• 【追悼】日本の漫画を成長させた!さいとう・たかをの功績とその素顔
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2021.10.19

【追悼】日本の漫画を成長させた!さいとう・たかをの功績とその素顔

さいとう・たかを氏 写真/真下裕

日本のコミックシーンを牽引し続けてきた漫画家・さいとう・たかを氏を悼み、取材などでさいとう氏の知遇を得たライター・編集者である今秀生氏に改めてさいとう氏の思い出・その仕事について綴って頂いた。(編集部)

さいとう・たかを先生が9月24日にすい臓がんのために亡くなってしまった。享年84。さいとう先生に最後に直にお会いしたのは今年の2月、『ゴルゴ13』200巻突破を記念した秋本治先生との対談の記事を担当した時だ。そのあと体調を崩されたと後で聞いたが、その日は普段と変わりない様子で、2時間以上も楽し気にお話しされていた。秋本先生の作品作りの手順を熱心に聞いて、驚いたり感心されたりしていたのが印象的だった。他の作家にこんな風に興味を持てるのが現役バリバリの証だなと思ったからだ。

2019年にさいとう先生にインタビューした時、植木金矢先生が亡くなる直前まで時代劇劇画を描かれていた話から、「金矢先生が97歳まで描いてたんですからさいとう先生は少なくともその記録は抜いて下さい」と言ったら「(金矢)先生にくらべたらワシなんかまだひよこみたいなモンだから頑張るよ」と笑ってられたので、こっちはすっかりその気になっていた。正直、“さいとう・たかをのいない世界” に感情が全く追いつかなくてまだ呆然としている状態だ。子どもの頃から大好きだったマンガ家が亡くなるたびに受ける大きな喪失感には、何度経験しても慣れることができない。

さいとう・たかをと言えばまず『ゴルゴ13』だ。1968年に『ビッグコミック』(小学館)で連載開始以来、ずっと看板作品として連載されている代表作だ。この7月には単行本201巻が刊行され、「最も発行巻数が多い単一漫画シリーズ」としてギネス世界記録に認定されたのも記憶に新しい。『ゴルゴ13』は先生の訃報と同時に、先生の遺志で連載継続される事が発表された。さいとう先生が、自分がいない状態でも作品が作れるプロダクション制作のシステムを作られていたからこそ可能な選択だ。
▲さいとう先生の代表作である名作『ゴルゴ13』。

さいとう先生は、マンガを一人の作家頼りに制作するのではなく、脚本や作画などを分担したプロ集団で作るプロダクション・システムを提唱し、実際にさいとう・プロダクションを1960年に立ち上げて多くの劇画作品を生み出してきた。アシスタントを多く集めてマンガを描くのとは根本的に違うこの発想は画期的だったが、作品作りをあまりにもシステマティックに考えすぎていると、なかなか同業者や仲間からは理解してもらえなかったという。作家はあくまでも自分の作品を描くべきであって、完全に分業で描くなんて工場で製品を作るのと一緒じゃないかと言われたそうだ。

でも、読者を常に楽しませられる製品が提供出来るのなら、それでいいじゃないかというのがさいとう先生の考え方だった。とは言え、やはりさいとう先生の巨大な存在があってのさいとう・プロダクションだった。さいとう先生がいなくなって、ついに先生が思い描いたプロダクション・システムで『ゴルゴ13』が描き続けられる事になる。その準備はバッチリしたよ、と空の上で笑いながらタバコを吹かしてるような気がする。

アニメージュプラス編集部