• Production I.G石川光久社長が語るアニメ『攻殻機動隊』の歩み
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2021.11.13

Production I.G石川光久社長が語るアニメ『攻殻機動隊』の歩み

(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会

1989年に士郎正宗により発表された原作コミックを柱にして、様々なメディアミックスが展開されてきた「攻殻機動隊」。その最新アニメシリーズが神山健治監督・荒牧伸志監督がタッグを組んだ、現在Netflixにて全世界独占配信中の『攻殻機動隊 SAC_2045』だ。

この度、配信中のシーズン1(全12話)が新シーンの追加と全カットフルグレーディングにより、劇場用長編アニメーション『攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争』として生まれ変わった。本作の構成を手掛けたのは実写映画で注目を集める新進気鋭の映画監督・藤井道人。『新聞記者』『ヤクザと家族 The Family』など社会的なテーマを扱った作品で知られる藤井監督の手腕によって、文字どおり新たな「攻殻」ワールドの可能性が広がる仕上がりとなっている。

『攻殻機動隊』のアニメーションはいかなる流れを経て現在の場所へと辿り着いたのか。押井守監督の『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』以降、『攻殻』のアニメシリーズに深くかかわってきたProduction I.Gプロデューサーであり代表取締役社長でもある石川光久氏に話を伺った。
▲Production I.G 石川光久氏。

――まず『攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争』制作の経緯からお聞かせいただけますでしょうか。

石川 具体的には荒牧(伸志)監督、神山(健治)監督がアニメ畑ではない監督にこの作品を任せてみたい、と考えたところからです。我々の近いところにいる方だと、どうしてもメインスタッフに対して気をつかってしまうじゃないですか。それよりも全部壊して新しい作品に再構築してくれる人にお願いしたい、と。

そこでプロデューサーの牧野(治康)が『新聞記者』の藤井道人監督に「興味がありますか?」と直接オファーしたんですよ。ほとんど直撃みたいな感じだったらしいんですが。

――今回、藤井監督を選ばれた理由は?

石川 『新聞記者』などを観て、今日本で一番熱い監督なんじゃないかと。で、実際に会ってみると意欲的に受け取って頂いたらしいんですよ。とはいえ、非常にお忙しい方でスケジュールもなかなか取れない感じだったらしいんですが、逆にそういう忙しい方にこそやっていただきたいじゃないですか。
そういう意味で、牧野はこれまでで一番いい仕事をしたんじゃないですかね。

――さすがに一番は言い過ぎでは(苦笑)。

石川 いや、実際これは彼の最大の功績ですよ。藤井さんには『攻殻』という題材にプレッシャーと同時にやりがいを感じてもらえたと思います。やっぱり現場は大変らしいんですが、藤井監督は本気で自分のスタイルを出してきていて、それはすごく良いなと思っています。“シリーズの総集編” ではなく、1つの映画として完成していて、面白い。冒頭から観客の心を一気に掴んでくるし、そこは藤井さんの技でしょうね。

――思った以上に狙いが上手くハマった感じでしょうか?

石川 そうですね、若くて熱気を持った監督やプロデューサーに種を撒いて育てよう、という意味での挑戦が功を奏した。藤井監督はもう活躍されている方でしたが(笑)。でも、それをくり返してきたのが『攻殻機動隊』の持っている歴史なんじゃないかと思います。

――石川さんは95年の『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』から延べ26年にわたって『攻殻機動隊』という作品に関わってきたわけですが、ズバリ『GHOST~』の作品としての魅力はどこにあると思いますか?

石川 やっぱり士郎さんの持っている未来を予知する先見性ですかね。何十年も前に現在の時代そのものをリアルに捉えた上で作品を作っている。映画ではそこに押井守監督が強烈な色を加えて、相反する二つの才能が重なったことで原作の良い部分が強化された。士郎さんのある意味での狂気を押井さんのテクニックで上手くまとめたことが、いつまでも作品が色褪せない理由なんじゃないですか。

――押井監督は後に続編『イノセンス』も手がけますが、一方『攻殻』アニメ化の決定版と思われた『GHOST~』から続いてTVシリーズ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(S.A.C.)』が制作されます。これは一体どういう流れから?

石川 それは『GHOST~』が海外で凄くウケたっていうのがあります。日本での展開だけで考えると、どうしてもこじんまりとした作りになってしまうから、しっかり海外に向けて勝負する作品が作りたかったんです。

あとはスタジオの人材を育てたい、ということですね。士郎さんに「I.Gのアニメーターが育つ環境を作りたいので、TVシリーズを作らせてほしい」とお願いしたところ、士郎さんからも「そういうことなら、若い人たちに自由にやってもらってください」と言ってもらえたんです。

――押井さんとは別の切り口で作品に現代性を持ち込んだ神山健治監督の起用も、本作の大きなポイントですよね。

石川 そうですよね、そこは「石川、よくやった!」と自分を褒めたくなる(笑)。頭の良さはもう分かっていましたけれど、それに加えて『人狼 JIN-ROH』での演出、レイアウトや背景の仕事を見ていて彼の研究熱心さと真面目さ、何より野性味あふれるエネルギーが凄かったんです。僕としては、無謀なものをまとめるならば、経験値よりもそういうものを大事にしたかったんですね。

――『S.A.C.』は『2nd GIG』『Solid State Society』とシリーズ化していきます。

石川 このシリーズは自由度があったのが強いですよね。とはいっても、それを受け入れられる強固な『攻殻』の世界観あってこそだとは思うし、贅沢な予算と時間をかけることができたことも大きいと思うんですよ。うちとしては無謀なまでの予算を賭けた、という印象がありますから。

(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会

アニメージュプラス編集部