• 『ククルス・ドアンの島』武内駿輔が挑んだファーストガンダムの演技感
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2022.05.31

『ククルス・ドアンの島』武内駿輔が挑んだファーストガンダムの演技感

ククルス・ドアン役を演じた武内駿輔さん ヘアメイク/小園ゆかり 撮影/真下裕

安彦良和監督の映画『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』がいよいよ6月3日から公開となる。
ガンダムシリーズの原点であるテレビアニメ『機動戦士ガンダム』、そのシリーズ中でも異彩を放つ第15話『ククルス・ドアンの島』を完全映画化。『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙』の劇場公開から40年の時を経てRX-78-02 ガンダムとアムロ、そしてお馴染みのホワイトベースの仲間たちが登場する物語が展開されていく。

本作の最も注目すべき登場人物といえば、やはりタイトルロールであるククルス・ドアン。ジオン公国軍で名を轟かせた凄腕パイロットでありながら、脱走兵として20名の戦災孤児たちと無人島で暮らすことを選んだ謎の男である。彼とアムロの出会いは、物語を大きく動かしていくこととなる。
ドアン役を演じた武内駿輔さんにその人物像や演技のアプローチ、作品の魅力について伺った。

――武内さんは、ガンダムシリーズをどういう形で知ったのでしょうか。

武内 僕は元々70年代・80年代のアニメが好きだったんですが、小学校の時同じような趣味を持っている友だちとファーストガンダムや自分の世代の作品――『ガンダムSEED』や『ガンダム00』なんかを一緒に観ていたりしていました。今回は『機動戦士ガンダム』テレビシリーズと劇場版3部作を観直して、収録に臨ませて頂きました。

――では、第15話「ククルス・ドアンの島」も以前からご存じだったわけですね。

武内 はい、観た当時自分はそこまで違和感はなかったんですが、後でいろんな盛り上がりがあった「伝説の回」ということを知りまして(笑)。

――完成した映画『ククルス・ドアンの島』を観ての感想をお聞かせ下さい。

武内 安彦監督、そしてアニメーターの皆さんの描かれるキャラクターの一人ひとりへの思いが本当に素晴らしいですよね。特に子供たちが一斉に集まって行動する場面は必見です。それぞれの演技も違うし、彼らのそれまでの生い立ちまで感じさせるアニメーションのクオリティに感動させられました。

あと、テレビシリーズ当時のBGMや効果音をアレンジして使用していたり……当時既に素晴らしい内容だったものをさらに新しく作り直す意味を納得していただけるクオリティと取り組み方でしたね。細かいところで言うと、爆発シーンは手描きで荒々しい迫力が増していますが、逆にモビルスーツはほとんどCGで作られています。本作では2Dアニメと3Dアニメが上手い具合に馴染んでいるんですね。(副監督の)イム(ガヒ)さんに伺ったら、そういうエフェクトも細かくこだわったとのことでしたので、新しいアニメーションとしてもいいものに仕上がったと思います。

――役が決まられた時、15歳のアムロと共演するということをどう思われましたか。

武内 いやー、正直ワクワクしましたね。今後ガンダムの新作に関われることはあるかもしれませんが、古谷(徹)さん、古川(登志夫)さんなど、当時活躍されていた方たちが新しいものを生み出す機会に自分がダブル主演の一人として参加することはまずないですから。

かつての自分のヒーロー的な存在と一緒に仕事ができることはプレッシャーよりも光栄であると感じたので、自分が持つすべてをつぎ込んで取り組もう、「やってやるぞ!」という気持ちになりました。

――古谷さん共々、自分と逆の年齢層のキャラを演じるというところも面白いですね。

武内 そこも声優の妙ですよね。「こういうことがあるから声優って面白いよね」と思っていただける作品になるな、と頭の片隅で考えながら収録させて頂きました。

――第15話のドアンと今回のドアンでは、キャラクター像に変化があると思います。武内さんは、その部分をどう捉えられましたか。

武内 第15話のドアンの行動の規範は子供たちの親を殺してしまったことへの贖罪の意識があったと思うんですが、今回はそういう苦しみの部分を見せない強い人物像になっていると思います。

今回のドアンの逃亡は戦えなくなったわけではなくて、国家という大きな存在に逆らうために自分がやるべきことを決めた結果としての逃亡になっているわけです。支配されるのではなく新しい平和なコミュニティを作ろうという姿勢や、子どもたちと対等な立場で接しあっているところなんかも大きな違いじゃないでしょうか。

――古谷さんの演技も含めて、本作でのアムロ・レイの印象はいかがでしょうか。

武内 何て言うんでしょう……ファーストガンダムでは、ひよっこだったアムロが段々成長する姿が描かれていくんですが、その過程がより細かく感じることができるのが『ククルス・ドアンの島』なんだと思います。
今回は、アムロが予期せぬ集団行動の中で人間的な成長を遂げるわけです。これはこれまでの作品にはなかった表現ですし、大きな見どころになっています。アムロと同じくらいの多感な年頃の少年・マルコスを登場させているのも、自分と育ち方が違う同世代の若者とぶつかることによって得られる、いち人間としての成長を描く意味があったのだと思います。

その辺りは古谷さんも演技にすごく組み込まれていて、「はぁ」という息遣いひとつをとっても集団行動に慣れていないアムロを感じ取ることができるんですね。ファースト当時よりさらに、古谷さんの演技に磨きがかかっていることにとても驚きました。年齢に逆らって、以前以上に見事な少年の演技が生み出せちゃうというのはどういうことなんだと(笑)。もう脱帽です、役者として勉強させていただきました。

(C)創通・サンライズ

アニメージュプラス編集部

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