バーチャルライバーがアニメOPを歌う時代【樋口楓インタビュー】

――今回はカップリング2曲も収録されています。

樋口　カップリング曲1つ目の『Sting or stung』に関しては、今まで歌ったことがなかった「ベースメインの曲」というテーマでお願いしました。歌詞は、『俺100』の主人公達が中学生ということもあって、中学生にかっこいいと思ってもらえる曲にしたくて、無茶ぶりにも応えてくれるだろうと作詞家の平（朋崇）さんに依頼しました。最初は、高校2年生の私にも分からないめちゃくちゃ難しい日本語がきて。もっと『俺100』主人公の年代の子達にも理解してもらいたかったので、「かっこよさは損なわずに、ちょっとマイルドな日本語ありますか？」と更に無茶ぶりして今の歌詞にしてもらいました。「猫も杓子も」とか、良い感じにかっこつけてるのが良いですよね。中学生に歌ってほしいです（笑）。

――もう一曲は『ikiteku.』ですが、こちらはバラード調です。

樋口　これまで樋口楓といえばロックという感じで歌ってきたので、ゆったりした曲が苦手で……。バラードって自分自身の内面を歌うじゃないですか。そんな風にしっとりと聴かせるというのが、自分の中での課題だったので、ステップアップになるのと、『俺100』の主人公達が挑む姿にも繋がるかなと挑戦してみることしました。曲自体はサラッとした爽やかなものですが、歌詞は「自分の人生に認められない部分もあるかもしれないけれど、それでも気付いたら視野が広がっていることもあるんだよ」という当たり前だけどなかなか気付けないことを書いていただきました。

――好きなフレーズは？

樋口　歌詞にはないのですが、「生きて生きて今日も生きて～」の後ろに入る「あー」というコーラス部分です。レコーディングに作詞家の安藤紗々さんが来てくださったのですが、「ここは葛藤している『あー』なんです。意味があっての『あー』なので、苦悩しているもやもや感を、音程とか気にしなくていいから歌ってほしい」とオーダーをいただいたんです。コーラス部分にも意味があって、曲の一部になっているのが深いなと。『ikiteku.』は可愛い曲ではありつつも、人間ならではの葛藤を表現しているので、このオーダーをいただいた時は、すごく嬉しかったというか「これを求めていた！」という感じでした。

――歌詞に出ていないところでも葛藤を表現しているんですね。

樋口　歌詞に気持ちをのせて歌うというのは今までもしたことがありましたが、コーラスとかハモリにそういうニュアンスをつけるというのをしたことがなかったので、勉強になりました。

――今後、アーティストとして叶えたい夢はありますか？

樋口　ランティスさんに入ったきっかけである、「バーチャルライバーを広めたい、二次元と三次元に偏見がある者同士の壁をなくしたい」という志は変わっていません。バーチャルライバー自体もどんどん盛り上がってきていますし、良い意味で偏見がない時代になってきたんじゃないかなとワクワクしています。私はこれからも、ランティスの強みを生かして、バーチャルライバーもみんなと変わらず普通に歌って、みんなと同じ言葉で会話ができる存在なんだよというのを広めていきたいです。

――最後に読者へ向けて一言お願いします。

樋口　バーチャルライバーは、受け答えも普通の人間と変わらないですし、個性豊かです。偏見がある人もいるかもしれませんが、人生が豊かになる選択肢の一つだと思いますので、この機会に是非バーチャルライバーの世界を覗いてみてほしいです。もちろん『Baddest』で『俺100』を盛り上げていきますので、アニメもたくさん観ていただけると嬉しいです。宜しくお願いします！

終始、軽快なトークで場を盛り上げてくださった樋口楓さんのメジャー2ndシングル『Baddest』は8月25日リリース。自身初となるアニメタイアップの表題曲を始め、全3曲が収録されている。アニメ『100万の命の上に俺は立っている』のオープニングで彼女の名前を知ったという人も、この機会に是非、彼女の魅力に触れてみてはいかがだろうか。

＜プロフィール＞
樋口楓（ひぐち かえで）
バーチャルライバー／VTuber。にじさんじ所属。VR関西に住む高校2年生。「でろーん」の愛称でも知られる。2020年3月にシングル『MARBLE』でメジャーデビュー。同年12月にはアルバム『AIM』を発表。2021年2月には「Kaede Higuchi Live 2021 “AIM”」を東京・TACHIKAWA STAGE GARDENにて開催。バンドサウンドで表現したロックな楽曲で、等身大の少女の悩みや葛藤を表現し続けている。この度、8月25日（水）にメジャー2ndシングル『Baddest』と『Kaede Higuchi Live 2021 “AIM” Blu-ray』を同時発売する。