• 『不滅のあなたへ』の音響や劇伴の魅力【川島零士×高寺たけし対談】
  • 『不滅のあなたへ』の音響や劇伴の魅力【川島零士×高寺たけし対談】
2021.08.10

『不滅のあなたへ』の音響や劇伴の魅力【川島零士×高寺たけし対談】

(C)⼤今良時・講談社/NHK・NEP


グーグーの最期の曲は「愛」がテーマ

——7月5日に放送された総集編の副音声コメンタリーで川島さんも触れていましたが、グーグーの最期のシーンで流れた優しい楽曲も、とても印象的でした。あの劇伴は「愛」がテーマだそうですね。

高寺 そうです。あそこは僕の中では最初から「死んでいく悲しい曲」を付けるつもりはなくて。大切な人に想いを伝えるイメージで曲を付けていましたね。

川島 あのシーンは本当に印象に残っています。グーグーが今にも瓦礫に押し潰されそうで、グーグーの肘がカクッと折れたら終わってしまうというヒリヒリした状況で。それが視覚的にわかっている中での、あの音楽ですから。死を感じさせつつも、ストーリー的には二人の想いが繋がる愛のシーンなんですよね。

高寺 ずっとお互いに惹かれていたのにそれを伝えられずにいた二人の気持ちが、あそこでついに通じ合ったわけですからね。そして、おそらくリーンは、あそこでグーグーが本当に命を落としてしまうとまでは思っていなかったんじゃないかなと思うんです。それもあり、ストーリー上は絶体絶命の状況や死の悲しみを感じるシーンなんですが、愛のシーンにしたかったというのがありました。

川島 もし、グーグーが命を落とさなければ、あそこから二人の生活が始まっていたわけですしね。そう考えると、改めてグーグーの死が切なく感じられます……。

高寺 グーグー自身はもう覚悟を決めていたかもしれないですけどね……。あのシーンは自分で曲を付けておきながら、めちゃくちゃ感動してしまいました。

川島 『不滅のあなたへ』で、都度都度あるやつですね(笑)!

高寺 そうなんです、変な話なんですが、自分で選曲したのに感動して泣いてしまうという……(笑)。マーチの死のシーンもそうだったんですよね。これまでいろんな作品をやらせていただいてきましたが、ほかではあまりない経験でした。それくらい、この『不滅のあなたへ』が素敵なお話なんだと思います。

——ほかに、川島さんの中で印象に残っている劇伴はありますか?

川島 僕、劇伴について高寺さんに一つ聞きたいことがあったんですよ。ノッカーと戦闘するシーンで流れる曲がすごく不思議な印象なんですが、あれはノッカーのテーマなんですか?

高寺 そうです。ノッカーの曲なので、基本的にはメロディはあまりない、無機質な感じの曲を発注しています。リズム隊がメインの曲で、ほかの曲とはかなり雰囲気が違いますよね。

川島 やっぱりそうなんですね! あの曲を聴いたときに、人智を超えたような、今までとは違う異質な印象をものすごく感じたんです。どこか不安になる感じといいますか。あの音は電子音なんでしょうか?

高寺 たしかに電子的な楽器が使われていますね。戦闘シーンの曲と一口に言っても、オニグマでバチバチ戦っていた戦闘だと、もっとアコースティックでシンフォニックな楽曲なんですが。ノッカーとの戦闘では、ほかの曲では使っていない楽器を使ってくれているんですよ。不協和音のザワザワする感じも入れ込んで、ノッカーの異質さを表現してくれました。

川島 なるほど! 素敵なお話が聞けました。ありがとうございます!


<プロフィール>
川島零士(かわしま・れいじ)
11月30日生まれ/愛知県出身/AIR AGENCY所属/『シャドーハウス』(パトリック/リッキー役)ほか

高寺たけし(たかでら・たけし)
7月23日生まれ/音響監督。主な担当作品は『ゆるキャン△』シリーズ、『弱虫ペダル』シリーズほか

(C)⼤今良時・講談社/NHK・NEP

アニメージュプラス編集部

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