人との心のつながりをCG上で表現するということをやっています。これまではもちろん手描きの作画でやっていた部分。そういうデリケートなことはアナログ・手描きでなきゃ表現できないよ、というくらいに思っていたけれど、そうじゃなくて。CGで表現したらどうなるだろうってことに、段階的に挑んでいるんです。前作の『未来のミライ』でもオートバイのシーンをCGで、でも、なるべく手描きの作画に近づける形で作りました。今回はそういうことを経て、〈U〉のシーン全体がCGでできている。それで果たしてちゃんと、キャラクターの気持ちが観ている側に伝わるのかどうかというチャレンジですね。

——どんなことを意識して、CGに挑んでいらっしゃるのでしょうか。

細田 もちろん、日本にだって今までもCG作品はあったし、世界で言えばCG作品のほうがむしろ普通です。でも、今の主流であるディズニー/ピクサー的なシェーディング(注1)だけではない、また違う形のCG表現をいかに突き詰めるかが大事じゃないかなと思います。3年前(2018年度)の米国アカデミー賞の長編アニメーション部門に『未来のミライ』がノミネートされたとき、受賞したのは『スパイダーマン:スパイダーバース』でした。あの作品も、ディズニー的なシェーディングではない文脈で、どちらかというと日本的なセルアニメ的な流れのなかでCG映画を作って、賞賛された。そのことにも刺激されました。実は『スパイダーバース』のスタッフたちが何を観ているかというと『NARUTO-ナルト-』とか観ているんですよ。松本憲生作画(注2)とか観て、あれを作っているんです。そういう意味では、負けてられないというか。ただどうなんだろう、アニメージュ読者はCG映画にどのくらい興味があるかわかりませんけれど。

ーー若いアニメファンは逆に、手描きとCGの違いといったところをそれほど気にしないかもしれないですね。

細田 なるほど、そういえばアイドルもののTVシリーズなんかでも、歌のシーンはほぼCGですからね。スマホゲームとかでもCGで描かれたキャラクターは普通に出てくるし。ただ、そういうCGの使い方とこの映画に違いがあるとすれば、「作業を効率化できるかどうか」でCGを使うのではなく、コンセプト的に使い分けているということです。簡単に言うと、インターネットの世界はCGで描いて、現実の世界は手描きでやっています。
(注1)シェーディング=CG描画の最終段階で、明暗のコントラストで立体感を与える技法。なお、ディズニーやピクサーのスタイルとは異なる、セルアニメ的なスタイルのシェーディング技法は「トゥーンシェーディング」と呼ばれる。
(注2)松本憲生=『NARUTO-ナルト-』などで知られるアニメーターで、スピーディーなアクションやエフェクト作画に定評がある。

(C)2021 スタジオ地図

アニメージュプラス編集部

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