• 『ククルス・ドアンの島』総作画監督に求められたガンダムファンの目線
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2022.06.23

『ククルス・ドアンの島』総作画監督に求められたガンダムファンの目線

(C)創通・サンライズ

現在公開中の安彦良和監督作『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』は、ガンダムシリーズの原点であるテレビアニメ『機動戦士ガンダム』、そのシリーズ中でも異彩を放つ第15話『ククルス・ドアンの島』を完全映画化。『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙』の劇場公開から40年の時を経てRX-78-02 ガンダムとアムロ、そしてお馴染みのホワイトベースの仲間たちが登場する物語が展開されていく。

本作の大きな見所のひとつは、安彦良和が手掛けたキャラクターデザインと演出を受け止め、ハイクオリティに仕上げられた作画表現。今回は本作の総作画監督を務めた田村篤にインタビューを敢行、前編は田村氏の安彦作品への思い、実際の作業と新人アニメーターとの関わりなどについてお話を伺った(全2回)。
▲総作画監督・キャラクターデザインを担当した田村篤さん。

――田村さんは、これまでガンダムシリーズや安彦良和監督の作品にどのように触れてこられたのでしょうか?

田村 80年代の土曜夕方に放送されていたサンライズ作品ほか、たくさんのアニメに夢中になっていた世代なのですが、中でも僕は安彦さんの描かれる絵に惹かれて『機動戦士ガンダム』『巨神ゴーグ』『クラッシャージョウ』『アリオン』なんかを熱心に観ていました。そのまま安彦作品を卒業することなく、今に至っているという感じですね。

――そのように憧れていた安彦さんと一緒にお仕事をするということは、やはり感慨深いものでしたか。

田村 そうですね。これまで宮崎駿監督、高畑勲監督、富野由悠季監督、庵野秀明監督、新海誠監督ともお仕事をさせていただきましたが、そうしたキャリアの流れに安彦監督とのお仕事が加わるというのは、やはりとても感慨深いです。

――OVA『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』では作画監督・原画として参加され、それに続く形で『ククルス・ドアンの島』にも関わられたわけですが、作業状況はどのようなものでしたか。

田村 安彦さんの指示の下、ひとつの作品を作ることは大変ではありましたが、同時にとても楽しめました。僕のキャリアの中でも希有な、とてもいい仕事をさせていただいたという思いがあります。

ただ今回はコロナ禍の影響で、ほとんどのスタッフが自宅作業になって、リモート会議を重ねながら作っていくというスタイルだったので、あまり現場感がないまま終わってしまったという印象ですね。ひとつのスタジオに集まってみんなで作り上げたという実感が無く、そこが唯一残念なところです。

――劇場用作品ということで、改めて安彦さんと打ち合わせなどされましたか。

田村 映画だからどうこうしよう、という話は特にしていないですね。大きな流れとしては『THE ORIGIN』からあまり変えておらず、CGの在り方であったり背景美術をアナログで描くなど、多少の方向修正を新たにやったという感じでした。

――今回は総作画監督ということで、心構えも違って来たのではないかと思うのですが。

田村 どの作品も大変ですが、今回は特にそう感じましたね。まず作業の中で安彦さんのお眼鏡にかなった絵にできているのか、自分の描いた絵に満足することができるのかという不安がありました。さらにスタッフ全体を安彦さんのレベルについていけるようにすること、最終的に自分がいろいろ判断しなければならないことは正直プレッシャーになりましたね。ただ、それを深刻に考えると作業ができなくなるので、できるだけ無心で取り組んでいきました。

――絵コンテで安彦監督の求める映像イメージがクリアに提示されていることもあって、そのイメージ以上のクオリティで上げなければならないという思いもあったのではないでしょうか。

田村 それはありますね。ただ、安彦さんが描かれた絵コンテのイメージがあるからこそ頑張れる部分もありましたし、多くのスタッフはそれを意欲的に捉えて挑んでくださったので、その思いは画面に出ているかなと思います。

(C)創通・サンライズ

アニメージュプラス編集部

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