• 山口勝平『VOICARION』十二代目服部半蔵を故郷・福岡で演じられる喜び
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2022.11.02

山口勝平『VOICARION』十二代目服部半蔵を故郷・福岡で演じられる喜び

『拾弐人目の服部半蔵』の主人公・十二代目服部半蔵を演じる山口勝平さん

劇作家・演出家の藤沢文翁が東宝とタッグを組んで上演を続けている朗読舞台シリーズ『VOICARION』。そこでは独特な切り口で語られるオリジナルストーリー、一流の声優による名演、最上級の生演奏、役者一人一人に合わせ丁寧に仕立てられた衣裳、舞台を鮮やかに彩る美術と照明によって、観客を作品世界に没入させる唯一無二の空間が生み出されている。

第15回(博多/11月5・6日)・16回(大阪/12月3・4日)で開催される新たな演目は『拾弐人目の服部半蔵』。意味深なタイトルに、早くも新たな期待が高まって来る。本作で主人公・十二代目服部半蔵を演じる山口勝平さんに、今回の舞台への意気込み・見どころについてお話をうかがった。

――今回の舞台は、どんな物語になるのでしょうか。

山口 今までの「VOICARION」よりも系統が違うというか、グッと「和」に寄ってきた作品です。物語としては幕末の時代に生きる忍術が使えない十二代目服部半蔵のところに剣豪・仏生寺弥助が弟子入りするところから始まります。
いわゆる皆さんが「服部半蔵」と認識されているのは、二代目の服部半蔵正成だと思うのですが、それ以降もずっと「服部半蔵」の名を世襲していったんですね。僕が演じる十二代目ともなると、天下泰平となってから、忍者は必要なくなって、いわゆる「昼行燈」的な暮らしをしているんですが、弥助との出会いをきっかけに幕末の動乱に巻き込まれていきます。とにかく最初は「この人大丈夫かな?」と思うくらい何もしない人ですが(笑)、最後には服部家秘伝の奥義が――という展開です。

――徐々にキャラの印象が変わっていくところも見どころ、ということでしょうか。

山口 そうですね、僕がなぜ服部半蔵を演じさせていただいているかも、分かるんじゃないかと思います。
桂小五郎、高杉晋作や沖田総司、岡田以蔵などといった重要人物も続々と登場し、幕末の騒乱に実は関ケ原の戦いから繋がる大きな因縁があるということも明らかになっていきます。幕末は日本の歴史の中でも一番ドラマチックな時代だと思っていますが、その「時代のうねり」みたいなものはおそらく歴史の知識が無くても楽しんで頂けるんじゃないでしょうか。

――稽古場の雰囲気はいかがですか。

山口 まだ全員揃っての稽古はできていないんですが、「VOICARION」でお馴染みの方たちがたくさん参加されていますし、初参加の石川くんも心強く、立木さんも大ベテランですから、そこは安心しています。
あと沖田総司を演じる緒方恵美さんと岡田以蔵を演じる朴ロ美さんのやり取りが、すごくカッコイイんですよ。僕が演じる服部半蔵は情けないところもありますので(笑)、そういう女性キャストの活躍は、今回の見どころのひとつになると思います。

――山口さんは博多座の近くで生まれたということですが、その意味でも感慨深いのではないでしょうか。

山口 はい、僕が生まれたのは櫛田神社のすぐ近くで。博多にいた頃にはまだ博多座はなかったんですが、あの辺りは遊び場のテリトリーでしたし、山笠にも毎年出ていました。自分にとって馴染みのある場所です。
前回博多座さんでの公演にお声がけいただいていたのですが、タイミングが合わず、今回このような機会を戴き、しかも主人公で立てるということで、「故郷に錦を飾る」というのはまさにこういうことなのかと(笑)。こういう、普段歌舞伎公演なども上演されるような舞台に立つことはなかなかできることではないので、他の出演者共々感謝しております。

――本作での藤沢文翁さんの脚本や演出の魅力について、どのように感じられていますか。

山口 今回の台本を読ませて頂いた時、先ほどお話した「時代を超えた因縁」を軸に物語を生み出す発想がすごいなと思いましたし、各キャラクターが本当に魅力的で……それぞれに見せ場があって演じ甲斐があるものになっています。
演出方法に関しても、本当に独特です。作・演出ですから御自身の中に理想の台詞や芝居があるとは思うのですが、「VOICARION」ってひとつの役を何人もの声優さんが演じることがあるんですけれど、その一人ひとりで演出を変える柔軟さにはいつも驚かされますね。

僕の場合は、役を演じるに当たっての具体的な指導ではなく、ヒントになる抽象的な言葉をくれるんです。例えば、騒々しい中でセリフを言う場面だと、どうしても引っ張られて声を張りがちになるんですが、「周りの音を遠く聞いているような感じで声を出して下さい」みたいな言い方をされて、でもそういうのが自分の中でもストンと入って来るんですね。なので、稽古に行くのが本当に楽しいんです。

――山口さんは、どんな忍術が使えると楽しいと思われますか。

山口 子供の頃は水の上を歩いたり、石垣そっくりの布を持って隠れたり、みたいなものに憧れましたけれど、今は分身の術が良いですね! いろいろ自由に動けるなら代わりに仕事に行ってもらって、本体はゆっくり休みたいなって(笑)。ちなみに、今回の舞台の忍術はすごくリアルなもので、観てもらえたら「なるほど!」と納得してもらえるんじゃないかと思います。

――アニメのアフレコとは一味違う、舞台の朗読劇の中で演じるに当たってどういう意識をしているのか、お聞かせ下さい。

山口 お客さんを前にして演じられることは役者冥利に尽きますし、自分自身も舞台からこの世界に入って来たので、ホームグラウンドは舞台かなと思っているところがあります。

また「VOICARION」という舞台は特殊なものでして、今や「藤沢朗読」はひとつのジャンルになっていると思います。生の音楽や舞台セット、衣裳もそうなんですが、観客が五感で楽しめるものになっています。やっている側も観る側も楽しさを共有できる空間になっていると思いますので、是非劇場で体験してみてください!

※朴ロ美さんの「ロ」は、正しくは「王」へんに「路」です。

>>>和テイストで決めた山口勝平さんの取材写真を見る(写真6点)

アニメージュプラス編集部

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