好評放送中の実写ドラマ『推しが武道館いってくれたら死ぬ』。今回のドラマではアニメで好評だった劇中歌『ずっと ChamJam』ほかをドラマのキャストがカバーしている。実はこの曲だけでなく、アニメで音楽を担当した日向萌さんや音楽プロデューサーの寺田悠輔さんなど音楽周りのスタッフは、アニメの音楽を手掛けたスタッフが再集結、音楽チームとしてドラマの音楽も担うという珍しい座組だ。『推し武道』において音楽は重要なピース、そのポジションをアニメと同じ座組で作り上げることが、どのような効果をもたらすのか!アニメ放送時にも協力いただいた音楽プロデューサー、ポニーキャニオンの寺田さんにふたたび協力いただき、《音楽》からドラマ『推し武道』の魅力を探っていきたい。今回は平尾先生が「天才!」と絶賛した音楽を担当する日向萌さんにお話をうかがった。今回日向さんは『ずっと ChamJam』や『Fall in Love』をドラマ用にアレンジしたほか、劇伴をすべて新規で制作している。
>>>『推し武道』場面カットや音楽集ジャケットなどを見る(写真17点)◆アニメで出し尽くしたベストを超えるため◆——まずはアニメ化に引き続き、実写ドラマの話を聞いたときはどう思いましたか。日向 すごく嬉しかったです。アニメに携わったことで個人的にもすごく思い入れがありましたし、大好きな『推し武道』の世界にまたお仕事として飛び込んでいけるのは、すごく嬉しかったです。
アニメに続いてお声掛けいただいて、光栄なことだと思いましたが、アニメで一度自分のベストは出し尽くしたつもりだったので、アニメ同様、もしくはそれ以上のものを書かないといけないというプレッシャーも正直ありました。でもやっぱり両方に携わるという、いい意味での新鮮なプレッシャーもあったので、最終的にはすごくワクワクした気持ちで臨むことができました。
——音楽は、実写の作り方とアニメの作り方で違うのでしょうか。日向 人それぞれだと思いますが、私の個人的な意見としては2Dと3Dの違いのような感覚はあります。実写のほうが画面から得られる情報が多いので、そのぶん音楽には余白を残しておく必要があって、作り方は少し変わってくるところがあるのかなと思います。
——すごい細かい部分ですね。日向 本当に微妙な、感じ方の違いだと思います。
寺田 僕がアニメ『推し武道』の劇伴を担当することになって作曲家さんを探していたときに、日向さんにお願いしたいと思ったきっかけが、実は深夜ドラマの曲だったんです。日向さんが所属するミラクル・バスさんから日向さんの過去曲をいただいて、この方のセンスは作品にとても合いそうだなと思ってお声がけさせていただきました。それが今回、深夜ドラマに戻ってきたという巡りあわせは面白いですね。日向さんにジャンルまたぎのセンスがあってこそだと思います。
——実写のお話はいつ頃から日向さんとされていたのでしょうか。寺田 弊社に音楽の話をいただいたタイミングで、音楽ディレクターの池田(貴博)さんや日向さんには軽いヒアリング的な相談はしていました。なのでそのときに、アニメで一度ベストを出し尽くしたというお話も聞いていました。
——それでも日向さんにお願いしたのですね。寺田 ポニーキャニオンとしてこの作品をお預かりするのであれば、やはり日向さんを含めた音楽チームがベストなのではと個人的に思っていました。
——今回はエンジニアやミュージシャンの方など、アニメと同じチームが再集結しているんですよね。寺田 ミュージシャンは新たに加わってくださった方もいますが、アニメに続けて参加してくださった方も多くいます。
日向 アニメからずっと長く一緒にやってくると、やはり共通言語とかも多くあったりして。そういう意味では、打ち合わせからスムーズにいくことが多かったですね。新しく構築することもありましたけど、やはり安心感が大きかったです。
——アニメのときにお話をうかがって、現場でディレクションするのが苦手だとおっしゃっていましたが。そのへん今回はいかがでしたでしょう。日向 そうですね(笑)。でもレコーディングのディレクションはどうしても緊張感があって。
寺田 前よりもテキパキしていましたよ(笑)。
日向 本当ですか。良かったです。
——ドラマの映像はどの段階でご覧になったのでしょう。日向 曲の制作途中に、映像資料として喫茶店でのオタクの他愛のない会話の日常シーンなどを見せていただいたので、イメージを膨らませながら曲を書くことができました。
(C)平尾アウリ・徳間書店/「推しが武道館いってくれたら死ぬ」製作委員会・ABC