小説版『リーンの翼』の主人公であった迫水は本作では敵役として登場。小説版とは別のルートを歩み、聖戦士としてその地位を固めながらも、妄執に囚われて暴君となった姿が描かれていく。太平洋戦争下で特攻兵の過去を持つ迫水はアメリカ・米軍を憎むメンタリティを持ち続けており、戦後
60年を経てなお米軍の駐留を許す戦後日本の破壊を目指す争乱へと発展する。ロボットアニメでありながら、日米の国家関係や軍事・政治・国際問題などを織り込みながら太平洋戦争の意味などを問いかける、富野監督の「戦争と現代」への目線を強く感じさせる挑戦的な作品だと言えるだろう。
▲フガクによる地上侵攻作戦を推し進めるサコミズ(右)。
その一方で、オーラバトラーをはじめとしたオーラマシンの表現に関しても、『ダンバイン』よりさらに進化した表現が追求された。メカデザインは、アニメ・特撮作品で有機的なクリーチャーをデザインしてきた篠原保が担当。ホビーシーンで追求されたオーラバトラーの生物的再解釈を踏まえつつ、より昆虫的・生物的な意匠を取り入れたイメージのバージョンアップが図られている。
CGなど新たな技術を取り入れたことで、その動きや戦闘描写、オーラ力などの表現演出も大きな見どころとなっている。
▲さらに一歩進んだオーラバトラーの描写・バトルシーンに注目。
なかかな語られる機会がないが、いまなお色褪せない富野由悠季ゼロ年代の野心に満ちた1作を、この機会にぜひ体感してみてほしい。
>>>『リーンの翼』全6話の場面カットを見る(写真34点)(C)サンライズ・バンダイビジュアル・バンダイチャンネル