• 『アイ歌』吉浦康裕が熱狂した『機動警察パトレイバー』劇場版3作の魅力
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2022.04.30

『アイ歌』吉浦康裕が熱狂した『機動警察パトレイバー』劇場版3作の魅力

『機動警察パトレイバー2 the Movie』(C)1993 HEADGEAR/BANDAI VISUAL/TOHOKUSHINSHA/Production I.G

BS12トゥエルビ『日曜アニメ劇場』で、5月1日・8日・15日と3週に渡って劇場版『機動警察パトレイバー』3作が放映される。
押井守監督が手がけた傑作『the Movie』『2 the Movie』、そして異色の番外編『WXIII』と、各作独自の魅力をまとめて楽しむ絶好の機会となりそうだ。

そこで編集部は今回『アイの歌声を聴かせて』『サカサマのパテマ』などで知られるアニメーション監督・吉浦康裕さんに劇場版『パトレイバー』3作について話を伺った。吉浦監督は2016年に「日本アニメ(ーター)見本市」で『機動警察パトレイバーREBOOT』を監督した大の『パトレイバー』ファンであり、これらの作品から多大な影響を受けていることを公言している。
まずは、吉浦監督と『パトレイバー』の出会いからスタートしよう。

ファーストコンタクトは小学校の頃にTVシリーズの『パトレイバー』放送前の特番があったんです。でも、当時はあまりちゃんと観ていなくて。今でも覚えているのが、遊馬が当直室でビールを飲んでいる場面。「ビール飲んでる!」って野明にツッコまれて「これ、麦茶なんだよ」「泡立ってるじゃん」「炭酸入れてるんだ」っていうやり取りの後、ゴミ箱でビール缶を見つけた野明が「麦茶めっけ」って独り言を呟くところで「大人なアニメだな~」って思ったんですよ(笑)。

で、高校生くらいになってアニメにハマりだすと『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』ほか押井守監督の作品に行きつきまして。そこから押井監督が昔『パトレイバー』を作っていたことを知って、友達から劇場版のVHSビデオを借りて観たら本当に面白くて! そこから勢いがついて、ゆうきまさみ先生の漫画やOVA・TV全シリーズを制覇して、どっぷりハマっちゃいました。

5月1日に放送される『機動警察パトレイバー the Movie』(1989年)は、「アーリーデイズ」と呼ばれる初期OVAシリーズに続いて制作された初の長編作品だ。
篠原重工の天才プログラマー・帆場暎一が投身自殺を遂げてから、謎のレイバー暴走事故が多発。特車二課の篠原遊馬巡査は独自に事件を追ううちに、暴走したレイバーはどれも篠原重工が開発したレイバー用最新OS「HOS」が搭載されていたことに気づく。一方、特車2課の後藤喜一小隊長も独自の調査を進め、この事件の裏に帆場の存在があることを知ることとなる――。
公開当時としては画期的なコンピュータウィルス犯罪をテーマにしたサスペンスと、新型レイバー「零式」とイングラムのバトルを始めとしたスペクタクルを存分に楽しめる娯楽編に仕上がっている。

『The Movie』は押井監督の作家性とロボットアニメの痛快娯楽要素、加えて職業ものとしての妙な面白さが実にキレイに融合されていて、最後の最後まで楽しませてくれます。「すごいアニメ作品だ!」と驚きました。
何より、シンプルにレイバーの活躍するシーンに興奮しました。アバンの軍事用レイバー・HAL-X10が確保されるシーンも好きなんですが、その後の下町でタイラント2000を取り押さえるシーン、あそこがとにかく大好きなんですよ! 野次馬にあふれた下町でレイバーが暴れて、しかも乗っている土木作業員が「止めてくれー!」って泣いている。あれこそが『パトレイバー』独自の魅力じゃないでしょうか。
▲『機動警察パトレイバー the Movie』

それとは対極に、ラストの零式とイングラムの戦いがまたハードで良いんですよ。ロボットアニメ的なケレン味もあるんですけれど、あくまでもレイバーは「重機」、乗り物である、ということを意識した演出なんです。決着の付け方も武器や格闘の応酬じゃなくて、操縦者が知恵を絞って勝つ的な展開で本当にカッコいい。ストーリーも王道のハリウッド映画みたいな構成だし、人を喰ったような大人な台詞回しもあるし、めちゃくちゃ影響を受けました。
▲『機動警察パトレイバー the Movie』

あと、アニメーション密度とでも言うんですかね、ここぞのところですごく動くゴージャスな作画がまた良いんですよ。榊さんがビーチパラソルの下でアイスを食べている場面なんか、陽炎の描写をフルコマの作画でやっているのもすごいですよね。
自分が『機動警察パトレイバーREBOOT』を作る時、『the Movie』の持つムードは常に意識しました。特に『REBOOT』の構成は、『the Movie』のタイラント2000のシークエンスに強い影響を受けています。初見の時、パトレイバーを何も知らない自分でも特車2課のメンバーの魅力があの短い時間で十分に感じられたので、「これなら新キャラでもいける!」と確信をもって作業を進められました。

(C)1989 HEADGEAR/BANDAI VISUAL/TOHOKUSHINSHA

アニメージュプラス編集部

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