• 『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』監督が語る新たな表現との格闘
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2022.06.16

『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』監督が語る新たな表現との格闘

(C)バード・スタジオ/集英社 (C)「2022 ドラゴンボール超」製作委員会

現在公開中の映画『ドラゴンボール超(スーパー) スーパーヒーロー』は、TVアニメ『ドラゴンボール超』、劇場版『ドラゴンボール超 ブロリー』に続くシリーズ最新作。原作者・鳥山明がストーリーやセリフ、デザインの一部を担当していることも、大きな話題を呼んでいる。

孫悟空が少年時代に壊滅させた世界最悪の軍隊・レッドリボン軍。その後も、そこに所属していたドクター・ゲロが新たに人造人間を生み出し悟空たちを危機に陥れた、あの因縁深い存在がまさかの復活を遂げる。
新生レッドリボン軍は人造人間ガンマ1号、ガンマ2号を作り、悟空たちへの復讐に動き出す。その動きをいち早くキャッチしたピッコロがレッドリボン軍の基地に忍び込み、そこで恐るべき “最凶兵器” を目撃する……。

様々な試みを経て生まれる新たなドラゴンボールの世界『スーパーヒーロー』はいかなる作品になったのか。本作の魅力に迫るべく、児玉徹郎監督に制作の裏側や見どころについてお話を伺った。

──児玉徹郎監督は『プリキュア』シリーズのエンディングのダンスや『ドラゴンボール超 ブロリー』の3DCGパートを手掛けられてましたね。今回新たな作画表現に挑戦されたということですが、監督にお話が来た時点で本作のコンセプトは決まっていた形でしょうか。

児玉 前もって「新しい表現方法でやりたい」というお話があったと思います。僕は従来型の作画の人間ではないので、もし2D作画でやると言われたら断っていたかもしれません(笑)。ただ、新たなコンテンツ表現のパイロットムービー制作に参加していましたので、自ずと「そういう方向でチャレンジしたいんだろうな」と前もって感じていましたが、長編となるとやはり難しいんじゃないかなと思うところがちょっとありましたね。

――本作で目を惹くのが、これまであまり見たことのないキャラクター表現です。ハリウッド作品ではリアルな立体に捉えた表現、そして日本でセル処理の2D作画に寄せたものが多いですが、今回の『スーパーヒーロー』はまた違う肌触りを感じますね。

児玉 まず基本として『ドラゴンボール』は鳥山明先生の主線が入ったデザインが存在しているわけで、そこから外れるということはないわけです。そこにどう色や影を入れるか、グラデーションはどうするといったところで表現の変化を試行錯誤しました。
セルルック以外の表現、例えばフォトリアル系だったり、アート系など様々なパターンを出して、現在の形に決まるまでけっこう時間が掛かりました。

――技術面の新しさというよりも、表現の新しさを突き詰めたということですね。

児玉
 そうですね、僕らは目指すべきイメージがあって、それを実現する1つのツールとして表現方法を選んでいるわけです。従来型の作画を好まれる方もいますし、評価は作品を観る人それぞれでいいんですが、作る以上そこを足枷にしてはいけないな、と。
ただ「全く違うこと、新しいことをやろう」という意識は全くなくて、今までの蓄積を基にどう違和感のないルックを成立させられるかが最大の課題でした。

――違和感とは、具体的にどういう部分を指すのでしょうか。

児玉 質感の違和感ですね。本編中には従来型の作画パートもあるんですが、新しい表現スタイルと混載するとコントロールが難しくなるんです。
今回は基本、新しい表現を主体にして、間に作画を挟み込む感じだったので。そういう意味ではやりやすかったかな、と。違和感がない仕上がりになっていると思います。

――本作では、光と影の境をグラデーションで表現しているところにも目が惹かれます。

児玉 こちらとしては、むしろ従来型のパキッと分かれた影に違和感があるんですよね。この表現って日本のアニメかカートゥーン(※ギャグ寄りのアメリカ系アニメ)くらいで、ディズニー作品もだいぶ昔から影は柔らかく表現していますから、やっぱり古さを感じますよね。

もちろん強い光源がある様なシチュエーションならグラデーションがパキッとすることもありますが、例えば曇天の場所や球体のようなものの影がパキッとしているとやっぱり違和感はありますから。従来型の作画では影の動きや絵がうまくつながらないでしょうから、こういう表現は難しかったと思います。

――『ドラゴンボール』は迫力のバトルも注目ポイントだと思いますが、本作ではどういう部分が見せどころになっていますか。
児玉 バトルシーンは基本的に今まで長年やってきた積み重ねや経験を活かしています。かめはめ波といった結構記号的に見せられるところはそのままに、肉弾戦のバトルはより細かく表現に手を入れていきました。
例えば、殴るにしてもちゃんと腕を引くムーブや腰が入っているか、また蹴る時は足をちゃんと持ち上げて、膝をちゃんと折りたたんでいるかどうかをちゃんとチェックしました。

――なるほど、特別な表現ではなく丁寧な演出で『ドラゴンボール』の新しさを出していこう、という試みなのですね。

児玉 そうですね。先ほどの話とも繋がりますが、映像技術としてはそこまで新しいことをやっているわけではない、という感じです。「こういうことが技術的にできるから、やっちゃおう」と新しいことをどんどん入れていくのが今までのスタイルだったと思うんですが、そうではなく「何をやろうとするか」が大切なんですよね。あと、良い表現って案外ローテクだったりするので、そういうところも大切にしました。

(C)バード・スタジオ/集英社
(C)「2022 ドラゴンボール超」製作委員会

アニメージュプラス編集部

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