• 『劇場版 響け!ユーフォニアム』で実感する京都アニメーションの本質
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2022.07.09

『劇場版 響け!ユーフォニアム』で実感する京都アニメーションの本質

(C)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

7月10日(日)19:00よりBS12トゥエルビ〈日曜アニメ劇場〉にて、『劇場版 響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜』が放送される。

京都の高校の吹奏楽部を舞台とした武田綾乃の青春小説を京都アニメーションがアニメ化した『響け!ユーフォニアム』。
2015年にTVシリーズ第1期、2016年に第2期が放送されたほか、それぞれを振り返る劇場版も公開されている。そして、2018年にスピンオフ映画『リズと青い鳥』が製作された後、2019年に完全新作の映画として公開されたのが本作『誓いのフィナーレ』だ。

主人公・黄前久美子と北宇治高校吹奏楽部の仲間たちが、顧問の滝昇の指導のもとで奮闘し成長していく姿を描くのが『響け!ユーフォニアム』シリーズのメインストーリー。『誓いのフィナーレ』では、高校2年生となった久美子たちが1年生の新入部員を指導しながら全国大会入賞を目指す、波乱の日々が展開していく。

受験、恋、友情などそれぞれに悩みや葛藤を抱えながら、吹奏楽に青春を燃やす高校生たちの人間模様——それを瑞々しく描き出す京都アニメーションの演出、作画が本シリーズ最大の見どころであり、魅力である。

本作以外でも『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』や『Free!』シリーズ、過去には『涼宮ハルヒの憂鬱』、『けいおん!』シリーズなどでも高く評価され、多くのファンから信頼されている京都アニメーション作品。そのクオリティの高さにいち早く注目し、さまざまな機会に言及してきたのがアニメーション監督の杉井ギサブロー氏だ。
『銀河鉄道の夜』、『タッチ』などの作品を手掛けてきたアニメ界のレジェンドである杉井氏は、京都アニメーションの仕事を「丁寧」と表現し、その「丁寧さ」について次のように説明している。

「丁寧さ……とは言っても作画が丁寧とか(それも大事だけれど)、その程度の単純なことだけで多くの人の心を掴めるわけがない。ドラマの捉え方だったり、演出だったり、作品性の解釈という部分での丁寧さですよね。つまり、プロが観てもおかしくないくらいのピアノの弾き方を描くのが魅力なのではなくて、そのくらいのこだわりの意識で描くことで、ドラマの感動が伝わるのが重要。ただ綺麗に描きたい、上手に動かしたいみたいに、趣味的に作っているわけじゃないってことですよね」(『アニメージュ』2020年9月号「特別企画 京都アニメーションが拓いた可能性」より)

さらに、その姿勢が特定にクリエイター個人の思想ではなく、京都アニメーションという会社の “社風” として定着していることが重要であるとも、杉井氏は指摘している。
単に「綺麗な作画」「凝ったアニメーション」を目指すのではなく、それを使って表現すべきことをスタジオ全体で意識し、観客に届けようとするーーそこに京都アニメーション作品の魅力の本質があるというのが、杉井氏の視点だ。

繊細な動作や表情芝居で複雑な感情が活き活きと伝えることで、キャラクターたちへの共感を生む。
楽器演奏シーンでは、それぞれの楽器を演奏する際の動作はもちろん音楽に合わせた細かい指使いまでもしっかりと描くことで、吹奏楽の迫力と臨場感、そして音楽が生み出されていく瞬間の感動を伝える。
つまり、“瑞々しい感情を表現する青春ドラマ”  “多人数で多彩な楽器を演奏する吹奏楽” という2つのポイントでそれを確認できるのが『響け!ユーフォニアム』シリーズであり、その中でも劇場版新作として制作された『誓いのフィナーレ』はまさに、京都アニメーションを堪能する上でうってつけの作品だと言えるだろう。

2023年には中編アニメーション『アンサンブルコンサート編』Blu-ray発売&劇場特別上映、2024年にはTVシリーズ第3期となる『久美子3年生編』放送が決定している『響け!ユーフォニアム』シリーズの魅力を、今回の放送で改めて確認してほしい。

>>>ハイクオリティのビジュアルに唸る!『劇場版 響け!ユーフォニアム』場面カットを見る(写真7点)

(C)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

アニメージュプラス編集部

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