• 『ガンダムUC』~『閃光のハサウェイ』が切り開く宇宙世紀の転換点
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2021.08.28

『ガンダムUC』~『閃光のハサウェイ』が切り開く宇宙世紀の転換点

新たな宇宙世紀の扉を開いた『機動戦士ガンダムUC』(C)創通・サンライズ



『NT』以後の宇宙世紀を描くガンダム作品最新作が『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』。小説『閃光のハサウェイ』は、1989年に富野由悠季監督自らが『逆襲のシャア』脚本第1稿を基に執筆した小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』の続編だが、映画として制作された本作は『逆襲のシャア』に連なる物語となった模様だ。

『逆襲のシャア』で描かれた〈シャアの反乱〉から12年後となる宇宙世紀0105年。ジオンからの軍事的な脅威は収束したものの、特権階級による支配を強めた地球連邦政府の腐敗はさらに深まっていた。加速する地球の環境汚染に加え、居住許可を持たない人間を捕まえて強制的に宇宙へと連行する「人狩り」を行う地球連邦政府に対する反感が高まる中、反地球連邦政府運動マフティーが政府高官暗殺という形での抵抗を開始する。そのリーダーは、マフティー・ナビーユ・エリンを名乗るブライト・ノアの息子ハサウェイだった。地球に向かうシャトルの中で、ハサウェイは不思議な魅力を持つ少女ギギ、そしてマフティー掃討を指揮する新任司令・連邦軍のケネス大佐と出会い、ドラマは大きく動き始める――。
▲『閃光のハサウェイ』よりΞガンダム。

本作の最大ポイントは、主人公の敵対する相手が地球連邦政府であることだ。これまでの作品とは違って、『閃光のハサウェイ』では長きにわたり継続してきた地球連邦政府のシステムが「変えなければならない悪」として語られている。ジオン公国が唱えた自治独立の考えは、地球連邦政府にとっては都合が悪いものだったが、本当の意味での「悪」では無かった。『閃光のハサウェイ』は、新たに宇宙世紀を背景とした「善と悪」に迫る物語が繰り広げられることになるのだろう。マフティーの活動拠点が一年戦争で地表に降り注いだコロニーの破片の下にあること、地球連邦政府に反抗する人々が集まるオエンベリが破片で大きな被害を被ったオーストラリアの都市であることなど、一年戦争がもはや過ぎ去った「歴史」になってしまっているように描写されていることも興味深い。
▲地球連邦とマフティーの戦いが描かれる『閃光のハサウェイ』。積み重ねられた歴史は、ハサウェイの人生にも大きな影を落としていく。

ジオンの影響下にある時代が終わりを告げた宇宙世紀0090年代後半は劇中ドラマにおいて、またガンダムシリーズとしての「転換点」であり、だからこそそこに新たな可能性が求められたのだろう。『ガンダムUC』の次なる展開、『閃光のハサウェイ』第2部、第2部が続くことで、宇宙世紀0100年前後の物語は今後さらに厚みを増していくことになるだろう。
劇中の長い歴史を俯瞰して、ひとつの大河ドラマとして、改めてガンダム作品を楽しんでみてはいかがだろうか。各作品のドラマにさらなる深みが増していくはずだ。

>>>『ガンダムUC』『ガンダムNT』『閃光のハサウェイ』場面カットを見る(写真35点)

(C)創通・サンライズ

アニメージュプラス編集部

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